「マゾ堕ち」2
「ねぇ、広瀬…これ、どう?」
顔をあげると、手錠を持ったあまねさんが立っていた。
「どうって…手錠ですね」
「つまんないやつだなぁお前は、いいからちょっと手を出してみなさい、ほれ」
あまねさんに逆らうと後が面倒くさい。
言われるがまま、両手を差し出す。
あまねさんが手錠を開き、俺の手首に金属が触れた。
手錠。シルバー。金属。冷たい。固い。重い。
…カチャ。
俺の手首に、手錠がついた。
…重い。さすが、SMバーに置いてある手錠だ。
そこらへんのちゃっちい玩具とはわけが違う。
「どう?広瀬」
「いや、まぁ…初めてです。手錠ってこんな感じなんすね、もう外してもらっていいっすか」
あまねさんがニヤニヤと不敵な笑みを浮かべている。
嫌な予感しかしない。
「まぁいいじゃない、しばらくそれでいなよ」
「いやいや、不便ですよ、タバコ吸うのも酒飲むのも」
「大丈夫よ~手伝ってあげるから!」
あまねさんは一度言ったら聞かない。
仕方ない…付き合うか。
それにしても、なんだよこれ…両手で移動しないと酒も飲めねーじゃん。
くっそ…うぜぇ。
「広瀬ーちょっとこっち向いてみ」
横の席で立っているあまねさんを見上げた。
怪しげな色のライトに照らされたあまねさん。
口元だけが目に飛び込んできた。
あまねさんは笑っている。
いや、微笑んでいる。
あまねさんの八重歯が見える。
あれ、なんか、首に、あまねさん、なにして…
「ほら、できたよ…広瀬」
できたってなにが。
ん、首に、これって、首輪?
あまねさん、俺に首輪つけたんですか?
「あ、あまねさん…これ、首輪すか?」
なんだ俺、言葉が詰まる。
あまねさんこれ首輪すか。
言える。なんだよ。
首が気になる。
首輪の存在と、目の前に立ってるあまねさんの表情が気になって仕方ない。
「そうよー…広瀬に似合いそうな黒くて太いやつ、私が選んであげたのよ」
黒くて、太い、首輪。
あまねさん、何かちょっと雰囲気さっきと違う?
なんでそんなニヤニヤしてんすか。
というか俺なんでこんなドキドキしてる?
どこ見ればいいかわかんねぇし、なんだよこれ。
「いや…ちょっと、これ取ってもらえますか」
「だめよ…広瀬、取材よ。しばらくつけときなさい」
ただの首輪だろ。
なんでこんなに焦ってんだ俺。
大丈夫、いつも通り。
「…わかりました」
「うん!いいね、広瀬」
ニコニコとしたあまねさんに戻り、俺は一瞬ホっとした。
週末のSMバー、客もそこそこに入っている。
カウンター席は俺らだけだが、後ろのボックス席は半分埋まってる。
ママは接客のためカウンターを離れ、俺とあまねさん二人きりになった。
「広瀬飲んでる?」
「まぁ、はい」
ふーん、そう言い、不意にあまねさんは俺のビールを手に持った。
「広瀬ぇ…ほら、あーん…飲ませてあげるよ」
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