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8月31日【ショートショート647字】

8月31日の夜、少年は青い顔で布団を被っていた。ニュースはどれも「地球に隕石が接近中」と伝えていた。こんなはずじゃなかったのに。


軽い気持ちでの行動だった。宿題は終わっていないから先生に怒られるだろうし、クラスの奴らにはいじめられるだろうし、明日から学校に行くのが憂鬱だったのだ。

祖母から聞いたおまじないがあった。穴ぼこのたくさん空いた小石を持って、大きな穴の周りを三周歩く。その間、自分の願い事を心の中で唱え続ける。何があっても口を開いてはだめだ。三周したら、小石を穴の中心に向かって投げ込む。カランといい音がしたら願いが叶う―

8月31日のまだ日が高いころ、少年はひとつそのおまじないをやってみることにした。祖母から教わった通り、小石を握って、大きな穴の周りを三周した。少年は心の中でこう唱えた。

「世界よ終わってしまえ」

最後に小石を穴に投げ込むと、「カラン」と大きな音がした。少年は満足だった。


ニュースは隕石が地球に激突する様子を映し出した。海に落下した隕石は大津波を引き起こし、海水は大陸全てを覆った。これでは地上の生物は生き延びられないだろう。文字通り、世界は終わってしまった。


少年はもちろん、なおも青い顔をしていた。ここではみんな皮膚は青だ。

明日の学校のことを考えると憂鬱だ。なんでこっちじゃなくてそっちに行っちゃったのかなぁ…。三周を歩く途中でつまづいてアッと言っちゃったのがだめだったのかなぁ。地球の奴らはいいよな、僕のおかげで学校がなくなって…。

火星では平和な9月1日がやってきた。

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