幽霊化代行 墨羅最死強 ~死霊刀と微幽王の世界~3話
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前回の話
3話:『死霊刀の謎』
境亡者との激闘が終わり、戦場には静寂が戻っていた。墨羅 最死強は肩で息をしながら、手に握った**死霊刀(しれいとう)**を見つめていた。その刀身には、どこか異質な紋様が光っていた。
「……本当にお前、幽霊化してんのか?」
倒れたままの特霊隊士、**伊澤(いざわ)**が困惑した表情で呟く。幽霊化した存在が死霊刀を扱うなど、特霊十三死団の長い歴史の中でも聞いたことがないことだった。
最死強は刀を肩に担ぎながら、淡々と言葉を返す。
「俺だってわかんねえよ。でも……こいつが俺を選んだってんなら、それで十分だろ?」
伊澤は何か言い返そうとしたが、その言葉は喉で止まった。最死強の言葉には、どこか圧倒的な説得力があった。
戦闘の余韻と疑念
死霊刀が放つ青白い光が消え、辺りの空気は再び穏やかになった。しかし、地面には境亡者が残した霊的な痕跡が薄く漂い続けていた。
「……これはただの境亡者じゃないな」
最死強がその場に残された霊の痕跡を見つめながら呟く。伊澤もそれに気づき、険しい表情を浮かべた。
「おそらく、滅亡支の連中が動き出してる……ってことだろうな。」
滅亡支──幽冥界の均衡を壊そうとする存在。特霊十三死団にとって、長年の敵である。
「滅亡支か……厄介だな。」
最死強の瞳には、一瞬、何か強い決意のようなものが宿った。しかし、それが何を意味するのか、本人にもまだ分かっていなかった。
死霊刀の異常性
伊澤は死霊刀をじっと見つめ、呟いた。
「お前のその刀……普通の死霊刀じゃねえな。」
最死強は肩をすくめた。
「そんなことはわかってる。けど、これが何なのかまでは……。」
その時、死霊刀の紋様が再び光り始めた。それはまるで何かを語りかけるような脈動を伴っていた。
「こいつ……何かを見せようとしてる?」
最死強の視界が一瞬歪んだ。まるで時間が止まったかのような感覚の中、彼は刀の中に眠る“何か”を垣間見た。
それは幽冥界の中心部──巨大な存在が封じられた場所。**微幽王(びゆうおう)**という言葉が、最死強の脳裏に浮かんだ。
「微幽王……?」
彼はその言葉の意味を考える間もなく、視界が元に戻った。
新たな脅威の兆し
「おい、どうした? 急に黙りこくって。」
伊澤の声で我に返った最死強は、軽く首を振った。
「……なんでもねえ。ただ、この刀が俺に何か伝えようとしてるのは確かだ。」
その時、遠くから響く霊的な波動が二人を襲った。強大な霊的エネルギーを感じた最死強は、死霊刀を握り直す。
「また面倒な連中が来るのかよ……。」
伊澤は立ち上がり、最死強の隣に並んだ。
「どうやらそうらしいな。休んでる暇はなさそうだ。」
次話予告:微幽王の影
死霊刀の謎、そして微幽王の存在が徐々に浮かび上がる中、滅亡支の動きが加速していく。次回、さらなる戦いが幕を開ける──。