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「人間ベッド」1
カウンターの端の席
今日も来てる
私のお気に入り
いつもニコニコ、尻尾があれば全力でブンブンと振り回していそうな、そんな可愛い子。
それなのに今日は、しょぼしょぼにちっちゃくなっちゃって、今にも泣き出しそう。
私の可愛い子、見てられないじゃない。
「大丈夫?今にも泣きそうだわ」
たれた眉毛に、閉じた唇。
色素の薄い肌に、白金のクシャっとした柔らかい髪が似合う。
「あまねさん…すいません、僕あまねさんを見ていられるだけでよかったのに…他のお客さんと凄く楽しそうで…でも僕だってもっとかまって欲しい…二人でも話したい…そんな風に思ってしまって…」
なるほど、原因は私か。
君には悪いけど、光栄だな。
「そう、構ってあげるわよ、君が手を伸ばせば」
「本当ですか!」
「えぇ、もちろん。だから、こんな変態ばっかの店内でそんな可愛い泣き顔しちゃだめよ」
嬉しそうな顔しちゃって…。
それ以降、可愛い子はいつも通り、私を見つめながらニコニコしてお酒を飲んでいた。
店を閉めてから、近くの24時間やってるカフェで待ち合わせた。
彼は私を見つけると、嬉しさを隠しきれない様子で、小さく手を振った。
私の自宅は店から徒歩10分の距離にある。
繁華街に住むのは嫌だったけど、どうせ毎日通う職場なんだからと決めて、結果大正解だった。
おかげで寝坊しても何とかなる。
そもそもオープンと同時に来るのなんて、決まった常連だけだ。
カギを渡して、先に営業していてほしいぐらいだ。
そんな怠けたうちの店に突如現れた、小動物系のイマドキな青年。
金髪なのに派手とは少し違う、柔らかい、不思議な雰囲気をもった男の子だった。
「あまねさんに会うために通わせてください」
そう宣言してから、本当に毎日のように来ている。
常連も私も、最初は浮いた存在の男の子が異様で面白がっていたが、彼は常に真面目で、周りも段々と存在に慣れていった。
こんないかがわしい店に、場違いだよなぁ…なんて少し心配しつつも、可愛い見た目と、珍しい純情に、私は惹かれた。
「うちお酒しかないよ、コンビニ寄ってく?」
「僕はお酒があれば十分です、あまねさんと二人でお話できるなんて…夢みたいです」
うーん…、そうか。
そんな可愛いこと言われるとなぁ…。
それでもコンビニにより、軽くつまみになるものと、水を買った。
「君はさ、マゾだよね、絶対」
もう少しで家に着く、念のため、確認してみた。
「…はい、マゾだと思います」
そっかそっか、了解。
私は自分の中で解決させ、自宅のカギを開けた。
「ここがあまねさんのお家…なんだかいい匂いがします…なんだろう香水?お香?」
「なんだろうね、自分でもどれが香ってんのかよくわかんないや」
荷物を置き、ジャケットを脱ぐと、そのままバスルームへ向かった。
「シャワー浴びてくるから、勝手に飲んだりしててー」
脱衣所で、汚い街の空気が染み込んだ、汚い服を脱ぎながらふと思う。
“あの子も同じ場所にいたんじゃん…シャワーいれるか…”
そうと決まれば…
「やっぱりおいでーシャワー入るよー」
そう告げると、私は先にバスルームに入った。
熱いシャワーを出すと、湯気で周りが見えなくなる。
とびきり熱くして、一日の汚れを落とした気になるのは、私だけではないはず…
そんなことを考えながら、全身に熱いシャワーを浴びていると、ドアが開く音がした。
振り返ると、ちんこを手で隠した色素の薄い小動物が恥ずかしそうに入ってくる。
私は腰に手を当てたまま、思わず吹き出してしまった。
君は男だろう、そして私は女だ、いちお。
そんな可愛い登場あるかい、ずるいぞ。
「だって恥ずかしいじゃないですか…あまねさんと一緒にお風呂なんて…!」
モジモジしている男の子の全身に泡立てたソープを乗せ、私の手で丁寧に滑らせていく。
二人、頭の先からビチョビチョで、温かくて、肌が密着するのが、気持ちよかった。
後ろから密着し、ヌルヌルの身体で乳首をいじった。
彼は無口になり、バスルームにはシャワーの音だけが響いていた。
腹筋の線をなぞり、股間に手を伸ばすと、既に立派に主張していたソレを、そのまま手で可愛がってあげた。
見た目のフワフワ系からは想像できない、男らしく堪える声は、バスルームに響き、私を刺激した。
「さ、飲み直そうか」
可愛い彼の股間は主張させたまま、一日の汚れをさっぱりと洗い落としたわたしはバスルームを後にした。
髪を乾かさないまま、冷蔵庫を開け缶ビールを開けた。
さっきコンビニで買った野菜の漬物をかじって、ビールを一口流し込むと、すぐ手に入るチープな幸せに、私の色んな部分がゆるんでくる。
後に続きバスルームから出てきた彼は、白金の髪が濡れたまま束になっていて、私はそのセクシーさを目で味わいながら、ビールと一緒に飲み込んだ。
「ビールでいい?」
彼にも缶ビールを手渡し、一緒にソファーへ座った。
「で、私に構って欲しかったんだっけ? どう? 客で家に入ったのは君が初めてだけど」
「え、そうなんですか…それは嬉しすぎます…」
「昔飼ってた犬ぐらいだね、この部屋に入ったのは」
「犬飼ってたんですね」
「犬って言っても、人間のね、人間の犬」
彼の表情が一気にゆるんだ。
“人間の犬”
この言葉でスイッチが入ったようだ。
「実はね、その当時の犬に特別なマットレスプレゼントされてさ、人が中に入れるのよ。でも結局それ使わないでお別れしちゃったんだけど…」
「マットレス…ですか?」
「そう、ベッドの、あの分厚いやつ」
そういうと、缶ビールをもったまま、ベッドまで移動しめくって見せた。
そのマットレスは真ん中に人が入れる程の凹みがあり、私は普段そこに使わないバスタオルを詰めて、普通のマットレスとして使っていたのだった。
「すごいです…僕、マットレスになりたいです…」
完全にマゾの顔だ。
一点を見つめ、唇が薄く開いている。
「いやよ、君みたいな可愛い子は、こんな中に入れるより部屋の隅に縛り付けておくほうがいいわ」
そういうと、残りのビールを流し込んだ。
二本目のビールを取りに冷蔵庫まで向かいながら、もう一度考えてしまう。
“ん…いや、この可愛い子を一晩マットレスに入れたら…それはそれでいいんじゃないか”
ビールを取り冷蔵庫を閉めると、彼の方を見つめた。
「気が変わったわ…一晩、私のベッドになってみる?」
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