渡部昇一流『四書五経』の解釈
35、進むも急、退くも急
🐢 進むこと鋭き者は、其の退くこと速やかなり 🐢
(『孟子』盡心上)
急に勢力を伸ばしたものは急に落ちる、という意味で使っている言葉である。
バブル崩壊などを思い浮かべればわかりやすいと思う。また、残念ながら、
外国から見れば明治以来の日本はこの言葉のようであったかもしれない。
全く別の解釈もあり得る。
チンギス・ハーンに関する本を読んだときに気がついたのだが、
騎馬民族は進むときは非常に速いけれど、退く時もさっさと退くのである。
彼らにとって退くこと自体は負けではなく、都合が悪ければ退く。
この考え方は悪いことではない。
この前の戦争でも、日本軍は一度進むと土地にこだわって退かなかった。
ところが騎馬民族は、逃げてもまた戻ってくればいいという発想がある。
前後の話の流れを考えずにこの言葉だけを見れば、
このようなプラスの意味にもとれるのである。