言葉のふしぎ

なぜ英語が世界の共通語になったのか、という記事を読んだことがある。動詞の活用が非常に少なく、世界中の言語の中でも簡単な部類に入るから、というのがひとつの理由らしい。

確かに、たとえば英語の「話す」は主語が何であっても「speak」であり(三単現のsはつくけど)、時制は過去形の「spoke」と過去分詞の「spoken」しかない。未来形はwillをつけて「will speak」にすればいい。

それにひきかえ、スペイン語やポルトガル語(おそらくフランス語も)は、動詞が90通りに変化する。ポルトガル語の場合、まず主語によって6つに動詞が変形し(ブラジルでは使わない人称があったりするけれど)、さらに時制は15もある! 直接法現在、直接法現在完了、直接法完全過去、直接法不完全過去、直接法未来、直接法過去未来(過去未来って何だ!?) そして直接法だけでなく接続法というものがあってまたそれぞれに時制が・・・

ドイツ語は一度も習ったことがないけれど、同じくらいたくさんの活用形があり、名詞も男性型・女性型のほかに中性型?もあるときく。
そしてフィンランド語もめちゃくちゃ難易度が高いというのも有名・・・などなど。

そしてそれぞれの国や地域で、小さな子供が、いちいち、この場合は直接法完全過去ではなく直接法不完全過去にするべき、などと考えながら話している訳はなく、何の苦もなくこれらを自然に使い分けながら話しているのかと思うと、驚嘆してしまう。

日本では私の時代は中学から(今は小学校からですね)英語を習ったけれど、これがスペイン語やフランス語やドイツ語でなくて本当によかったと思う。90通りの動詞の活用、語尾の変化、名詞の性別、そして規則動詞があり不規則動詞があり・・・絶対に挫折していたであろう。

しかし! 日本語の文法も、世界の言語の中ではかなり難解な中に入るという。それはそうかもしれない・・・ 五段活用、上一段活用、下一段活用、カ行変革活用、サ行変格活用!ですます・である、あげる・もらう、それに、敬語!! 丁寧語&尊敬語&へりくだり語・・・

ヨーロッパ言語はアルファベットだけれど、ロシア語の文字(私の出身大学にはロシア語学科があるが、それを彼らは「悪魔文字」と呼んでいた)、タイ語の文字、もちろんアラビア語、そしてスリランカのあの可愛らしいシンハラ文字にタミール文字・・・いったいどうやったら覚えられるのか。スリランカでお世話になった日本山妙法寺のお上人様方(日本人)が、話し言葉はもちろん、シンハラ語の読み書きもマスターされているのには恐れ入った。

しかし! 日本語の文字も、明らかに世界の言語の中ではかなり難解な中に入るであろう。ひらがな、カタカナ、そして漢字・・・・

それぞれまったく違う言葉、まったく違う文字、それらが個々の文化の中で育まれ、体系化されているこの世界。しかも、それぞれの国の中でも言語が分かれている多言語国家もあり・・・聖書に出てくる「バベル」の話は本当なのではないだろうか、といつも思ってしまう。

学生時代にしっかり学んだはずのポルトガル語を、いま何十年かぶりに勉强しなおしている。まさに、頭の中の化石を掘り出す感覚ではあるけれども、ごくたまに、単語やフレーズがぽつぽつと記憶の中から浮かび上がる瞬間がある。そして、脳のふだん使わない部分を一所懸命使っている感覚があり、もしかするとこれは、今後衰える一方の脳力のトレーニングとしてはなかなかよろしいのではないか、と期待している。

そして何より不思議なのは、いまポルトガル語を勉强するのがなぜかとても楽しい。なんとも不思議なタイミングだけれども、きっとこれは何か、どこかにつながっている道なのだろう・・・・と信じて、なんとか毎日早朝、カタツムリのようにゆっくりだけれども、勉强を続けている。

道のりは長い(Um longo caminho a percorrer .. で合っているのか??)、でも、とても、楽しい!!

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