人生デザイン講座(6)プロトタイプを作る
プロトタイプ=人生を成功へと導く魔法の道具。
【行き詰まり思考】 → 自分の立てた人生プランのあらゆる側面について、徹底的にデータを調べれば、答えが見つかる。
【人生デザイン思考】→実際にプロトタイプを作って、自分の人生プランに関する疑問の答えを探ってみるべきた。
●プロトタイプを作る目的。
・的確な疑問を掲げる。
・実体験する。
・自分自身の思い込みを暴く。
・早めに失敗し、失敗を前進の糧にする。
・未来にそっと近づいてみる。
・自分自身や他者への共感を築く。
これが前に進むのに必要なデータを手に入れる唯一の方法だと認めれば、プロトタイピングはあなたのライフデザインプロセスに欠かせない一部となる。プロトタイプを作るのは良い考えだ。でもそれと同じくらい、プロトタイプを作らないのは悪い考えでもある。そして、ときには大きな代償を伴うこともあるのだ。
●開業に失敗した女性から学べること
エリスはプロトタイプなんて作る必要もなかった。行く気満々だったからだ。
長年、数々の企業の人事部で働いてきたエリスは、人生を大きく変える覚悟ができていた。大きく。それも今すぐに。
食通の彼女はイタリア料理が大好きで、トスカーナの小さなカフェやデリ(惣菜)での体験が忘れられなかった。
彼女はもともと、おいしいコーヒーと本場のトスカーナ料理を提供するカフェ併設のデリを経営するのが夢だった。
そこで、彼女はその夢を追うと決心。
開店資金もたまったし、必要なレシピも揃っているし、自宅近くに最高の店舗スペースも見つかった。彼女は早速行動した。
お店を借り、完璧に改装し、最高の商品を取り揃えて、鳴り物入りで開店。必死で働いた結果、店は大繁盛した。
店はみんなに愛され、彼女は今まで以上に忙しくなった。そして、すぐに憂鬱になった。
彼女は全くプロトタイプを作っていなかった。未来にそっと近づいたりもしなかった。1、2の3で飛行機から飛び降りたのだ。
朝から晩までカフェで働くのはどういう感じなのか、試したりはしなかった。
彼女はカフェの形がカフェの利用やカフェについての計画と同じだと思い込んでいることに気づかなかった。
彼女はカフェのデザイナーや階層プランナーとしては優秀でも、デリの経営者としては不向きであることを、苦労の末に思い知った。
ひたすらスタッフを取ったり、在庫管理したり、新しい在庫発注したりする毎日。ちっとも楽しくない。メンテナンスなんて問題外。彼女は繁盛店を抱えたまま行き詰まり、どうしていいのか分からなくなった。
結局、彼女は店を売却し、レストランのインテリアデザイナーの道に進んだが、そこに行き着くまではいばらの道だった。
彼女がプロトタイプを作るとしたら、どんな方法があっただろう?例えば、
・まずは出前サービスを試してみる(開店や閉店が楽。家賃は不要、スタッフも少人数。立地や営業時間も流動的)。
・イタリアンデリのウェイトレスをし、楽しいメニューの開発だけでなく、仕事の嫌な面もじっくり観察してみる。
・満足しているデリのオーナーと不満を抱えるオーナー3人に話を聞き、自分がどちら側に近いかを確かめてみる。
●なぜ、聞く力のある人は成功するのか?
では、具体的にどうすれば良いだろうか?
いちばんシンプルで簡単なプロトタイプの形は、ズバリ、会話だ。
ここでは、私たちが「ライフデザインインタビュー」と呼んでいる特殊な会話のプロトタイプを紹介したいと思う。
ライフデザインインタビューは驚くほどシンプルだ。誰かの話を聞くだけ。もちろん、誰にどんな話を聞いてもいいと言うわけではない。あなたが検討している仕事や生活を実際にしている人々や、あなたが疑問を持っている分野の本格的な経験や専門知識のある人々に話を聞くのだ。例えば、
どういう形でその仕事をすることになったのか?
どうやってその専門知識を手に入れたのか?
実際の所どういう仕事なのか?
その仕事の好きな店と嫌いな点は?
1日はどういう感じで進むのか?
