見出し画像

アメリカのサプリメントのトレンド、及び個人的に注目しているサプリメント3選

アメリカに住んでいると、いたるところでサプリメントが売られているのを目にします。薬局だけではなく、Whole FoodsなどのスーパーマーケットやCVSなどのコンビニエンスストアでも、大量に売られています。


Nutrition Business Journalがまとめた『2016 NBJ Global Supplement Report』によると、2014年の世界のサプリメント市場は、1,080億米ドル(約11兆円)。国別に見ると34%をアメリカが占めており、その市場は367億ドル(約4兆円)とされています。


世界で最も有名で、かつ権威がある学術雑誌の一つ『JAMA(The Journal of the American Medical Association) 』に、アメリカにおけるサプリメントのトレンドが掲載されていましたので、ご紹介します。


約38,000人のデータの中から、サプリメントに関する情報がある約5,500人を対象に調査がされました(平均年齢46.4歳、52%が女性)。
その調査結果から、アメリカ人の52%が何らかのサプリメントを日常的に使用していることがわかりました。
各サプリメントの使用率が、前回の調査(1999-2000年)から今回の調査(2011-2012年)で、どう変わったかも判明しました。MVMM(multivitamins/multiminerals、マルチビタミン)の使用者は約6%減少し(37→31%)、逆にビタミンD製剤やFish oilの使用者は増えていました(それぞれ5.1→19%、1.3→12%)。これは、サプリメントと健康に関する最新の研究結果に照らしても、納得のいく数値です。

サプリメントと健康について
1. MVMM
従来、ビタミンやミネラル不足への対策としてMVMMの摂取は推奨されてきました。しかし最近では、その効果を疑問視する研究結果も多く認められています。
 MVMMを毎日10年間服用しても心血管疾患予防には効果なしの可能性
「MVMMの長期服用により、男性の重大心血管イベント発生(重大心血管疾患(非致死的心筋梗塞・非致死的脳卒中・心血管疾患による死亡の複合))は減少するか」に関する研究がなされています。これは、プラセボ服用との比較による「無作為化二重盲検プラセボ対照試験」の形で実施されました。アメリカの医師約14,000人(平均年齢64.3歳)を対象とし、追跡期間の中央値は11.2年(範囲:10.7~13.3)。毎日のMVMM服用の効果は、プラセボ群と比較して、「有意ではない」という結果に終わりました(ハザード比:1.01(95%信頼区間:0.91~1.10)、P=0.91)。


2. ビタミンD製剤
ビタミンDは、骨密度維持、免疫調節作用や抗がん作用など、多彩な作用を有する脂溶性ビタミンの一種です。しかし高齢者での服用過多は、急性腎不全などにもつながるため注意が必要です。
 血糖コントロール改善効果あり
2型糖尿病など、さまざまな生活習慣病の背景には、ビタミンD欠乏があるといわれています。このたび、2型糖尿病患者のビタミンD摂取が、糖代謝に及ぼす作用について、系統的レビュー/メタ解析が行われました。対象は約1,600人の2型糖尿病患者です。その結果、ビタミンD摂取が、HbA1c値の有意な低下(-0.30%、95%信頼区間:-0.45~-0.15、P<0.001)、空腹時血糖値の有意な低下(-4.9mg/dL、95%信頼区間:-8.1~-1.6、P=0.003)、及びインスリン抵抗性(HOMA-IR)の有意な低下(-0.66、95%信頼区間:-1.06~-0.26、P=0.001)をもたらすことがわかりました。


3. Fish oil
魚などに多く含まれるEPA/DHA(オメガ3系必須脂肪酸)は、中性脂肪を下げる効果が知られています。さらには抗炎症作用により、動脈硬化性疾患(高血圧、心血管疾患、脳梗塞、認知症や慢性腎臓病など)や炎症性疾患など、さまざまな疾患を予防できると期待されています。
 慢性腎臓病患者444名を解析対象とし、オメガ3系必須脂肪酸の効果を検証したメタ解析をご紹介いたします(フォローアップ期間:2ヶ月~76.8ヶ月)。非投与群や低用量投与群に比べて、高用量投与群では、タンパク尿リスクの有意な低下が認められました (平均-0.31g/日、95%信頼区間:-0.53~-0.10、P =0.004)。また、末期腎不全のリスクの低下も認められました(RR:0.49、95%信頼区間:0.24~0.99、P=0.047)。

ここで紹介しました研究結果は、ごく一部です。

もちろん、サプリメントの使用は万人に対して、よい結果を与えるわけではありません。

良い結果が認められていない研究結果もあります。この点を踏まえ、自分にあったサプリメントをうまく活用し、より良い状態をキープいただければ幸いです。


最後に、個人的に注目しているサプリメントを3つ挙げさせていただきます。

個人的に注目しているサプリメント3選
1. グルコサミン

変形性膝関節症など、膝の痛みに対して使用されてきたサプリメントです。最新の研究では、心血管疾患に対してもよい効果があることがわかってきました(グルコサミン投与は、変形性関節症の治療で一般的に使用されていますが、疾患や関節痛の軽減への効果についても、今なお議論が続いています)。
約46万人を対象にした研究によると、グルコサミン投与群は心血管疾患イベントが15%も低下していました。とはいえ、グルコサミンと心血管疾患との関係性を示した研究は、まだ多くはありません。今後のさらなる研究が期待されます。

2. レスベラトロール
レスベラトロールは、ポリフェノールの一種で、赤ワインやブドウ、ピーナッツなどに見出される色素成分です。抗酸化作用や抗炎症作用を有し、動脈硬化予防や糖代謝改善などの効果が期待でき、健康維持や生活習慣病予防の観点で注目されています。また、皮膚のシワやシミの予防、ニキビの改善など、美容分野からも期待されています。
さらに最近の研究では、長寿関連遺伝子の一つであるサーチュイン遺伝子の活性化を促すことから、「アンチエイジング効果があるのではないか」ともいわれています。

3. 桂皮(シナモン)
複数の樹木の内樹皮から得られる香辛料であり、肉桂とも呼ばれています。熱帯各地で幅広く栽培されており、その香りの高さから『スパイスの王様』との異名もあります。その歴史は実に数千年にも及びます。
抗酸化、抗炎症作用、インスリン抵抗性を介して糖代謝を改善するなど、さまざまな効果がわかっています。アンチエイジング効果に対する期待も持たれています。


参考文献
JAMA. 2012 Nov 7;308(17):1751-60
J Clin Endocrinol Metab. 2017 Sep 1;102(9):3097-3110.
Clinics (Sao Paulo). 2017 Jan 1;72(1):58-64.
BMJ. 2019 May 14;365:l1628.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?