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小説 『窓』 no,38

久保製作所 株式会社
代表取締役 久保克也
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( 名刺交換をして  妹尾錠治の手元には 久保社長の名刺が一枚…)

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佐倉井 勲 が 久保社長が社長に成る以前からの知り合いだった事もあり…
すんなりと 1階の事務所の受付を経て、2階にある社長専用の事務所の様な部屋の一角にある、古くさい応接間セットの長椅子に 佐倉井と一緒に 妹尾錠治は 座っている。
その2階の部屋の壁には、たくさんの会社から頂いたと思われる「感謝状」が 全くアート性を感じさせない間隔で、額縁に入れ 吊し並べられていた…

そして…

その額縁の中の殆(ほとん)どの「感謝状」は、黄色く日焼けしていて…
今、腰掛けている(応接間セットの)椅子と同様に この会社の歴史を感じさせていると思った、妹尾錠治が 佐倉井 勲 に…

妹尾:『佐倉井、(お前が)最後に 此処(ここ)に 来たのは 何時(いつ)頃なんだい?』

佐倉井:『もう、10年以上も前に成りますょ、』

妹尾:『その頃は、良く来ていたのか…?』

佐倉井:『そうですねぇ、久保伸治と一緒に… 年に2回ある 会社(社員達)の 焼肉メインの「バーベキュー(食事)会」に参加してました。

妹尾:『へぇ…、そうだったんだ!』

佐倉井:『その頃は、随分(ずいぶん)会社の景気が良かったからか…神戸牛のいろんな部位(ぶい)を腹いっぱい食べて帰ってましたょ!』

妹尾:『そりゃぁ、凄いなぁ!』

佐倉井:『はい、凄かったですょ、』

佐倉井:『今の社長の父親(おとうさん)が社長で遣ってた頃です…』

そんな佐倉井との会話の遣り取りをしながら待っていると…

部屋の入口のドアが開いて、久保(克也)社長が(工場から)戻って来てた…
そして、
佐倉井 勲の顔を見るなり…
久保社長:『やぁ、久しぶりだねぇ、佐倉井(さくらい)!』

佐倉井は、見た目(外見)は 地味で 決して男前とは言い難い人間だったが…
「どちらかと言えば、金沢発祥のGo Goカレーの ゴリラ(顔)に近い…」
その(佐倉井勲の)性格は…めちくちゃ人懐っこくて、それが(彼の)顔の表情にも出ているので…
周囲の皆 から、呼び捨てにされる事の方が多い…

そして、寧(むし)ろ、

それを快(こころよ)く 受け入れている 佐倉井 勲 には、いつも「礼儀心」を 感じさせられている 妹尾錠治の立ち位置だった…

ただ一点、(彼は)お酒を好み、 毎晩(まいばん)仕事終わりに 家の近くのコンビニに立ち寄り「ビールと チューハイ」の ロング缶を合わせて7本は 買って飲んでいる男であったので…
良く二日酔いを隠せないままで出勤して来ることが多々でした。

しかし、彼(佐倉井勲)が 言うには…これくらい呑(の)まないと…
「寝れなく(眠れなく)なった…」と言って(言葉を)返してくるので…

妹尾錠治が(心配をして…)

彼(佐倉井)に…
さらに詳しい状況(事情)を聞くと…、
倉崎社長から 毎日の様に 夕方になると、佐倉井の携帯電話に掛かって来て…
「(今日は)どこそこのパチンコ店に 新台が入ったから、(その)台の中(内側)を写真(撮影)撮って来い!」と 連絡が入り…、
その度(そのたび)に パチンコ店の閉店時間の直前を狙って店舗内に入り (予め電話で 佐倉井が 行くことを伝えておいた…その店の) 店長又は店長代理に、新台のピカピカの鍵(キー)で 台を開けて貰(もら)い…
基盤などが 複雑な配線で 繋がれている(新台)内部の情報を 写真やビデオに収録してくる作業をしている…と、教えてくれました。

新しく販売する製品( 主に、ゴト防止用「プロテクトカバー」) の申請書には、具体的に(その製品を)取り付ける場所や方法を 説明する為に 必要な 写真撮影と 同じタイミングで ビデオ撮影 も 撮ることもあり…