話を聞いてみて、あなた自身がその仕事を何ヶ月、何年と楽しく続ける様子をイメージできるだろうか?自問してみよう。
相手の仕事や人生について尋ねるだけでなく、現在の仕事や人生に至った経緯。つまり今までの道のり。を訪ねることもできるだろう。大抵の人は、能力不足ではなく想像力不足のせいで失敗してしまう。誰かの前に座り、話を聞くだけで、そういう貴重な情報がたくさん得られるのだから、利用しない手は無い。これが「ライフデザインインタビュー」だ。
最大の注意点は、「就職面接」ではないと言うこと。ライフデザインインタビューの最中に、相手の話を聞く代わりに、いつの間にかあなたばかりが質問に答えたり、自分の話をしていることに気づいたら、言った話を止めて、会話の流れを変えよう。これは重要だ。相手があなたとの会話を面接と勘違いすれば、何もかも台無しになる。ライフデザインインタビューは失敗したも同然。すべてはマインドセットの問題なのだ。
ポイントは、あなたが興味を持っている仕事を現在している人々、あなたが話を聞いてみたい人々を見つけ出すこと。それは思うよりも簡単だ。例えば、アンナがとても興味深い仕事をしている優秀な人間だと知ったとする。それだけであなたとアンナには共通点がある。「アンナ」と「アンナの仕事」と言う共通の関心や話題があるわけだ!
会いたいと申し入れるときは、こんなふうに切り出してみよう。
「アンナさん、はじめまして。連絡が取れてうれしく思います。実は、ジョンさんからぜひアンナさんと話してみたらと勧められて、ご連絡しました。アンナさんの仕事については前々から伺っていて、とても感銘を受けています。もしよければ30分ほどお話を聞けないでしょうか?時間と場所はアンナさんのご都合に合わせます。コーヒーをご馳走したいと思いますので、仕事の経験談を聞かせてもらえないでしょうか?」
ちなみに、この場合のジョンのように、できれば相手の信頼できる友人や同僚の名前を出すと良いだろう。誰かの「紹介」があれば、会う相手を見つけやすくなるし、お茶の誘いに応じてくれる確率もアップする。紹介がなくてもお茶の誘いに乗ってくれる人はたくさんいるだろうが、紹介がある方がずっとスムーズだ。紹介を得るために人脈作りについては第8章で説明する。もちろん効果的なライフデザインには人脈作りが欠かせない。詳しくは後で。
●成功に近づけるプロトタイプ体験
ライフデザインインタビューはいいことずくめだ。驚くほどためになるし、手軽に実践できる。しかし、ライフデザインの情報源としては、人々の話だけでは物足りない。実体験が必要だ。他人の仕事の様子を観察したり、できれば自分でその一部を体験したりしてみよう。「プロトタイプ体験」を実践すれば、自分自身の未来の1つに直接触れ、情報学びをとることができる。例えば、
・あなたがなりたいと思っているプロフェッショナルに1日同行させてもらう
・1週間、無償で働かせてもらう
・3カ月間のインターンシップに参加する(当然、この場合、より本格的な投資と努力が必要)
などが考えられる。ライフデザインインタビューを通じてたくさん会話を交わしたとすれば、当然その途中で観察や同行をしてみたい相手が見つかっただろう。とすれば、プロトタイプ体験をするのは簡単だ。お願いするだけ。そして、人間は人助けが大好きだ。私たちが指導する人々の大半は、ライフデザインインタビューが思いのほかうまくいくことに驚く。彼ら彼女らが会う人々は、インタビューを心から楽しんでくれているようだ。
その点、仕事に同行させてほしいと頼むのは、30分だけお茶に誘うよりもだいぶハードルが高い。でも、何十回とインタビューを重ねてきて、もう少し大きなお願いをしてみる心の準備はできていることだろう。ぜひ試してほしい。何回か断られるだろうが、色々と学べるはずだ。
何回か断られるだろうが、色々と学べるはずだ。
何かについて話を聞いたり観察したりするのではなく、実際に実践してみるプロトタイプ体験は、さらに難関だ。それでも、実際に、手を真っ黒にし、その仕事が自分に合うかどうかを確かめてみるのは、その労力に見合う価値がある。試乗しないで自転車を買ったりはしないでしょう?ところが、転職や人生の変化の事となると、私たちはいつも試乗もしないで決めてしまう。考えてみれば馬鹿らしい。エリスが店舗物件を購入してデリをオープンする前にウェイトレスのバイトをしてみる。あなたに必要なのはそのアイディアだ。こういうプロトタイプ体験を考える事こそが本当の「デザイン」作業であり、たくさんのアイデアが必要になってくる。
をしてみるなど。あなたに必要なのはそのアイディアだ。こーゆープロトタイプ体験を考えることこそが本当の「デザイン」作業であり、たくさんのアイデアが必要になってくる。
そこで紹介するのが「デザインブレインストーミング」。たくさんのアイデアを見つけ出すための共同作業のテクニックだ。さっそく説明しよう。
●ブレインストーミング。プロトタイプ体験のアイデアを出す。
前の上でたてたプラン冒険プランを見直して欲しい。きっとあなたが追求してみたい未来のあなたの姿が見え、答えの必要な疑問が見つかったことだろう。
長年大企業に勤めた後、小さな会社で働くと言うのはどんな感じなのか?
