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母と食べるお昼ご飯(パーキンソン病の母に寄り添う日記1)

母がこんなにも小さく感じるようになったのはいつからだろう。

7月までは確かに元気だった。
シルバーカーを押して近くのスーパーに買い物に行き、
毎週火曜日に町内の公民館で行われる「100さい体操」に参加していたはず。
1か月に1回、内科に受診していた母。
毎回、血液検査をしていたが、ある日主治医が「貧血の数値が悪い。紹介状を書くから大きな病院で診てもらいなさい」と言われ、国立病院に入院した。
10日間の検査入院。
この日を境に母の症状は進んでいく。

・・・パーキンソン病。

検査入院を終えて家に帰ってきたけれど、
一度椅子に座ったら、介助なくては立ち上がれない。
幸い父が元気なので、普段の生活の介護をすべて行っていた。
ごはん、お風呂、トイレ、着替え・・・すべて
加えて掃除、洗濯もしていて、まるで専業主婦のよう。
元気とはいえ、父は85歳!
おまけにペースメーカーを埋め込んでいる。
毎日の家事にストレスがたまり、思わず母につらく当たってしまうこともあるようで。
「ストレスがたまる」・・・思いがけず吐露した父の発言に
私が出来ることを考えた。
・・・数時間だけでも母を連れて外出する。

この時間だけでも父が一人になって、ゆっくり休めてもらえたらと思った。
お昼前に実家に行き、車で近くの食堂へいく。
「今日はスタミナ定食食べよか?」
食欲は旺盛。
ただ、食べる様子を見る限り、お箸を上手に使えていない。
こんな持ち方してたっけ?
ごはんもポロポロ、おかずもポロポロお箸をすり抜けていく。
お箸でお肉をはさんでも、口に運ぶまでにお皿に落ちていく。
見かねてお盆を母の体の近くにもっていく。
時間はかかるけれど食べたい気持ちがあるので、何とか食べる。
周りの目もあるので、コソっと小鉢の位置を変えてみる。
まるで昨日お箸の使い方を覚えた男の子のよう。
そして私は子供の成長を見つめる母のよう。
立場が入れ替わってしまった。
けれどこれが現実。
受け入れていくしかない。

食事が終わると母の手をひいて車に乗り込み、帰路についた。
数時間、自分の時間を持てた父は、助手席から降りる母を迎え入れた。








           


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