【細か過ぎる】バック・トゥ・ザ・フューチャー【新吹き替えの感動】
私はTV版吹き替えを一切許さない。私は青野ドク、マーティ山寺、翻訳は戸田奈津子の、オリジナル吹き替え版で育った。私にはTV版吹き替えはわからぬ。TV放送時には、わざわざオリジナル吹き替え版を引っ張り出して、同時進行で視聴してきた。
しかしながら、だからこそ、今回の金曜ロードショーの「新吹き替え」のキャスティングには、興奮せざるを得なかった。あのマーティだった山寺宏一が、ドクをやるの…?
この興奮をどうにか書き留めないといけないと思い、こうして筆を執っている。かわいそうなオタクの嘆きも、この広いネットの海は受け入れてくれるだろう。吐き出させてほしい。
さて、バック・トゥ・ザ・フューチャー(以下、BTTF)。言わずと知れた、名作SF映画である。ⅠからⅢまで、どこを切り取っても面白いという、伝説的映画である。
詳細は省くが、未就学児から、BTTFを享受している。人生で一番繰り返し見た映画を聞かれたら、間違いなく、この作品を挙げる。
しかしながら、ずっと見てきたのは「吹き替え版」。しかも、ドク=青野武、マーティ=山寺宏一のバージョン。つまり、ソフト版、否、オリジナル吹き替え版であった。
このオリジナル版がまったく世間に浸透していないことは、過去の金曜ロードショーの放送のたびに思い知らされる。やれ「マーティ山寺版は大人びすぎている」だの、何だのの批判と共に、軽過ぎる声の「新」吹き替えの声優を、あたかも正統として。
私が放送版との違いに気付いたのは、Twitter(現X)にて、それが可視化される前からのことである。気付いたのは、翻訳の違い──そう、幼少期から刷り込みのごとく見てきたオリジナル版の吹き替えの台詞が、TV版金曜ロードショーではまったく違うので、なぜ?となり、持っていたビデオを同時再生をしつつ、検討を始めた──あの瞬間にある。
声の質以前に、翻訳すらもTV版とオリジナル版は異なっている。私が繰り返し視聴し、台詞と共に覚えてきたオリジナル版は、戸田奈津子の翻訳版である。私が覚えている限り、金ローのTV版では一切出て来ない。
戸田奈津子の字幕についての是非はここでは問わない。しかしながら、微妙に、作品への違いを与えていることは確かだ。
例えば、Ⅰの冒頭の訳。マーティーがプラグを差して後ろに吹っ飛ぶシーン。そこから役者がサングラスを外し、顔が現れる──映画での最初の一言。これが戸田奈津子版だと「ぶっとび」である。
実際の台詞がどうなのか知らない。けど、ここでの翻訳は「ぶっとび」が最適である。なぜなら、彼は実際にぶっとんだのだから。ぶっとんで研究室の中をめちゃくちゃにしたことは、とりあえず端に置いている。少なくともここの翻訳は「まいったな」ではない。まいってはいない。彼はぶっとんだのだ。
映画の最初の台詞だけでこの熱量なのですべてにおいて検証を始めていると、とてもじゃないが、語りきれない。ただ、このオリジナル翻訳版の絶妙なワードチョイスは「30年前にタイムスリップする」という本作に、実にマッチしていく。
マーティの口癖である「ヘヴィだな」は、当時の若者言葉なのだろうが、30年前のドクが聞くと「未来の重力は~」とか何とか言い出して、ちょっとしたジェネレーションギャップを演出していく。こんなドクが、Ⅱでは未来にかぶれにかぶれ、「ナウい」などのワードを使っていくところも、実にいい。ちょっと古くさい、おじんによる若者言葉のチョイスっぽくて、本当にいい。
今回の新吹き替え版は、この戸田奈津子版の訳を使っている。私の知っているBTTFである…!(この時点で、一回泣いている)
実をいえば、それに気付いたのは、14日放送のPARTⅡのときであった。PARTⅠは録画していたものの、TV版の吹き替え放送には上記の理由からそもそも懐疑的だったので、見るつもりはあったが、先延ばしにしていたのだ。それを、居酒屋でたまたまついていたⅡの放送を聞いて、「これはオリジナル版!?」と気付き、ダッシュで家に帰り着き、視聴に至る。
ここでようやく、新吹き替え版、声の話をしたい。
オリジナル版山寺マーティは、17歳を演じるには「大人びている」とよく指摘を受けていたが、私には他バージョンのマーティは軽過ぎて、むしろ受け入れにくかった。マーティは、17歳ではあるが、自立心の強いティーンエイジャーで、ロックを愛し、スケボーで登校する、ちょっとやんちゃな少年である。Ⅰの気弱な父親、Ⅱのチャラチャラした息子との比較を考えても、山寺マーティで、私はまったく何の違和感もない。
今回の宮野マーティは、その山寺マーティの冷静さと、従来のTV版で求められていたであろう若さの声質の中間あたりで、全然OK、これは見られると思った。
さて、問題は山寺ドクである。最初に聞いたとき、これはちょっとおじいちゃん過ぎでは?と思ってしまった。
話が少しそれるが、その少し前に新作「らんま1/2」の良牙で「当時の若かった頃の自分に寄せた声質で演技する」という妙技を見せつけられた後だったから、その演技の振り幅に感嘆しつつも、「ドクはもう少し若いというか、実際は還暦くらいなんだろうけど、現役バリバリの研究者で、もう少し若い声の演技でもいいのでは…?」と、青野ドクに慣れ切った私は思ったのだが──1955年のドクの声を聞いて、号泣した。山寺宏一、1985年と1955年の声を、演じ分けている…?
考えれば、そう、彼はそれができる声優である。大ベテランである。七色(どころではない)の声を持つ男である。そして、その台詞と相まって、青野ドクの面影を感じ取り、さらに泣く。
他のキャスティングに関しても、今回はかなりオリジナル版に寄せてくれたようで、違和感が本当になかった。ロレインの声も、かわいい。本当にかわいい。
改めて、山寺宏一、この作品に出会ってくれて、ありがとう。かつてのマーティが、まさかドク役でまた出会えるなんて、こんな奇跡的なキャスティングは、この映画でなければ、為し得なかった。
オリジナル吹き替え版で私を育ててくれた実家、ありがとう。このせいで、TV版の吹き替えが一切受け入れられないという謎のオタクに育ったけど、今、その効果が花開いてます。
PARTⅢの放送もとても楽しみです。
ドクの運命の人、クララ役は誰かなぁ?
どんな声かなぁ?
すごくすごく、楽しみ!
と、書き連ねたのが先週のこと。
今週のpartⅢの吹き替えの録画を忘れていました。
つらすぎる…。
クララ、朴璐美さんだって…。聞きた過ぎる…。
死んでも死にきれないよ。。。
また放送してください、お願いします。。。