フルタイムで有機農場を管理するのは、ボランティアで夏だけ有機農場で働くのとはどう違うのか?
実際のところ営業マンは1日中何をしているのか?
一貫性があり、ワクワクし、ある程度できるという自信がある冒険プランをじっくりと見直し、疑問点を洗い出してみよう。体験を通じてもっと深く理解したい内容は?
そこで行うのがブレインストーミングだ。
ほとんどの人はブレインストーミングの経験をお持ちだろう。ブレインストーミングほど乱用されている言葉も少ない。この言葉は、想像力をフルに発揮する体系的な研修から、会議室に座ってアイデアを出し合うだけの作業まで、何でも指すようになった。
独創的で常識破りのアイデアを次々と生み出す「ブレインストーミング」は、アレックスオズボーンが1953年の著書「独創力を伸ばせ」で提唱したものだ。彼は2つのルールに基づいてアイデアを生み出す手法を提唱した。
アイディアの質より量を重視する
善し悪しの判断を先送りし、参加者がアイデアを飲み込まないようにする
提唱されて以来、ブローブレインストーミングはアイデアやイノベーションを生み出す方法として人気を集め、オズボーンの2つのルールを保ちながらも、色々と形を変えてきた。
1番一般的なのが集団でのブレインストーミングだ。通常は4から6人が集まり、ブレインストーミングのテーマとなる疑問や問題を選び、20分から1時間をかけて、その問題の解決アイデアをなるべくたくさん出していく。目的は、プロトタイプとして実世界で試すことができるアイデアを出すことだ。
目的は、プロトタイプ化して実世界で試すことのできるアイデアを出すことだ。
ブレインストーミングでは、ある程度この手法の訓練を積んでいる協力的な人々が必要だ。適切な参加者を見つけるのはそう簡単ではないが、一旦見つかれば、プロトタイプ化したいアイデアがたくさん見出せるだろう。一流の即興ジャズミュージシャン同じように、ブレインストーミングの名手は1つのテーマを守りながらも、独創力を解き放ち、目の前の瞬間に没頭して、即興で独創的なアイデアを練る術を知っている。そのためには練習と集中力が必要だが、一旦マスターすれば、二度とアイディアに困る事はなくなるだろう。ブレインストーミングはアイデアを量産するための非常に体系的なアプローチであり、4つのステップからなる。あなたが進行役を務める場合、普通はテーマを決めていることだろう。最適なのは3から6人の協力的なチーム。人数が集まったら以下の手順で進行しよう。
①的確な疑問を掲げる
疑問を自由回答形式にする
疑問にうっかり答えを含めない
疑問自体が無意味になってしまうほど漠然とした疑問をかけない
②ウォームアップ
③ブレインストーミング開始
静かで快適な部屋を準備する
参加者全員にテント付箋紙または紙を配る
的確な疑問を掲げる手助けをする
ウォームアップを実施する
全員の発言を記録する
ルールを管理する
ブレインストーミングの4つのルール
1質より量を重視する
2善し悪しの判断を先送りし、アイデアを踏み込まないようにする
3他の人々のアイデアを発展させる
4大胆なアイデアを歓迎する
④結果に名前をつけ解釈する
1番興奮したアイディア
お金を気にしなければやってみたいと思うアイデア
大穴のアイデア(多分成功しないけど、成功したら万々歳)
理想的な人生に1番近そうなアイデア
物理法則を無視すればアリのアイディア
●やってみよう
①あなたが描いた3通りの冒険プランとそれぞれに関する疑問点を見直す
②その疑問の解決に役立ちそうなライフデザインインタビューのリストを作る
③その疑問の解決に役立ちそうなプロトタイプ体験のリストを作る
④行き詰まったら、協力してくれる人々を集めてブロンストーミングを行い、様々な可能性を探る(チームがないなら、マインドマッピングを頼む試そう。
⑤ライフデザインインタビューや実体験の機会を積極的に探し、プロトタイプを作る。