「濃く、苦く、深く~丸福珈琲店小史」7
日本初のエスプレッソコーヒー?
終戦から、日常を取り戻しつつあった丸福珈琲店。街はまだ復興半ばといった、一九四八年(昭和23年)頃、貞雄氏は大きな買物をした。「先代は何でも第一号が好きでしたから」と言う英子氏に聞くと、意外にもエスプレッソマシンだという。知り合いの商社から話を聞いた貞雄氏は、当時にしておよそ100万円を惜しげもなく投じたのだ。珈琲自体が貴重であり、ましてやエスプレッソなど言葉すらまだなかった時代である。”日本で初めてエスプレッソマシンを置いた店”になってい