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おばあちゃんのおひざもと 第20話 「誠に残念です。ご主人様は玉砕されました」
「人生にはびっくりすることが起こるもんだね。おじいちゃんがテニヤン島に行った頃は太平洋戦争の真っ最中でね。特にサイパンって所は激戦中の激戦地で恐ろしいことになっているっていうのは、風の噂でなんとなく伝わってはきてた。もう、全くの音信不通だからね。外国へ行っている上、戦争中なんだから仕方ない。
おじいちゃんがテニヤンへ行ってから3年くらい経ったある夏の終わりに、東京の宗務庁の職員が突然ここを訪ねに来てね。「ごめんくださーい」って。上がってもらってお茶を出すと「奥さん、大変申し上げづらいのですが、方丈様、ご主人様は玉砕されました。確かな情報筋からの報告ですので間違いございません。誠に残念です。」と下を向いて言うの。「つきましては、宗務庁にて葬儀を執り行いますのでお子さんとご一緒にお越し下さい」と言われて。翌週だったかな、東京までお葬式に行って空っぽにの骨箱を渡されて家に帰ってきたの。『住職のいないお寺にはもう住めなくなるのかなあ』と思って不安でねえ。子供二人を連れてどこへ行ったらいいんだろうって。この先、どうやって生きていったらいいのか、さっぱり見通しがつかなくて。いつここを出ていって下さいと言われるのか、そればっかり心配してたよ。
それから1年半くらい経ったお正月明けにね、「ただ今、戻ったぞ」っておじいちゃんが突然帰ってきたの。「ひえ〜、おばけー!!」って、腰抜かしそうになったよ。幸ちゃんのお父さんも、孝江おばちゃんも「このおじさん誰?」ってキョトンと不思議そうにしてた。
戦争のゴタゴタで人の生死の確認さえ間違えちゃったんだねえ。お葬式まで上げた人が、生きて帰ってきたんだから」
*この本は第1話から46話まで、順番に各章の最初の頭文字一音をつなげていくと、あるメッセージ明らかになります。さて、どんなメッセージでしょうか。
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かるた小説 ーおばあちゃんのおひざもとー
大正3年、1914年にアメリカに生を受け、22歳までに3度も船で太平洋を横断し日本とアメリカを行き来したおばあちゃん。ロサンゼルスの大都会…
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