『忘れたくない日本人』出版しました!
「あまやどり出版」から新刊が出ました!
今回は25名の70代後半~90代の語り手の皆様が語る、高度経済成長時代の思い出をまとめた実録集です。
語り手の話を聞いたのは、息子・娘・孫・近所の人たちといった身近な関係性をもった聞き手たち19名。そして本を編集したのは、編集未経験者がほとんどの13名、という大所帯での制作となりました。
今回、出版を記念して、編集者と聞き手の有志が集まってトーク会を開きました。どんな本かわかりやすいので、以下、ご一読ください♪
<トーク会>昭和の記憶をつないで
昭和という激動の時代を生きた人々の記憶を記録した『忘れたくない日本人』。編集者の滝、sha、美月、そしてインタビューを担当したマーボーが集まり、本づくりを振り返りながら、それぞれの思いやエピソードを語り合いました。
昔の貧しさ、今の豊かさ
滝:皆さんこんにちは。今回は『忘れたくない日本人』の出版を記念して、振り返りを兼ねてお話を伺いたいと思います。まずは美月さん、感想をお願いします。
美月:この本を通して感じたのは、昔の貧富の差と現代の違いです。昔は「貧しいなら貧しいなりに」と開き直って生活を楽しんでいたように思います。現代の情報社会では、貧しさが強調されがちで、そういった昔の「おおらかさ」は感じられなくなったと感じました。
滝:そうですね。昔は「内は内、よそはよそ」という考えが強かったのかもしれません。
美月:今は他人の目を気にしすぎて、生きづらさを感じる部分が多いのかもしれません。
小さな楽しみを大切に
滝:shaさんはどう感じましたか?
sha:大きく2つあります。1つ目は、家電製品が普及していく時代の変化を人々の声で追体験できたこと。2つ目は「小さな楽しみ」の大切さです。僕は田舎に移住して、日々の小さな発見や楽しみを大切にしていますが、昔の人々もそうやって生活を楽しんでいたんじゃないかなと思います。
滝:例えばどんなことですか?
sha:畑で思わぬ草が生えていたり、野菜が実っているのを見つけたり、友人が来てくれたことに喜びを感じたり。都会の生活では忘れがちな、小さなことへの感謝ですね。
家族の記憶をたどって
滝:マーボーさんはどうでしょうか?
マーボー:実家に本を渡したら家族が興味を持ってくれて、昔の話を思い出してくれました。「そういえば昔、知らない人が家に来てご飯を食べたことがあった」とか、戦後の疎開の話とか。家族の歴史を再発見するきっかけになりました。
滝:家族との対話が深まったのですね。素晴らしいです。
聞き手と語り手の関係が深まった瞬間
滝:マーボーさん、家族との対話を通じて何か印象的な変化がありましたか?
マーボー:はい。例えば、母との会話で、家族のルーツについて深く知る機会がありました。兄弟で家の相続についてもめた話や、進学や就職の選択肢が限られていた当時の苦労など、今まで知らなかった話をたくさん聞くことができました。特に、東京に出て寮に入った時のエピソードでは、寮母さんが厳しかったことや寂しさをどう乗り越えたかなど、これまで話してこなかった一面を知ることができました。
滝:それは貴重な対話ですね。家族の歴史を共有することで、親子の絆もより深まったのではないでしょうか。
マーボー:そうですね。母も本を読みながら昔の記憶を掘り起こしていました。お互いに話すことで、家族のつながりを再確認できた気がします。
次回に向けての展望
美月:今回の本は素晴らしいですが、地域や職業の多様性をもっと取り入れられたら良かったなと思います。
滝:確かに、今回は私の知り合いを中心に話を集めたので偏りが出てしまいました。次回はもっと幅広い話を集めたいですね。
マーボー:本を見せることで、家族も自分の話をまとめたいという気持ちになってくれたようです。地元の資料を調べ始めたり、昔の生活を振り返るきっかけになったのが嬉しいです。
本づくりのハードルを下げる
sha:今回のプロジェクトで一番感謝しているのは、本を作るハードルを下げてくれたことです。これからも、自分にしか書けない本を作りたいと思います。
滝:その意欲が何よりです。皆さんのおかげで、この本が多くの方の記憶をつなぐものになったと感じています。ありがとうございました。
聞くことでつながる、語ることで深まる――関係性を結びなおす一冊。
「聞く」という行為の力
この本の根底に流れているのは、「聞く」という行為の力です。
私たちが忘れかけている、身近な人々との関係性を再発見し、深めるための力。
80~90代の25人のお年寄りたち――彼らが語るのは、高度経済成長期という日本が大きく変化した時代を生きた証言です。戦争の影、復興の希望、家族の絆、そして技術革新の驚き。それは、過去の物語であると同時に、今の私たちがどう生きるべきかを問いかける貴重なメッセージでもあります。
身近な人との対話の価値
しかし、この本が特別なのは「内容」だけではありません。インタビューを行ったのは、お年寄りと親しい身近な人々――孫、子、近所の人たちでした。聞き手たちは、日常の中で断片的にしか聞いていなかった「昔の話」を、初めて一つの物語としてまとまって聞き、記録しました。その過程で、語り手も聞き手も、お互いに驚きと共感を感じ、関係性が深まる瞬間を共有しました。
「話すこと」「聞くこと」、そのどちらもが人と人との距離を縮め、幸せを感じさせてくれる。単なる知識の共有を超えたこの体験こそが、この本の大きな意義なのです。
あなたも聞き手になってみてください
この本を手に取ったあなたも、ぜひ身近な人の話に耳を傾けてみてください。祖父母や親、友人、近所の人たち――これまで知らなかった彼らの物語が、あなた自身の「今」の生き方に深い意味を与えてくれるかもしれません。そして、話を聞くという行為そのものが、あなたと相手との関係性を新たに結び直し、絆を深めるきっかけとなるでしょう。
「忘れたくない日本人」は、昭和という激動の時代を生きた人々の記憶を記録しただけでなく、未来へとつながる対話のきっかけを提供する一冊です。この本を通じて、あなた自身の「忘れたくない」関係性を見つけてください。