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小説『窓』 no,48

翌朝、妹尾錠治が目を覚まし(ホテルの)ベッドから身を起こすと…
部屋には紡車紫織の姿は無かった。

紡車紫織は 結局(妹尾錠治に)久保伸治が死んだ事を告げて消えた…

妹尾錠治は思った…
「もしも、自分の思った通りの紡車紫織を含む特殊警察官の行動だとしたら…」

「核心に最も近づいてしまった私(妹尾錠治)を…」と心の中で呟きながら(妹尾錠治は…)

「このテーブルに残されたままに成っている…」と心の中で思いながら(妹尾錠治が)見つめる先には…
昨夜、紡車紫織と一緒に飲んだ赤ワイン(ボトル)とワイングラス…
「俺(妹尾錠治)を殺すだけの動機とチャンスがあった筈(はず)だ…」

妹尾錠治は…
国際通りに面したホテルの一室に、置き去りにされてた気分で立(た)たずんで…

テーブルの2人分の「ワイングラス」と「ワインボトル」に残る赤色に、注(そそ)いでいた目線を(ホテルの室内から)窓越しに見える国際通りを行き交う人々の光景へと移している…

そして、妹尾錠治は…
(紡車紫織は…)
もう二度と俺(妹尾錠治)には連絡して来ない様な気がしていたのでした 。

妹尾錠治は…久保伸治が(昨日)亡くなり、紡車紫織との距離感覚が御互いの立場の違いで…どんどん遠く感じていると…

妹尾錠治が泊まっている部屋の電話が鳴る…

妹尾錠治が…その電話を取る…

ホテルのフロントからの内線だと気が付く…

妹尾錠治:『はい、何でしょうか…?』

フロント(の女性):『中畑(康夫)様が二階フロント前に いらっしゃてますが…、お取次ぎは…いかがされますでしょうか…?』と、とても丁寧な言い方で(まるで妹尾錠治の今の心境を知っているかのような口ぶりで)妹尾錠治に聞いて(たずねて)きたのでした。

妹尾錠治:『中畑(康夫)さんが…?』
妹尾錠治:『はい、じゃぁ、少し待って頂いて…「これからチェックアウトの準備をして…」そちらに行きます…と伝えて下さい!』

フロント(の女性):『はい、かしこまりました…、その様にお伝えいたします。』
と言って電話を(御互い同時に)切る…

妹尾錠治は…その連絡には「何かが有る(何か意味が有る)」と咄嗟に思った…(からだ)。

そして、その(妹尾錠治の)予想は的中していた…

中畑康夫:『妹尾さん、大変な事になりましたょ!』

ホテルのエレベーターがフロントがある二階で扉が開くと…
エレベーターから出てきた妹尾錠治の目の前に中畑康夫が立っていて…
顔面蒼白で話し掛けてきたのだ!

妹尾錠治:『如何したんですか…そんな怖い顔(つき)をして…』

中畑康夫:『とにかく、妹尾さん直ぐ(ホテルの)チェックアウトをして私と一緒に来て下さい!』

妹尾錠治は 中畑康夫の緊迫した様子に引き込まれる様に…ホテルをチェックアウトすると、ホテルの出入口付近に停(と)め置かれた 中畑康夫の所有する「4WDセダン」の乗用車に乗ってホテルを後にした。

妹尾錠治は 暫(しばら)くは 中畑康夫の緊迫した様での運転に気を取られていて 何も話し出せずにいたのだが…
その車も那覇市の郊外に出ると…
走行する道(道路)も 次第に 行き交う車の数が 少なくなり…

妹尾錠治:『中畑(康夫)さん、もう良いでしょう…、少しスピードを落として話して下さいよ!』

妹尾錠治は 中畑康夫の落ち着かない様子で車を北に向かって、ひたすら走らせている事に注文を付けた…

妹尾錠治の…その言葉に若干の冷静さを取り戻したのか…中畑康夫が口を開いた!

中畑康夫:『妹尾さん!(紡車)紫織さんが大変なんですよ!』

妹尾錠治の顔に 再び緊張感が走る…

中畑康夫:『(紡車)紫織が仲間の警官と銃撃戦で腕と足を撃たれて、私に助けを求めて来て…、それで 開業医している 私の(中学校の時の)同級生の病院で 緊急治療を受けながら貴方(妹尾錠治)が来るのを待っているんですょ!』

中畑康夫:『それで、(紡車)紫織が言うには…妹尾さん!貴方の命も狙われているって…』

妹尾錠治は 「既に予測していた通りに成った(=小説『窓』no,46の内容であり、予測の通りに成った)なぁ…」
と 中畑康夫の話を聞きながら(妹尾錠治は)心の中で呟いていた…

妹尾錠治:『それで、(紡車)紫織の状態は…如何(どう)なんだ(傷の状態は…どんなぁ)?』

中畑康夫:『大丈夫です!防弾チョッキを付けていたので…致命傷はありませんが、(友人の)医者が言うには…右腕に1発と両足に1発づつ球(弾丸)を受けていて…暫くは動く事も出来ないだろうって…』

妹尾錠治:『そっかぁ、中畑(康夫)さん!有り難う!』
妹尾錠治は素直に中畑康夫の紡車紫織に対する緊急対応に感謝して…その言葉を自然に口にしていたのでした…

中畑康夫:『僕は詳しい事は何も分からないけど…、同僚警官との撃ち合いなんて…普通じゃあ無いですよ!』

中畑康夫:『それに、妹尾さん!貴方まで…その警官(達)に狙われているって…』
中畑康夫は運転しながら、妹尾錠治の顔の表情を確かめる様に言ったのだった…

妹尾錠治:『本当に 詳しく話せないが…(詳しく話せなくて申し訳ないが…)、彼女(紡車紫織)は俺を庇(かば)って仲間同士の銃撃戦に成ったんだと思う!』
妹尾錠治:『だから、何としても彼女だけは 助けたいんだ…、だけど……』

中畑康夫:『分かってますよ!心配しないで下さい…、(紡車)紫織のお兄さんからも何度も連絡が来て…もう、耳にたこが出来るくらいですよ!』

中畑康夫:『とにかく、急ぎましょう!』
中畑康夫:『どうせ、我々が病院に着く頃には…鎮静剤から覚めた(紡車)紫織が(我々に向かって)次の指示を出すだろうから…』

妹尾錠治は 中畑康夫の事が (昨日)初めて会った時とは、まるで別人の様に 頼もしい男に変わって見えていた…

妹尾錠治:『よろしく御願いします…』
m(_ _)m

中畑康夫:『………、大丈夫ですよ!沖縄本島の事ならば…こちらの方が隅から隅まで詳しいんだから…、何とかしますよ!』

中畑康夫の表情を見た妹尾錠治は…
彼(中畑康夫)の緊張感の中にある表情とは別に、紡車紫織の兄である紡車耕司との特別な人間関係を想像していたのだった…
そして…
それは (妹尾錠治)自身の想像を超える(何か…) 特別な「相当の関係」だと…(そうに違いないと…)妹尾錠治は強く感じ取っていたのでした。

……………………つづく…………………

https://note.com/amanda0513hk/n/n87920658980a


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