
「人間ベッド」3
「どうしたの?」
「すいません…トイレに…行きたくなってしまいました…」
おー、そりゃ緊急事態だな。
「どっち?」
「…おしっこです…」
うちの店でも散々酒をのみ、うちに来てからもビールを飲んでた。
そりゃしたくなるわ。
「あとどのぐらい我慢できる?」
「すいません…もう限界です…」
私は2時間寝てたわけだけど、君は一体いつから我慢をしてたんだい。
ギリギリまでベッドのルールを守ってたわけだ。
いじらしいなぁ、ほんと。
私だったら尿意を感じた瞬間に何もいわずに跳ね除けてトイレへ一目散だ。
まぁ、その前にベッドに収まること自体ありえないけどね。
「いいよ、そこでして」
「…え」
「緊急事態じゃないわ、そのままベッドを続けなさい」
信じられない、といった感じだろうか。
ベッドになってから初めて人間らしい凹凸になった。
私は横向きで片肘をつき、彼の変化を見守った。
「いやいや、無理です…トイレ行かせてください!」
「なんで」
「なんでって…あまねさんのベッドが汚れちゃう…」
焦ってるー…
シーツから出ればいいのに…ベッドに埋まったまま私に必死に訴えかける。
あーだめだめ、口角が上がって…ピクピクしちゃう…今私の顔見ないでー…
「だから、持ち主の私がいいって言ってんでしょ、ベッドは動かない喋らない、うるさいわよ」
「ごめんなさい…でも…」
「ベッドになりたいんでしょ?途中で出たら二度と戻れないわよ」
凹凸の動きが止まった。
ふふ…どうする?
今すぐ、人間としてベッドから飛び出して、トイレで排尿するか。
ベッドとして、何があっても私の下で、家具になりつづけるか。
「でも、あまねさん…」
「これは緊急事態なの?」
…
「緊急事態じゃ…ないです…」
私は気づかれないように上を向き、酸素を肺まで吸い込んだ。
あまりの快感から肺が震える。
ゆっくり自分を取り戻すと、顔の位置を戻した。
「はい、じゃあ再開ね」
私は同じ体勢で、人間の匂いを消せない凹凸を観察し続けた。
震えてる。
もう限界なんでしょ。早く諦めなさいよ。
ベッドになることを望んだ時点で人間は諦めきゃ。
ほらほら、ずっと我慢してたおしっこ、情けなく、ここで全部漏らしちゃいなさいよ。
「…あまねさん…」
喋ったぞ。
君はベッドでしょ?
無視無視。
「あまねさん…本当に出ちゃいますっ…」
聞こえません。
「…あまねさん……」
諦めな。
「…あぁ…あまねさん…もう……ごめんなさい…っ」
今にも泣き出しそうな声。
握りつぶされるように謝った瞬間、ベッドにかけたシーツが滲みだした。
一度漏れ出すともう止まらない。
ジュワジュワ、と水源は溢れる。
私は何も言わずそれを眺めていると、無機質だったはずの凹凸は震えながらとうとう泣き出した。
グスッ…グスッ…
撫でてあげたい。
目の前でひどい仕打ちを受けて泣いてるこの子を、抱きしめたい。
今にも手が伸びそうな気持ちを必死に押さえつけ観察していると、水源は底尽きたようで、残されたシーツには直径50センチ程のシミが出来ていた。
私は迷わず凹凸の上に移動し、仰向けで横になった。
彼が人間を捨て、泣きながら漏らした部分はまだ暖かく、まるで私が漏らしたようだった。
このベッドの持ち主は私なのだから、そうなのだろう。
マットレスってどうやって捨てるのよ…
うっかり現実的なことを考え憂鬱になってしまう辺り、私にはこの空間はまだまだ日常なのだ。
私はお尻を泣いてる彼の顔に押し付けた。
といっても、あくまでくつろいでいるだけ。
ベッドに横になっているだけ。
「フスーッ…、フスーッ…、フスーッ…」
苦しい?
興奮してるの?
呼吸が荒いわよ。
おしっこ漏らした出来損ないのベッドの分際で。
いっちょまえに盛ってんじゃないわよ。
私は両腕をつき、上体を少し起こすと、足元の濡れてる突起部分を確認した。
濡れてるシーツの部分を中心に、しっかりと勃起している。
大好きな私の家に初めて来れたのに、ベッドの上で粗相してしまい、成人した男性としては最悪だろう。
だけど、ベッドとなって私を感じられて、粗相さえも受け入れてもらえ、濡れて汚いはずの自分に乗っかってくれるなんて、これ以上無いよね、こんな幸せなこと。
私は伸ばした足で突起部分をなぞった。
両足で、挟み込むように
片足で根元を支え、片足で撫で上げる
足指を開いて、先っぽを可愛がる
「んん…っ…んっ…んっ」
足が冷たい。
こんなベッドじゃ寝れないし、お腹も減ってきた。
「ちょっと、緊急事態よ」
「え、あ、はい!」
人間ベッドは私の一言により急に魔法を解かれた。
「足が寒いのよ、粗大ゴミの出し方調べて、もう要らないわ、こんなマットレス」
「…は、はい」
久しぶりにシーツから出てきた彼は、フワフワの髪の毛がくしゃくしゃになっていた。
「何?マットレスは捨てるわよ」
「…はい」
漏らさなきゃ、またベッドになれたかも…なんて後悔してる?
「湯船溜めてお風呂入るよ、あと何か出前とろう、お腹減ったわ」
「はい」
「…全部終わったら、新しいマットレスと、おむつも買いに行くよ」
「…はい!」
通気性のいいシーツも…まぁそれはいいか。
嬉しそうなこの子を前にしたら、湯船の中では抱きしめて、思う存分甘えさせてあげようとぼんやり思った。
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