雨の町【ショートショート702字】
「魔術師さん、明日は中学校の体育祭だから、雨止ませといてー」
「はい、わかりました!」
課長に声を掛けられて、私は元気よく返事した。私は5年前から、町役場の観光課に勤めている。ニックネームは「魔術師」。というのも、町に降る雨を自在に止ませることができるからだ。
A町は雨の町だ。三方を山に、一方を海に囲まれた古い町。年間降水日数は300日を越え、住民の体感としては「いつも雨が降っている」という状態だ。
A町は5年前から「雨と霞の町、A町」をうたって観光客を呼び込ん