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「濃く、苦く、深く~丸福珈琲店小史」

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#喫茶店

「濃く、苦く、深く~丸福珈琲店小史」10

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人とのつながりを大切した創業者の心意気

 5年間で3つの支店を開くと同時に、千日前本店の改装や珈琲の地方発送、百貨店での瓶詰め珈琲や珈琲ゼリーの販売を始めるなど、新たな展開が続いた90年代。この時期の試みが、大阪のみならず、全国に丸福の味を広める契機となった。商品の管理には苦労したそうだが、手作りの濃厚な味わいは好評を博し、遠方から訪れたお客と出会える喜びは大きかったという。
 「先代はもともと

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「濃く、苦く、深く~丸福珈琲店小史」9

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戦後の画期となった新たな支店の開業

 時代は下って、戦後の「丸福珈琲店」の大きな転機となったのは90年代。北浜を皮切りに寝屋川、都島と、初の支店を出店した頃にあたる。折しも、バブル後の不況の時代だったが、「その時に、うちに全体的にちょっとした勢いがあったんではないかと思うんです。なんかそういうノリってあるじゃないですか(笑)」と振り返る、英子氏はあっけらかんとしたものだ。
 それだけを聞くと順風

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「濃く、苦く、深く~丸福珈琲店小史」8

「濃く、苦く、深く~丸福珈琲店小史」8

創業者を支えた夫人の愛すべき人柄

 少年時代の丁稚奉公から戦争を経て、現在へとつながる『丸福珈琲店』の地歩を築いた貞雄氏。その行動の端々に、根っからの商売人、職人気質がうかがわれるが、彼に負けず劣らずの働き者だったのが、なお伊夫人かもしれない。話は少し逸れるが、創業者を支えた夫人についても触れておきたい。
 娘である英子氏によれば、母親を一言で表すなら“純真・無垢”。「今時、どこかにいたらお目に

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