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スティーブ・ジョブズが最後まで尊敬した陶芸家 釋永由紀夫氏との対談 Vol.3 Steve Jobs との出会い

スティーブ•ジョブズとの出会い

天野:初めてスティーブ•ジョブズさんと出会ったのはいつですか?    その時の様子をお聞かせ下さい。

釋永さん:1996年に京都で個展をした時です。ジョブズさん、展示会場にご夫婦で来られました。みなさんとのご挨拶が終わるのをずっと待っていて、その後話しかけられ、最初は同業者の陶芸家かと思いました。どんな釉を使ってるのかとか、専門的な質問だったのはすぐ分かりましたから。

僕は彼の質問にカタコトの単語で答えて、彼はそれを全て理解していて。するともう少し突っ込んでくる。そうなると、話すのは難しいので理解してもらうために紙に絵を描いて説明しました。そんなような三日間でした。

二日目は、タクシーの運転手兼ガイドもしてるような人と一緒でした。大型のタクシー、リムジンって言うので来たんです。ジョブズさんが「今日一日フリーの日なので、短い小旅行をしたい。近くで焼き物をしているところを教えてくれ」って、僕のところに来たんですよ。その話をしてる時に、会場の中を覗き込んでる運転手さんがいて、その彼が通訳をしてたんで、京都近辺のことを彼に教えたんですけどね。それ以外の時は二人ともふらっと来ましたから、歩いてきたのか、車できたのか全然わかりません。

ある時は、朝7時ごろ自宅に電話がかかってきました。

天野:直接電話ですか?電話ってハードル高くないですか?

釋永さん:ハードル高いですよ。会話が成立しないから。だから「読むことは少しできるからFAXで送ってくれないか」って言ったんです。そしたら30分ほどして、FAXが流れてきました。

天野:電話を切った後すぐに書いたってことですね。

釋永さん:おそらく彼の自宅からだったろうと思います。アメリカなのか日本国内なのか全くわかりませんでした。一回は京都からでした。最初に出会った画廊から電話がかかってきて、「今ジョブズさんここに来ていて、が釋永さんの新作があったら欲しいと言っている」との事でした。ギャラリーの人が電話を取り次いで、ジョブズさんとかわりました。なのでその時は「彼今京都にいるんだな」っていうのは分かりましたが。そのあとはFAXでやり取りしてました。

天野:FAXは英文でタイプしてくるんですよね。

釋永さん:そうです。

天野:それを読むの、苦労されませんでしたか?

釋永さん:苦労しましたよ。その時、アメリカ人の友人がすぐ近くにいましたから、その友達にお願いして、「なんて書いてあるの?」って聞いて訳してもらいました。それで、今度こっちから彼に連絡する時はですね、僕の姪の主人にお願いしたりしました。彼、アメリカ勤務になったんです。MBA?

天野:MBAですか?ビジネスの経営学のマスター、修士号ですね。

釋永さん:そう。それを取るためにアメリカに行って、姪も旦那と一緒に行きました。その彼に一度「僕の代理でジョブズさんに電話かけてくれる?」って頼んだことがあります。僕、電話番号はもらってたから。そしたらジョブスさん、すぐに電話口に出てきたんだけど、僕じゃなくて代理だというのがわかった途端に、「僕忙しいから電話切るぞ」ってすぐ切ったそうです。

天野:へえ。釋永さんだったら話すけれども、本人じゃないとわかるとすぐに切っちゃった、と。よっぽど釋永さんが気に入ってらっしゃるというか、特別だったんですね。

釋永さん:僕は会話ができるわけじゃないんですけど、「荷物送りましたよ」とかね。ある程度前もって英文に準備したものを目の前に置きながら話したりしてました。僕は彼の自宅の電話番号をもらっていましたから。誰かに取り次いで出てきてもらう番号ではなくて、自宅の電話番号をくれって彼に言ったんです。そうしたら彼、紙に書いてくれました。

天野:ジョブズさんと実際にお話をされて、どんな印象でしたか?

釋永さん:彼はゆっくり、わかりやすいような単語を選んで話してくれましたよ。あの人はね、真正面から僕を見つめてきました。これくらいのところに彼の顔があるわけ。そういう至近距離で、もうジーッと見てくるんです。僕も視線外せないような感じで。。。僕も相手を見てるしかないというような。それが三日間続きました。僕の記憶としては、彼と一緒に話してるのは疲れたなあ、というのが印象でした。

スティーブ•ジョブズさんとの思い出を語る釋永さん

奥さんも一緒で、二人ともね、静かに展示品を見てるんですよ。器の取り方とか、見方とか、なんの不安気もなく見ていられる人たち。ほっぽっといても、この人たちは落として壊すなんてことはない。そういう心配は全くいらないお二人でした。

私の個展が京都で、ちょうど娘が京都で学生をしてた時期だったもので、娘がたまたま遊びに来てました。その時にジョブズさん夫婦が入って来て。だからそこには娘も一緒にいました。「ああ、この二人だったら大丈夫だねって。目を離して、他の人に注意を払っていても、この人たちはこのまま好きにさせておいても心配ないね」そんな感じで娘と目配せした覚えはあります。

話す声は、ジョブズさん、小さい声でした。僕にしか聞こえないくらいの。まあ、こんなに近い距離にいたから大きな声は出せませんよね。

天野:私なんかはYouTube でステージで講演していたり、大勢の人の前で堂々と話す姿しか見たことがないので、ちょっと想像ができません。

釋永さん:いやいや、全然。静かな感じでした。



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