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スティーブ・ジョブズが最後まで尊敬した陶芸家 釋永由紀夫氏との対談 Vol.4 iPhoneのアイコンは釋永さんの作品がベースに?

iPhone のアイコンは釋永さんの作品がベースに?

釋永さん:あと、アップルの iPhone に僕の作った作品と同じのがあるようなことも聞きました。本当かどうかわかりませんが。でも、メモ?っとかっていう黄色と白で上下に分かれてるアイコン。あれと同じものを作ってくれ、って言ってきたのは事実です。あの当時はまだ、iPhone 自体が世に出ていない時でした。

天野:ああ、Notesっていうアプリのことですか?私もiPhone 使っているのですぐ分かります。これのことですよね。発売されていない、ということはまだ構想段階か、開発段階だったのかもしれませんね。

釋永さん:以前僕のところにジョブズさんの取材に来たディレクターが、「これiPhone って言うんですけどね、これ(このお皿)にそっくりなんですよ。」と言ってきて。その辺りから、昔制作依頼を受けて作ったお皿がiPhone のアイコンの素材になったんじゃないかっていう話が始まったように思うんですけどね。制作依頼を受けた当時はそんなこと何も知りませんが。彼は角を丸くして、半分は釉を塗って、半分は土のまま焼いて。そして境のところは変化を入れた形に作って欲しいとか、随分と具体的な依頼でした。僕はその時に初めてiPhone ってのを見ましたから。それまでは見たことありませんでした。

天野:それはいつのお話ですか?

釋永さん:彼が亡くなった年です。

スティーブ•ジョブズの依頼を受けて作ったお皿(右)と Notes アプリ


このアプリのイメージは釋永さんへの制作依頼から始まっていた?!


スティーブ・ジョブズが最後まで親交を続けた芸術家

天野:私が釋永さんをすごいなって思うのは、スティーブ・ジョブズさんのことを知っている方は世の中たくさんいますけれど、釋永さんをご存知の方は、ジョブスさんほどではない。世界を技術面から大きく変えた人ですが、あの天才、スティーブ・ジョブズを唸らせた、憧れ、尊敬された釋永さんっていうところで、やっぱり彼には慧眼があったんだろうなと、私は思うわけなんですよね。じゃなかったら惹かれないですよ。

釋永さん:僕は、その取材があった後、初めてNHKのディレクターの方と話をした時に、「彼はこれだけ日本美術が好きなんだから、僕以外にも誰か必ずジョブズさんと親しくしている作家がいるはずだから、探したらいいよ」と話をしたんですが、そうしたら、「継続したのはどうやら釋永しかいないよ」と言われました。僕は継続を別に望んでいたわけでもなんでもなくて、注文を頂いたら作る、その繰り返しで、それについて「どうだった?」とも聞きませんし、「次のが出来たけどどう?」という連絡もしたことはないです。注文がこなくなったら、「ああ、もうこれで十分足りたんだろう」、と思うくらいでした。2年3年おきに連絡をもらうようになって。最後に彼に送ったのが僕が51、52の時。さっきお見せしたあの窯で焼いた茶盌ですね。その後、全く連絡がこなくなったので、「ああ、これでもうジョブスさん飽きたんだろう」と思っていたら、病気だったということで。

天野:ジョブスさんが亡くなったのは2011年の10月でしたよね。亡くなったという知らせはどのように受け取ったんですか?

釋永さん:テレビのニューステーションで、コメンテーターをやってた友達がいます。彼は元朝日新聞の出身で、ニューヨーク支局にも行ってたことがある男なんですが、彼が日本に帰って来て大学で授業を持ちながら、コメンテーターもやっていた。その彼が、僕に電話をくれたんです。彼がニューヨーク支局に転勤中に、「ああ、俺アメリカ人一人知ってるよ」って話をして、そこでジョブズさんの事を話してたんですね。それを彼が覚えてて。古舘伊知郎っていう人の番組です。そこで、ジョブズさんが亡くなったことについて、その晩のニュースで何かコメントをしてくれという風になったそうです。それで僕から聞いてた、ジョブズさんの話を「もう一回確認させてよ」と、彼から電話がかかってきたんです。

「今日の夜の放送で、僕の友人に1996年からジョブズさんと親交のあった陶芸家がいます、と君のことを話そうと思うんだ。それで内容に間違いがないか確認させてくれ」ということでした。

その晩ニュースを見ながら、僕の名前を言うのかなと思ってたら名前は出しませんでした。後で彼に「どうして出さなかったの?」と聞いたら、「僕が名前を言ってしまうと、他の番組制作者たちが興味を示さなくなるからね。名前を伏せておけば、マスコミの習性からして、もう少し突っ込もうと、取材対象に他社が競い合いはじめるに違いないと、そう思ってあえて言わずにおいた」との事でした。まあ、マスコミ学を教えてる男ですからね。

天野:戦略的に伏せたんですね。

釋永さん:そう。戦略に伏せたの。そうしたら、確かに放映後、雑誌社が電話で取材にきましたね。アエラ?その取材が終わった後は、日本テレビ、テレビ朝日、滝川クリスタルさんの担当してたところから取材がきましたね。残念ながら、僕テレビ見ないんです。ですから全くニュース番組のことがよくわからなくて。滝川クリスタルさんのことも名前ぐらいは知ってるけど、その時間に起きてもいないし、その番組は見たこともない。

一昨年、ジョブズさんの10回忌に合わせて、焼き物を送ろうとしたんですが、ローレンさんと連絡がつかなくて、最近ようやく連絡先がわかっったんです。花入れと合わせて手紙を書きました。

天野:10回忌に合わせてと、10年を経てもなお故人を偲んで手作りの贈り物をと思われる、そのお気持ちがお優しいというか、尊いですね。奥様のローレンさんもさぞかし喜ばれたでしょう。

花入作品の例





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