【今日】 大祓詞(おおはらえのことば) 【神社で半年に一度】
古くは遊女が祈る場所
──だったらいいなと思う程度の、とある風俗街の片隅の小さな神社。
こんな街だからこそ機能している町内会の号令で催される催事から、学んだことは多かった。
「字がキレイなだけで、高級ホテルで働けるんだぞ」
そう言って神主さんは、社務所の休憩室で、習字教室を開いていた。毎月2000円のお月謝を払うか、毎週土曜の朝に、境内の掃除を手伝うか。私は当然後者。
お習字が終わると、お祭り用の機械でわたがしを作ってくれたから、みんな喜んで通った。
神主さんの言葉通り、ホテルで席札や部屋札を書いたり、大きな神社でご朱印帳を書く『筆耕士』になった子も、わずかながらいる。
そんな神社で習った弓や神楽のおかげで、所作や裾捌きが身について、舞台では随分重宝した。でもひとつだけ、覚え損ねていたものがあった。
神主さんが詠む、あの、かっこいいやつ。
『祓詞』だ。
まず、何を言っているかが、わからない。
節回しが独特で聞き取れない。
種類がありそうだが、聞き分けられないし、宗派だの流派だのの違いで、誤ったものを唱えてしまっても、なんとなく怖い。
ただ、年に二回の『大祓(おおはらえ)』──日々、知らず知らずのうちに犯している罪を払う日──が、『六月(みなつき)の晦』、つまり、
今日、6月30日なので。
今日この日、全国各地で読まれるであろう『大祓詞(おおはらえのことば)』のうち、以前Wikipediaにあるスタンダードな3つを読み比べたものを、紹介させて頂こうと思う。
◆祓詞の種類
前提として、祓詞には何種類かがあり、また、読む場所や神社が決まっていたりもします。
『神拝詞』
神社ごとに作文される為、作文した神社が著作権を保持。
『祝詞』
都度作文される為、作文した神社が著作権を保持。
このふたつは読めないので、おとなしくWikipediaにあるものを読むことにしました。
◆祓詞の簡略型
祓詞は基本的には、神主さんが唱えます。
ただ、それを一般の人が、またどの宗派の人が詠んでも良いように簡略化したものがあります。それがこちら。
声優の荘司哲也さん@TETSUYA_INFOのイベントに参加させて頂いた時のものなので、アニメやゲームのキャラクター的なバトル風味に読ませて頂いてます。
ゲームのキャラクターみたいなかっこいい動画にして頂きました✨
こちらの、きまぐれびとさんが作ってくださった方はCMっぽい。美しい…
この動画で詠んでいるのは、誰でも気軽に読めるよう、簡略化されたもの。
【原文】
【書き下し文】
こちらの意味ですが、祓詞はだいたいが二部構成で、
前段:古事記や日本書紀が伝える神話上の出来事を挙げる
後段:前段を受けて『神様がそういう時はこうしたから、私達もそうしましょう』と伝える
と、なっています。
前述の祓詞を分解すると、
【前段】
伊邪那岐神は死者の国へ行き心身が穢れ、帰って来た。
そこで筑紫の日向の橘の小戸の阿波岐原と言う場所で、海水を浴びて禊を行った。
その時、多くの祓戸の神々が生まれた。
この神々の力により、多くの罪や穢れを清められたとある。
【後段】
祓詞を唱えれば、祓戸の神々の御神力により、罪や穢れが清められると言われる。
出典:神社本庁教学研究所監修『神道のしきたりと心得』(池田書店、1990年、ISBN 978-4262149370)全224頁中120頁
こうなります。
簡略化してこれなので、簡略化していないもの──半年に一度、6月30日と12月31日に読まれる【大祓詞】は…………(汗)
◆大祓詞
こちらの動画では、大祓詞を、成立順に三種類読み上げています。
成立当初は六月と十二月に奏上されていましたが、テキストとしては『六月晦大祓祝詞』だけが現代に残りました。
