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『ミュージカル本好きの下剋上』感想

私が沼に落ちた『本好きの下剋上』がなんとミュージカルになりました。こういうのは生の舞台で観るのが一番ですが、今年は春には一人で北海道一泊二日、初夏には私の実家関係で夫と九州縦断旅行三泊四日を決行しており…;舞台は断念しその代わり配信両チームセットのものを購入しました。舞台当日の配信日は予定があり観劇ならず、結局アーカイブ配信開始までじっと我慢し…ようやく両方観ることが出来ました!
世の中に既にいっぱい感想が上がっていますが、私自身の感想も纏めておこうと思います。

■ミュージカルで良かった!

正直、普段観劇の趣味はないのです。地方在のせいもありそうそう足を運んだ経験も少ないです(あるにはあります)。映画は好きで割合に観ますが、映画館で観る回数はやはり少ない(基本的に出不精;)
が、これまで持ち込まれる企画案に首を横に振り続けていた原作者が初めてOKを出し役者さんのオーディションにも参加し決定権を持ち進行した舞台化なのです。面白くないはずがない。
そして観てまず思ったこと。一部とは言え相当に長い物語を全年齢に初見でも分かりやすく飽きさせず最後まで集中できるような仕上がり。
音楽と歌とダンスを入れることで情報量がUP。説明や心理描写が歌に入ることで歌い手が変わることで多視点の展開が自然だった。
例えば神殿長と灰色巫女たちのシュビデュワ~♪は短い中で神殿長のえげつない金銭欲や色欲をさくっと表現。小学生が見ても雰囲気が伝わるだけで十分v本当に上手い演出です。ベテラン俳優の三浦浩一さんは歌もお上手で神殿長とギルド長、どちらの役もさすがの安定感でした。

■ダブルキャスト!

Ateam Bteam それぞれのマイン、ルッツ、トゥーリ、フリーダ。
両チームともに素晴らしかったです。
あおマインちゃんはともかく原作から抜け出てきたようでした。ちっちゃくてほっぺたが柔らかくぷっくりして。そうか、こんなに小さな子が「担保」だの「資金」だの言えば異様さも際立つというものです。
皆に愛されて育った天真爛漫な笑顔、頭の回転の速さの様子もご本人の資質も相まって。豊かにくるくると表情を変える様も本当に可愛かった。
活舌は年齢相応に稚い感じでも逆に原作のリアル化という気がしました。動いて歌うと少し息も切れる。そこも虚弱なマインが一生懸命歌ってる感じもしてすべてがそのままマインという方向でした。
舞台度胸もすばらしくアドリブをよく仕掛けておられたとか。
あかりマインちゃんは伸びやかで安定した歌声、細やかな演技が素晴らしかったです。初めての森に行く前にギュン父との約束に対してのにっこり笑顔がまったく約束を守る気がないのが透けて見えて。
(これが、ルッツの言う「約束を守る気がない顔」だ!)と心中思わず唸りました。粘土質の土の歌とダンスの時の手つきも、実際に粘土が手の中にあるようなマイムで、演技の基礎的なことから積み上げて来られた努力家さんなのだろうなと思ったりしました。原作イメージからすればご自身は少し大きいというのをネックに感じておられたようですが、そのイメージの差を補うに余りある表現力の方でした。
ルッツ、トゥーリ、フリーダも両方本当に素晴らしくて!
特に心に残ったのはトゥーリが神殿に向かう3人を見送った後の背中です。特にBteamの心細くうなだれる背中を見た時、原作読んだ時以上に三人がもう帰ってこないかもしれない不安に打ち震える様が心に迫ってきました。
フリーダ役は二人とも本当に歌が上手くて声量も歌唱力も抜群という感じ。
ルッツ役は「オレのマインはお前でいいよ」や「嘘つき…」などハイライトがいっぱいあります。本当にイケメンで一部はやっぱりルツマイなんだよねえ~って思ってしまいましたw
特にA teamルッツ。オットーさんへの紹介を切り出す場面。
思い詰めた感じのルッツを見て(そっか、ここは彼にとって勇気を絞ってお願いしてるんだ…)とマイン視点だとそこまで身に染みてなかったことが改めてルッツにしてみればもっと重いことだったと理解出来て感謝でした。

