営業マンが用意した「とっておきのサービス」を契約しなかったけど、彼を応援した話

わたしは「営業電話を、一応ひと通り聞く女」

以前、面白い営業電話がかかってきた。わたしに電話をかけてきた営業マンはいたって真面目なのだが、つい吹き出してしまったことがあるのだ。

その営業マンは、初々しくかつ、丁寧な話し方で好感が持てた。だけれど、サービス契約に至らなかった経緯があるのだ。車を所有していないわたしに、車保険の見直し提案。こればかりはどうしようもなかった…。

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そもそもなぜわたしが、電話営業に耳を傾けるようになったのか。それは、過去に一年ほどコールセンターで営業電話をかけていたから。ゴリゴリの営業トークを、顧客リスト順にひたすら架電していく。

ガチャ切り、クレーム、身の上話…。当時は、まず商品説明にこぎつけるだけでも大変だった。そう簡単には、商品を購入してもらえない。
わたし自身が苦労を体験しているだけに、電話営業にはやさしく接したいなと思うようになっていた。

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とはいえ、明らかに興味のない営業内容は手短に切り上げるようにしている。下手に相づちをうって、営業マンに(契約いけるかも!と)期待させてはいけないからだ。

ここで紹介する営業マンは、契約を取ろうという懸命さが声ににじみ出ていて、応援したくなった。よく利用しているクレジットカード会社からの営業ということもあり、わたしは真剣に話を聞いた。

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彼は一生懸命サービスの良さを説明してくれるのだが、わたしは「じゃあそれ、お願いします」とは言えなかった。単純に、必要ないなと思っての結論だ。その旨を営業マンに伝えると、まだ何か言いたそうである。

食い下がってくるのか?と、緊張が走ったそのとき、意外な提案がなされた。

「実は雨音さまに、もう一つとっておきのサービスをご用意しているんです!!」


とても自信ありげに言うので、どれ聞いてみるかと耳を傾けたわたしは、すぐに笑ってあわてて謝った。

営業マン「雨音様は、今お車保険に入っていらっしゃいますよね?」

雨音「車、持ってないんです〜笑」

営業マン「あっ…!!そうなんですね(汗)!!失礼いたしました!!!」


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気丈に振る舞ってはいるが、営業マンが動揺したのが伝わってきた。そりゃそうだ。満を持しての提案が、膝かっくんされたくらい一瞬で話の腰を折られてしまったのだから。

わたしは明るく笑いながら、車を所有しておらずご期待に添えないことを謝った。ここでわたしは謝らなくてもいいかもしれない。だけれど営業マンに契約させたかった気持ちがあったからこその、謝罪だった。

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普段は、早々に電話を切ってしまうのだが、この営業マンは心から応援したくなるたどたどしさだった。マニュアルを読んでるんだろうな感が強かったし、契約とりたくて食い気味なところも微笑ましい。

青森県民なら、車持ってるだろうみたいな確信があったのかな。


(ごめんね、営業マン。わたしが車持ってなくて。)


通話中、自分がコールセンターで働いているころを思い出した。大変だろうけれど、頑張ってくださいねと営業マンに伝えた。上から目線だなと、変な顧客リストに入れられたかもしれないけれど、わたしはそれでいい。

営業マンは、いまも車保険の見直しを提案しているだろうか?

彼が元気でいてくれたら、それでいいや。



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雨音さん|ひきだし屋さん
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