幽霊化代行 墨羅最死強 ~死霊刀と微幽王の世界~2話
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前回の話
2話目:『死霊刀、解放』
墨羅 最四境──いや、幽霊化した彼の名は墨羅 最死強(ぼくら さいしきょう)。その霊的存在としての異質さは、特霊十三死団の隊士たちをも驚愕させた。
「お前……本当に幽霊化しやがったのか?」
倒れた伊澤が苦しそうに言葉を吐き出す。墨羅の体を包む青白い光とその手に握られた**死霊刀(しれいとう)**は、普通の特霊隊士が持つものとは明らかに違っていた。
死霊刀から立ち上る霊的なオーラは、周囲の空気を変え、境亡者すら一瞬たじろがせた。
「まあな。けど、これがどんなもんなのか試してみないとわからねえけどな」
最死強が刀を握り直し、境亡者に向き直る。その目は鋭く光り、闘志に満ちていた。
境亡者の巨体が動き出す。分厚い腕を地面に叩きつけ、衝撃波が周囲に広がる。普通の特霊隊士ならひとたまりもない攻撃だ。
だが、最死強は違った。
「ちょっとやそっとの力比べじゃ負けねえぞ!」
彼は地面を蹴り、瞬時に境亡者の懐へと入り込む。青白く輝く死霊刀が振り抜かれ、その刃先が境亡者の外殻を切り裂く。
「効いてる……だと!?」
伊澤が呆然と呟いた。境亡者は通常の死霊刀では傷つけることができないはず。それが墨羅 最死強の一撃で明確にダメージを受けていた。
「どうやらこの刀、普通のやつとはちょっと違うらしいな」
最死強は不敵な笑みを浮かべ、再び境亡者に斬りかかった。死霊刀の光がさらに強く輝き、周囲の空間が震える。
境亡者の咆哮が響き渡る。その巨体がさらに膨れ上がり、最死強を押し返そうとする。
「くそっ……やっぱりこいつ、ただの境亡者じゃねえ!」
最死強が足を踏みしめ、死霊刀を構える。その瞬間、刀身に刻まれた紋様が淡い光を放った。
「これが……この刀の本気かよ?」
最死強の視界に、一瞬何かが見えた。それは幽冥界の中心を象徴するような紋様だった。そして、それが何かを意味するのかは、今の彼にはまだわからなかった。
「だが、そんなことを考えてる暇はねえな!」
最死強は全身の力を込めて死霊刀を振り下ろす。その一撃は境亡者を真っ二つに引き裂き、霊的エネルギーの断末魔が辺りに響き渡った。
「……やりやがった」
伊澤は呆然としながら最死強を見上げた。境亡者を倒し、その場を制した最死強の姿は、もはやただの幽霊化した存在ではなかった。
彼が何者なのか。それを知るためには、もっと深く掘り下げる必要がある。
「さて、これで一件落着ってわけにはいかねえな」
最死強が刀を肩に担ぎながら呟いた。
彼の戦いはまだ始まったばかりだった。