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<アリス・ウォータース来日ツアー その1 海士町>

トップ写真/©野川かさね
本文/写真/小野寺愛、編集/海士の風
本人の許可を得て、個人の投稿を転載しています。

『スローフード宣言』の1周年を記念してアリスが来日しています!

海士町をヘリから撮影

めくるめくツアーの毎日でなかなか報告の隙間がありませんが、最初の訪問地は、島根県隠岐諸島の海士町でした。

スーパーもコンビニもない人口2300人の島で、お米は100%自給。農家さんの組合が元気で、耕作放棄された水田はほとんどありません。海も豊かで、人と人、人と自然の距離が近く、神楽やしめ縄作りなど、町の皆で集まる行事も盛ん。町で唯一の信号機は、「いつか子どもたちが島を出るときに戸惑わないように」小学校のそばに作られたと聞きました。

そんな島にできた小さな出版社「海士の風」から、アリスの本は出版されました。ツアーはやはり、このリアル・スローフード・アイランドからはじめました。

(フェリーでは本州側から3時間かかるため、Peace Winds Japanのご協力でなんとヘリで移動!30分で島に到着しました。災害支援や離島医療にも活躍するヘリだそうです)

後鳥羽上皇の皇太子も過ごした歴史ある資料館「村上家」に島の人たちが50人以上集まった歓迎会では、手作りのおはぎに感激!

材料はすべて島根県産(もち米は海士町産)、器まで、海士の粘土で焼いた海士産のものでした。そんな地産地食の歓迎を美味しくいただいてから、『スローフード宣言』についてアリスがスピーチ。

海士の風の事務所(村上家資料館)で行われたトークイベント

「今回、私が出版したこの本は、政治的な本です。何しろタイトルに “宣言” とありますからね。課題が山積みなこの世界を変えていくために、次世代にもう一度、人間らしい価値観を伝えていくこと。それ以上に大切なことはないと信じて、書いた本です。

 “We Are What We Eat” - 私たちは、食べたものでできています。人は皆、ラッキーなら、1日3回、食事をすることができます。毎日の食卓に、誰がどこで作った何を選ぶか。その選択と決断で、私たち自身の健康も、この地球の健康も、いいほうにも悪いほうにも変わります。

 何をどう食べるか、それは、私たち誰もが参加できる、世界とつながるためのパワフルで政治的な選択なのです」と、一言だけご挨拶いただく予定が、このあとも金言だらけでした。(続きはぜひ、来春にできる予定の映画でご覧ください♪)

地元の高校生たちと

この会には、地元の高校生たちも(学校を早退して!)参加してくれて、16歳の一人から、こんな質問が出ました。

「小学校のとき、校庭でみんなで育てた野菜を食べたのがとても楽しくて、美味しかったです。こちらの高校では寮生活をしていますが、寮の食事がもっと美味しくなったらいいなと思って、学校でエディブルスクールヤードをやりたいと提案しようと思っています。どこから始めたらいいか、ヒントをもらえますか?」

アリスは大きな地図を広げながら、言いました。
「嬉しい!それは素晴らしい提案だと思います。28年前、バークレーのたった一つの公立校から始まったエディブルスクールヤードは、今では全米で6200校以上に広がりました。毎年、夏に、世界中から集まる教育者の研修を行なっていますから、あなたもよかったら、バークレーに来てくださいね。

エディブルスクールヤードで次世代に伝えたいのが、本書で “スローフード的価値観” と呼んでいる、人間らしい価値観を取り戻すことです。それは、ガーデンやキッチンからはじまります。

海士町の小学校で初めて稲刈りを体験

ガーデンで学ぶといっても、伝えているのは農作業のスキルではありません。五感をはたらかせ、手を動かしながら、子どもたちが自分で経験する中で、国語算数理科社会などの教科学習を、教室の外で学んでいくのです。たとえば地理の授業なら、キッチンで食材を選び、巻き寿司を作って、箸を使って食べたら、日本ってどんな場所だろうと好奇心が湧きますよね。

それがここ、海士町でも広がるのは、素晴らしいことです。あなたのその情熱、どうか持ち続けてください。そして、学校内の仲間だけでなく、校長先生や理事長、地域の人たちを巻き込んでね」

巻き込む、とはどうしたらいいのかを高校生から尋ねられると、
「私が誰かを仲間にしたいときは、いつもその人と一緒に食卓を囲みます。場所は、家に招待してもいいし、公園でのピクニックでもいい。大事なのは、ハッとするようなおいしさや美しさを共有することです。それはいつだって、どんな言葉よりも変化のきっかけになるのだから。
エディブルスクールヤードで大切にしている言葉をお伝えしておきますね。

"Beauty is a language of care (美しさは、愛情の言語です)"


子どもに接する姿勢も、場づくりにおいても、美しさは必ず人の心をつかみます。ぜひ、仲間をピクニックに連れ出して、あなたの情熱を伝えてみてください」

夜は、100%海士町産のおいしいお食事を島の漁師さんや農家さんと一緒にいただき、翌日は地元小学校を訪問。素晴らしい学校給食をいただきました。そんな様子も是非、映画を楽しみにしていてください。

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