語られないこと
息がしにくいのは何故だろう、
たぶんマスクのせいだけじゃない。
たとえ口に出し語られなくとも、
ことばになる以前のその何かは、
たしかに私のなかにある。
他人からは見えないし、
あたりまえだが、
見ようともされないそれらのこと。
そもそもないものに、
されてしまわぬか、
曇天の空を見上げる。
語ることを拒まれた、
無数のことばたち。
心の奥深くにある群青の湖底へ、
静かに降り積もる。
相手の基準による、
暗黙の解答が透けて見えるなか、
語ることを求めることがある。
相手の基準に見合う答えを探している時点で、
もはやそのコミュニケーションは、
理不尽なゲームへと変容している。
解釈の主権は相手にあるわけで、
これは元から不利なゲーム。
いつ殴られるかを待っているだけの、
不公平なやりとり。
求められているのは、
ただ応答することかもしれない。
YES or NO。
全問正解が不可能な、
虚しいクイズ大会。
役に立つか否かで作られた世の中。
どれだけ丁寧に言語を尽くしたところで、
受け手の需要に見合う部分だけが、
丁寧に切り取り摂取され、
残りは無惨に打ち捨てられる。
本当の語りは、
私自身から生まれるもの。
商品やサービスじゃないと信じながら。
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