その時は (その様な状況の時は)…

来店された御客様の遊戯時間 終了後に (その御客様が 完全に居なくなるを見計らい) 裏でスタンバイしている掃除軍隊 ( 短時間で遊戯台と その周辺 だけを掃除する人々の事を指す言葉 )と 佐倉井の作業している時間が、(ほぼ)最後まで重なり終わる事が 多々有って…

その周囲の掃除軍隊達にも(店長や店長代理 以外の存在にも)、とても気を使う仕事をしている事を強調した「語り口調」で 佐倉井が 妹尾錠治に語っていた。

妹尾錠治は 彼(佐倉井)から、その話しを聞いた時に…
倉崎が会社の男性社員は全員「11時 出勤」って言ってた 本来の意味は…「この作業がある為だったんだ!」と、今更ながらに(思い出し…)気付いた。

佐倉井:『当然、そんな時刻では食事が出来る店も閉まってて…、コンビニで酒と つまみを買って家飲みして寝ているんですよ…』

佐倉井:『週に1回の休日(日曜日)の前の土曜日は…
その仕事(パチンコ店での新台の撮影)が、終わってから友達の経営するスナックやパブに行って、(大好きな)「カラオケ」を 楽しみながら朝方近くまで飲んでますょ!』

…と、悪ぶれた感じも無く…
自分(佐倉井)は、自分(佐倉井)なりに 人生を楽しんで生きていますよ!と…
私(妹尾錠治)に 語り掛けていたように感じていました。

そんな昼と夜を半分(はんぶん)逆転させたような生活を繰り返している佐倉井(の事)を知ってる(彼の)仲間や知人達は、 彼(佐倉井)への哀愁的なものも含めて…

ほぼ全員が 彼の名(苗字)を 敢(あ)えて呼び捨てにしていた 雰囲気でした。

だから、久保社長が「佐倉井!」と呼び捨てにしているのを見て…
妹尾錠治は、佐倉井と久保社長との距離感で…
彼(佐倉井)が、どれくらい 久保社長と、どの程度 親しい関係なのか が、判断出来ると感じていたのでした。

佐倉井:『お久しぶりしてます!』
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(妹尾は今の佐倉井の言葉に…?)
妹尾(心の中):「まぁ、佐倉井だから…ありだなぁ、」と思った。

佐倉井:『こちらは、妹尾さんで、今、倉崎社長の代理をして貰っている方です…』

妹尾:『妹尾錠治と申します!』

妹尾:『宜しく御願い致します。』

久保社長:『はい、宜しく御願いします。』

とお互いに挨拶と同時に名刺を交換したのでした。

久保社長:『佐倉井さん、来ると思ってましたょ!』
久保社長:『三輪龍二の転落死のニュースを見てから…』

佐倉井:『いえいえ、私じやぁ無くて…こちらの妹尾(社長)代理に 頼まれて 僕も一緒に来ただけですから…』

佐倉井は、妹尾錠治に 頼まれて一緒に来たんだけれど…、

佐倉井(自身)が 久保社長に用事が有って(ここに)来た訳でないことを…
(久保社長に)訴えている様に (妹尾錠治には) 強く感じられた と 同時に (佐倉井の)その言動は 当然の権利だとも思いました。

久保社長:『それでは、妹尾さんが、わざわざ、こちら(弊社)に来られた理由を聞かせて貰いたい…ところ何ですが…、ここでは多分…お互いに話し辛いと思いますので…場所を変えて会いませんか?』

妹尾:『勿論(もちろん)です!』

久保社長:『じゃぁ、グラビトン ホテルの30階にある 展望レストランに先に行ってて下さいませんか?』
久保社長:『私の方も、直ぐに支度が出来次第(グラビトン ホテル)に向かいますから…』

妹尾錠治:『ありがとう御座います…』

妹尾と佐倉井は…久保社長に「一礼」して 2階の部屋を出ると…、階段で1階に下り、1階の事務所で働いておられる職員の方々にも「一礼」すると…

直ぐに 車に乗り込み ポートアイランド に 5年前ぐらい に オープンした(外資系ホテルの)グラビトン ホテルに向かった…のでした。

…………………つづく…………………
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