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#53. 思考を凝らして至高の領域へ

こんばんは🌙

まだまだ残暑というには程遠い暑さが日中は続いている。
朝や夜は幾分か涼しくなって、本格的な夏の終わりを体感している。
体感的に春秋は短いので、いつの間にかもっと人肌が恋しい冬がやってくるのかと思うと待ち遠しいようで寂しい気もする。
新しい洋服は買ったからそれを着るのを楽しみにしておこう。

先日休日に食べたフレンチが美味しかったので今日はその話でもしようかと思う。
私は圧倒的に洋食派でイタリアンよりフレンチが好きである。
ディナーはピンからキリまでするお店もあるのでなかなか手は出しづらいがランチなら行きやすいお店もあるからそれはそれでありがたい。
ウォークインで入れるレストランなら尚更。

今回選んだお店は地産地消ならぬ地産地食でここにしかない、ここならではの料理をコンセプトに掲げたビストロだった。
4品コースでメインと食後のドリンクを選んで注文する。

私はコースなどを食べる時は基本的に水か炭酸水しか飲まない。
理由は簡単、料理の味を心置きなく楽しみたいからだ。
後はお酒が飲めないからだ(小声)

個人的にコース料理で出てくるポタージュ系がとても好きで1番好きなのはかぼちゃである。
この時期はかぼちゃのポタージュが飲めたりするので割と好きな季節でもある。

本日のスープ

スープはなすびのポタージュが出てきた。
丁寧に裏漉しされていたので奥深く、かつ実はトロトロで普段お味噌汁や焼き野菜等で食べるものとはレベルがひと味もふた味も違った。
1品目でここまでワクワクさせてくれるのもコース料理ならではの魅力。
量が少ないのも絶妙でこれからへの期待を増幅させてくれる。

前菜

前菜は郷土料理から着想を得て、おからとカツオタタキをきゅうりとズッキーニのグリーンソースで仕上げたサラダ仕立てだった。
私は大のトマト嫌いでケチャップやマルゲリータを除いてトマトを使ったものは極力避けてきた。
嫌いなものは先に食べる、そんな前菜に乗ったトマトを口に入れた瞬間思わず「うまっ」と声が出てしまった。
私は本当にトマトを食べたんだろうかと錯覚するほどに。
グリーンソースがあまりにも美味しすぎた、これはトマトすらも美味に昇華させていた。

メイン

メインは豚肉を自家製のマスタードソースで。
マスタードはやはりあの粒々が堪らない。
お店で見るベーコンのブロックほどの分厚さの塊はナイフを入れると優しく崩れ、口の中でほろりと溶ける食感に仕上がっていた。
付け合わせの野菜とマスタードの相性も申し分ない。

ちなみにメインはジビエも選ぶことができた。
その日は鹿肉のローストだった。
店員さんがとても親切で一切れ味見をさせてくれた。
ビネガーソースがうまくジビエ特有の臭みを消して酸味から鹿肉のあっさりでも確かな食べ応えを自分のものにしていた。
ジビエは人によって好き嫌いが分かれるが私はパテドカンパーニュを始めとして好きなのでジビエにすればよかったとほんの少し後悔した。

デザート

デザートはかぼすのゼリーに煮込んだ赤ワインをアクセントに、ベリーやカシスのソルベをアングレーズソースで贅沢に。
かぼすの酸味をマイルドにするソースや赤ワインの存在が混沌とも言える皿の中をひと皿に仕上げていた。
気付いたら皿は空いていた。

料理の美味しさは去ることながら、この料理人の感性や発想に惹かれた部分が多い。
料理人はまた芸術の世界で日々の様々なインスピレーションを経て自分の作品へと落とし込む。
ひと皿に込められた創意工夫をただ美味しいで片付けるのは名残惜しくて、料理の度に質問したり感想を伝えたりしていた。

もっと早くこの魅力に気付いていれば私は料理の道を目指していたかもしれない。
その前にスイーツがあるのでパティシエかショコラティエでも良かったかもしれない。
彼に私の歓声を届けて、慣性の法則ようにまた食べに来たいと思う。
閑静な城下町にあるそんなお店で私は最後の晩餐を食べて人生を完成させたい、そう思えた休日の午後であった。

良い夜を🌙