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BASARA EXPLOSION 2019

2019年、9月13日。
お台場のZepp DiverCity東京で、歌手の福山芳樹さんのライブがあった。

アニメ「マクロス7」で熱気バサラの歌パートを担当してらした福山さん。
その人が、「熱気バサラ」としてライブをするらしい。

発表されて告知を観た時、どうしても行きたいと思った。
お台場……少し遠いけど、身体的に無理すれば行けない距離ではない。

ライブに参加するのは初めてのことだった。
申し込み可能になる瞬間を見計らって抽選の申込みをした。

結果は落選だった。
とてもガッカリして、落胆の気持ちをTwitterに書いた。
そうしたら、見知らぬ方からDMが来た。
一枚余分に当選したので、一緒に行きませんか? とのことだった。



私は、マクロス7というアニメがとても好きだ。
この作品は現在も続くマクロスシリーズの、初代の続編として制作された。
初代に登場したマクシミリアンやミリア、エキセドル等も登場する。
マクシミリアンとミリアが結婚しているも最初から不仲で始まる。
その仲が戻っていく過程も好きだ。

でも何よりも好きなのは、主人公の熱気バサラだ。
彼は、ロボットアニメの主人公としてはかなり異例の存在だ。
何より、敵を攻撃しない。
ファイヤーバルキリーに乗って戦場に飛び出し、歌を歌い続ける。

バサラは、敵を攻撃できないのではない。
「攻撃しない」、そういう人だ。
彼が殺意を持って戦場に出たら、一騎当千の活躍をするのは間違いない。
実際、いろいろある劇中でも数度ミサイルを発射してしまうこともあった。
つまり、精神力で全てを押さえつけて、歌う。
戦場の真ん中でだ。

最初は誰も彼のことを理解しない。
身内のバンドメンバーでさえもよく分かっていない。
それでも、正体不明の敵に接敵するたびに出ていって歌う。
「歌う」、熱気バサラはそれしか「しない」主人公だ。

私は、その姿に激しく惹かれる。

人生って、何かを捨てて歩いていくものだ。
理念、夢、理想、それらを一つ一つ千切って捨てていく。

生きるということは、何かを諦めて妥協するものだ。
沢山のものを見ないようにして、信念を曲げていくことだ。

そんなのはよく分かっている。
分かっているけど、だからこそバサラの姿が輝いて見えた。
何もかもをも振り払って、一つの信念を曲げない。
そんな「不可能」を超越した存在。

バサラは、絶対に折れない。
何があろうとも歌う。
それが彼の戦いであり、物語終盤では沢山の声援が彼を包む。

私の中でも、彼は輝く「光」だった。



そんな憧れの存在の歌を聴ける。
生でだ。
行けることになって、私はとても嬉しかった。

私は杖をついている。
体調の関係で、へとへとになりながらお台場に着いた。
連絡していた方と合流して、一緒にライブ会場に入った。

杖は折りたたんでロッカーに入れてきた。
スタンディング席だったので2時間半程立ちっぱなし。
すぐに足がガチガチに固まって、歩くのが大変だった。

しかし、ライブが始まると体調不良がその時だけ吹き飛んだ気がした。
声援の中で福山さんが登場。
アニメ映像に、バサラの声。
後で分かったことだが、声バサラの声優、神奈延年さんの生アテレコ。

25年も宇宙を放浪していたバサラ……。
地球で歌エネルギーを発揮するために降りてきてくれる。
そんなナレーションが入った。

福山さんのMC。
劇中に登場した歌の順に披露してくれるらしい。

最初はSEVENTH MOON、OPだ。
そしてバサラが登場する時にメンバーが流すINTRODUCTION。

PLANET DANCE や REMENBER16 等々……。
次々にあの声で、大音量のサウンドが体を打つ。
本物のアニマスピリチア、歌エネルギーだ。

大好きな曲、「My Soul for You」も。
歌には難の迷いもなく、狂いもなく。
完璧だった。
福山さんの姿は、紛れもなく熱気バサラだった。



特別ゲストは、劇場版に登場したミレーヌの姉、エミリア。
歌パートを担当した奥土居美可さんが出演。

Flash in the dark は、ライブ初披露だったそう。
Heart and soul は素晴らしい迫力だった。

もう一人のゲストは、声バサラの神奈延年さん。
感慨深く福山さんとトークをしてらした。
ここで、マクロス7当時のバサラの年齢が21歳だと知る。
意外と若かった。



最後にダイナマイト7のラスト。
銀河クジラの前でバサラが歌った「Angel Voice」

スクリーンに映し出された銀河クジラの前で、福山さんが手を広げた。
沢山のスポットライトが福山さんを包んだ。

光り輝いていた。
それは、作品を観ながら思い描いていたバサラ。
私の中の届かない「光」そのものの姿だった。

手を伸ばしても決して届かない。
でも、確かにその存在が目の前にいる。

会場全体で、一緒に歌を歌った。
輝く福山さんが、私を一瞬だけ見た気がした。

「光と、同じ場所にいる」

私はその時そう思った。
バサラとは似ても似つかない私で。
決して彼には届かない自分自身で。
でも、諦めきれないどうしようもない自分。

それでも、光と一緒に歌うことができた。
私は、まだ生きていていいんだ、と「彼」に赦された気がした。

何の感情かは分からないけれど。
歌いながら涙が出た。



とても素敵な時間だった。
バサラは、また宇宙を放浪するらしい。
多分、彼ならそうするんだろう。

光り輝くステージには、手を伸ばしても届くことはない。
決して。

でも、銀河クジラの前で「彼」と一緒に歌った時間。
それを私は、忘れたくないと思った。



全ての関係者の皆様に感謝を。
素晴らしい企画でした。

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天寧霧佳
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