■フェルディナンド!ベンノ&オットー、ギュンター&エーファ

フェルディナンド役の辻さんは(フェルディナンドに生き写しなんじゃ!)という謎の思考に入ってしまうくらい。ハマり役すぎてXでは本好きファンがバタバタと倒れ伏していました。
もちろん美しい外見がぴったり!というのもあるけれど、表情や動作なども原作を読み込んで表現してくださった上に素のオフショットもサービス精神溢れるもので、なんて素敵な方なのでしょう。
マインを膝に乗せて読み聞かせするときのデュオは絶対に脚本家さんが書籍ファンを殺しに掛かってきている、そういう意味深な内容でしたw確信犯ですよね、この歌は。素晴らしかったです。
矢野冬馬=ベンノさんは、謎の√ギルベルタ商会ダンスというのが話題だったので実際見たら面白くて振りもキレキレ。
この意味はなんだろう?とちょっと深読み。
√はスペル違いだけど、進路とか道筋という意味のルートと掛けてあって、ルッツとマインの進む道、ベンノさんは道しるべ=道標みたいな意味を持たせたりして?なんてことを呟いてみたり。
ベンノさんパートのハイライトでは「生きるためにあがけ」の歌が一番好きで、ベンノさんソロとコーラスも印象深いものでした。
契約魔術をルッツとマインとで交わす歌も良かった。
この契約魔術は後々まで重要で、下町家族達とマインをつなぐ大切な糸。
マインのソロパートの歌詞も胸に響きました。
オットー、穴沢裕介さんはダンスがともかく凄くて。なんとなくバレエダンサーのような美しい動きだなと思いながら見てました。軽やかで飄々とした表情もオットーさんでした。
書籍ではコリンナ視点SSでベンノさんとルツマイを会わせた後のやりとりは出てくるけど、会わせるためのベンノさんとのやりとりの直のシーンはなかったので、(なるほど!こんな風に多少粘って忙しいベンノさんを会う気にさせたんだ)と思えてここでも解像度が上がりました。会わせるよう段取りしたのがオットーさんで、不思議で賢くて面白い子であるマインの紹介というのであったのは分かっていても場面で見せられるとイメージが深まります。
田中雄飛さんのギュンターは大きくて強くて逞しくて。マイン達を守る為に戦う場面も親バカな様子もギュンターでした。
石橋佑果さんのエーファとともに「なぜにマインが」と嘆くデュオではボロボロ泣けました。

■アンサンブル!

灰色神官&巫女、青色神官&巫女、下町の人達子供達、この時点ではまだ名前が出ていない(多分フラン、エグモント、レオン、イェニー…達)含む兼ね役をたくさん演じられていたアンサンブルの皆様も本当に良かった。
早着替えのために重ね着されていた中でダンスも笑顔も歌も!
その中で佐藤大さんはカウントダウン動画を挙げたり、率先してSNSでも盛り上げておられて。兼ね役であちこちに出て来られる度に、(おお、佐藤さんがここにも!)と思いながら観ました。配信だと入ってない時もあって、やっぱ生で観ないとだったな、、ってちょっと残念でした。
道具屋さんの本おじさんも愉快でしたv
マルクさん役の藤希宙さんはずっとあの薄目を再現されていて、すごい!!と思いました。他の役の時は切れ長の目を開けておられたのですがv
どの方もユルゲンから現世に抜け出てきて下さったような感じで、原作の解像度をさらに上げて下さったと思います。

■大団円!

クライマックス、全員による合唱シーンはもう本当に胸が熱くなります。
本よりも家族が大事と思えるようになった麗乃=マインの心の成長。
よくアンチの人が書くエゴイスティックなまでの本が最重要だったマイン。そのマインが家族愛の方を選ぶことになったのもギュンター&エーファ、トゥーリの愛があってこそ。そこに至る心理過程のリアルが舞台にありました。血肉を持った生身の演技が深い説得力を持っています。
「ただいま」「お帰り」と4人が抱き合い交わし合うところは最終巻にもつながるところもあり。大団円のtuttiにぼろぼろ涙…。
そしてエピローグとしてのフェルディナンドとマイン。
2人で麗乃の現世の記憶同調に向かいまた少しコミカルに明るく、続きを予感させる終わり方でした。

オーディブルの読書と違って、映像視聴はどうしても職場に移動しながら、或いは家事しながら鑑賞というのが難しく。いろいろの合間合間にどうにか二度観たところです。が、幸いにも二日延長してくださったので本当に感謝しております。
ふぁんぶっく9も出ましたが、そちらは少しお預けにして配信期限までにもう一回ずつ観たいな~と思っています。
願わくば、DVD化、凱旋公演、シリーズ継続舞台化などを心から希望する次第です。

■終わりに

この舞台に関わられたキャストの皆様、スタッフの皆様、脚本、音楽、演出家様、すべての皆様に感謝しております!
舞台の大成功おめでとうございます&お疲れ様でした!
皆様の今後のご活躍も楽しみにしております。


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