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【玄人向け】Chime【これは怖い】

 黒沢清監督の激怖ホラーという評判を聞き、さらに45分という短さも手軽なことから、さくっと見に行ってきました。シネマカリテは久しぶり。

 何が手軽だ、馬鹿野郎。
 見終わってからずっと心臓のバクバクが止まらない。
 はっきり言えば、思った以上のことは何も起こらない映画です。私も見終わった後に、「こんなもんかぁ?」と肩透かしを食らったくらい……。そこからずっとドキドキが止まらないまま、夜。
 この恐怖の根源は何なのかを落ち着かせるために、どうにか言語化しようと思って、今、ポメラを開いています。というか、これは恐怖なのか? ただの興奮なのか?
 ホラー映画の手法をふんだんに使い、要所要所は不穏 of 不穏。BGMもカットも、普通のホラー映画なら、ここで何かが起きるだろうに……というところで、しかし、この映画では何も起きない。逆に、何かが起きているときは、日常の中でさらっと描かれる。
 同監督作「CURE」の後のような世界、という感想を目にしたけれど、そうかもしれない。確かあれは心の奥に秘めてある悪意の解放による癒やし、みたいな、嫌な映画だった。ほとんど内容を忘れているから、また見返したいな。
 この映画のホラーの根源は「理不尽」にあるのか。いや、そうじゃないような。だって、料理教室で丸鶏を粗末にする生徒の態度には、私もムカッとしたし、ナイフを突き立てて殺す主人公には、若干の共感を覚えた。
 この映画に描かれている殺意には、必ず理由がある。ただ、それはものすごく些細なことなのかも知れない。
 大量の缶詰を踏み潰す音とか、わざわざそれを食事の途中に席を立って行う妻とか。振り返った瞬間、嘲笑っているような表情の息子とか。普段からちょっと小馬鹿にしてそうな態度とか。就活がうまく行かないこととか、これから先の将来の不安とか。
 そういったものが積み重なって、あるとき、ふと湧き上がる殺意が表出したものが、この映画なのかな、と考えた。その境界線は、案外薄いのかも知れない、とも。

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