てっぱく・沈殿・きんようび
1月22日(金)
気分の落ち込みがひどく、選ぶ服もおのずとグレースケール。曇天色のワンピースに鼠色のパンツをはいて、
「なんでここにいるんだっけ」
と思いながら鉄道博物館にいた。子どもを連れて。見れば子どもの服もグレーだ。
鉄道博物館にはちょっと考えられないくらい人がいない。どの展示をみてもほとんど貸切状態だ。名物のジオラマ(壮大。映画館ぽい配置の席に着き、走る列車模型たちを生解説付きで見る)も4組ほどの親子がいただけだ。
ひととおり遊んで食事もすませた午後3時、展示車両の座席で子どもが寝てしまった。国鉄101系のシートに腰かけ、眠る子をひざに抱いてこれを書いている。
換気のため開く限界まで開け放たれた車窓の向こう側には新幹線が見えている。
自由席/NON RESERVED
以前はあの車両も開放されていたが今は乗車できない。封鎖されている。鉄道博物館に展示されているたくさんの車両の多くは現在、乗車口が閉ざされている状態だ。それでも4、5台は中に入れるのがあった。車両の数えかたは1台2台でいいのか。1本2本か。
かれこれ30分もこの視界だ。この間、車両に入って来たのは2人だけ。1人は巡回のスタッフだった。窓の外を通る人も多くない。子どもを寝かせていても見とがめられもしない。
家の外にいてこれほど人を見ない時間をもつのは一体どれくらいぶりのことだろう。思い当たるのはおよそ3年前の出産で入院したときで、あれが直近かもしれない。
頭には気分の落ち込みからくるひどいもやがかかり、何か考えたいことがあったはずなのにそれが何だったか見当もつかない。諦める。せっかくのひとり時間だが。静かな。
子どもは寝汗をかいている。
向かいの青いシートと車窓を一心に眺めているとふいに電車が動きだすときの揺れを感じた気がした、一度や二度でなく。電車はいつも動くものだから、視界が乗車時のそれだと、身体のほうが勝手に揺れを作り出してしまうのだな。すりこみか。止まっているエスカレーターを上手に歩けないのと似ている。似ているか?
頭のもやは晴れない。この先わたしが楽しく愉快な気持ちになることなど二度とない、という由来不明の思いがにわかにたちこめている。謎に。一時的に。一時的であれと願う。於・大宮。