12月31日には、六月(みなつき)が十二月(しわす)になるのだと思います。
まずは原文。
前段では、葦原中国平定から、天孫降臨し天孫が日本を治めることになるまでの日本神話の内容が語られます。
国民が犯してしまう罪の内容を「天つ罪・国つ罪」として、罪の祓い方が述べられる。
後段では、祓を行うと罪・穢れがどのように消滅するかが語られる。罪・穢れが消滅する様を様々な喩えで表現した後、四柱の祓戸神によって消え去る様子が述べられます。
これを原型に、内務省が1914年に定型文を制定。
その後、神社本庁が1948年に例文を示しました。
どれも神職でなくても、誰が読んでも良いものなので、3つを読み比べてみました。
書き下しで字幕をつけてあるので、見てみてください。
【書き下し文】
六月晦大祓〔十二月も此に准へ〕
集侍はれる親王 諸王 諸臣 百官人等諸聞食せと宣る
天皇が朝廷に仕奉る 比礼挂くる伴男 手襁挂くる伴男 靫負ふ伴男 剱佩く伴男 伴男の八十伴男を始めて 官官に仕奉る人等の 過犯しけむ雑雑の罪を 今年の六月の晦の大祓に 祓給ひ清給ふ事を 諸聞食せと宣る
高天原に神留り坐す 皇親神漏岐神漏美の命以ちて 八百万の神等を 神集に集賜ひ 神議に議賜て 我が皇孫之尊は 豊葦原の水穂の国を 安国と平けく所知食と事依し奉き
如此依し奉し国中に荒振神達をば 神問しに問し賜ひ 神掃に掃賜ひて 語問し磐根樹の立草の垣葉をも語止て 天磐座放ち 天の八重雲を伊頭の千別に千別て 天降依し奉き
如此依さし奉し四方の国中と 大倭日高見之国を安国と定奉て 下津磐根に宮柱太敷立て 高天原に千木高知て 皇御孫之命の美頭の御舎仕奉て 天之御蔭日之御蔭と隠坐て 安国と平けく所知食む国中に成出む 天の益人等が 過犯けむ雑々の罪事は
天津罪と 畦放 溝埋 樋放 頻蒔 串刺 生剥 逆剥 屎戸 ここだくの罪を 天津罪と法別て
国津罪と 生膚断死膚断 白人胡久美 己が母犯罪己が子犯罪 母と子と犯罪子と母と犯罪 畜犯罪 昆虫の災 高津神の災 高津鳥の災 畜仆し蟲物為罪 ここだくの罪出でむ
如此出ば 天津宮事を以て 大中臣天津金木を本打切末打断て 千座の置座に置足はして 天津菅曾を本苅断末苅切て 八針に取辟て 天津祝詞の太祝詞事を宣れ
如此乃良ば 天津神は天磐門を押披て 天之八重雲を伊頭の千別に千別て所聞食む 国津神は高山乃末短山之末に登坐して 高山の伊穂理短山の伊穂理を撥別て所聞食む
如此所聞食てば 皇御孫之命の朝廷を始て 天下四方国には 罪と云ふ罪は不在と 科戸之風の天之八重雲を吹放事之如く 朝之御霧夕之御霧を朝風夕風の吹掃事之如く 大津辺に居る大船を 舳解放艫解放て大海原に押放事之如く 彼方之繁木が本を焼鎌の敏鎌以て打掃事之如く 遺る罪は不在と 祓賜ひ清賜事を 高山之末短山之末より 佐久那太理に落多支都速川の瀬に坐す瀬織津比咩と云神大海原に持出なむ 如此持出往ば 荒塩之塩の八百道の八塩道之塩の八百会に坐す速開都比咩と云神 持かか呑てむ 如此かか呑ては 気吹戸に坐す気吹主と云神 根国底之国に気吹放てむ
如此気吹放ては 根国底之国に坐す速佐須良比咩と云神 持さすらひ失てむ
如此失てば 今日より始て罪と云ふ罪は不在と 高天原に耳振立聞物と馬牽立て 今年の六月の晦日の 夕日之降の大祓に 祓給ひ清給ふ事を 諸聞食せと宣る
四国の卜部等 大川道に持退出て祓却と宣る
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【出典】
https://ja.m.wikisource.org/wiki/大祓詞
https://ja.m.wikisource.org/wiki/六月晦大祓祝詞
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