直線と曲線とで構成された不思議な海
うんざりするほど世界をにじませていた黄砂がやみ、少し肌寒く空の青い日の夕暮れ、ヒロと一緒に北のほうにある海へ出かけた。
松林にはえんえんと続く木の柵がしてあって、目に見えない強い力でそれは傾いていた。不思議な直線だった。
誰も居ないワレとヒロだけの少し寒い春の海、「すなつぶが目に入る」と言ってヒロは笑った。ふたりでホットドッグとホットコーヒーに砂が入らないよう、身を寄せ合って、背中で風をよけながらおいしく食べた。
「だれもいなくてよかった。貸しきりだ」とヒロは秘密を打ち明けるようにコッソリ言った。
直線とか曲線とか不思議な海とか春にしては珍しい冴えた空とか美味しいホットコーヒーとかホットドックとか、実はどうでもよくて、それがまあ一番だね、とワレも思う。