見出し画像

小説『窓』 no,45

妹尾錠治は、晴天の首里城(公園)に立ち寄っていた。
中畑康夫の経営する「朱里」で沖縄料理を堪能した後…
以前、仕事で沖縄に来た時には訪れる事が叶わなかった場所である。

沖縄料理で御世話に成った 中畑康夫との別れ際に 首里城公園への行き方と、それに伴う沖縄観光地図を渡された事でレンタカーを借りて立ち寄っていたのである。

首里城は…
琉球王国の中心にあった城で、海抜100メートルほどの珊瑚礁の上に築かれた丘城で…
450年にわたって琉球王朝が本拠とした城である。
戦後には一時、琉球大学の敷地と成ったりしたが…
今では…ほぼ完全な姿に復元され、沖縄県最大の観光施設となっている。

訪問時が、平日の午後3時であったことで 観光旅行者も少なくて…
妹尾錠治は隅々まで首里城の中を含む公園内を満喫しているのでした。

すると…
『妹尾さん!』と…
誰かが 妹尾錠治の背後で (妹尾錠治を)呼び止めようとする声が聞こえたので…、
妹尾錠治は振り返り、
今まで居た首里城の建屋の方向に振り返る…

そこには、赤井義晃が 立っていたのでした。

その瞬間、妹尾錠治は思った…
妹尾錠治は 沖縄での再会相手が…
紡車紫織が 最初では無かった事に 少し残念な心持ちを吐露して言った…

妹尾錠治:『あぁ、赤井さん…』

赤井義晃:『やっと会えましたょ!』
赤井義晃が私を探して首里城公園に来ていた事が分かる一言だった…

赤井義晃:『私が先に沖縄に来ている事は 既に御存知だと…』

赤井義晃が 話し出すと…
妹尾錠治は、 思った…
「紡車紫織の兄である紡車耕司(紡車の店主)からか、紡車紫織から直接 私が沖縄に来ることを聞いたんだろ…」
赤井義晃の態度には、妹尾錠治には納得いかない点が あったらかだ…
それは…(以前に…)
赤井義晃が 妹尾錠治を頼って「久保伸治の事(行方不明の状態)」を 必死に 探し回っている様子を(妹尾錠治は)覚えているからだった。

赤井義晃:『首里城公園は 差ほど広くはないし…、平日なんで直ぐ(妹尾さんと)お会いできるかなぁって思ってましたが…結構な時間が掛かりましたょ』

赤井義晃:『お蔭で、初めての沖縄で首里城公園を隅々まで見学する事が出来ました…』

妹尾錠治:『あぁ、僕も赤井さんに会えると思って沖縄に来てましたが…』
妹尾錠治:『真逆(まさか)、ここ首里城公園でとは思っていませんでしたがねぇ…』

妹尾錠治:『久保(伸治)とは 既に会えたんでしょ!?』

赤井義晃:『えぇ、会えました…』

赤井義晃:『でも、会えたのは 会えたんですが…』

妹尾錠治:『なんです…(か)、その思わせぶりな言い方は…、』

この時、 妹尾錠治が 赤井義晃に言った、この言葉の真意には…「貴方達は一緒に倉崎聖士の(倉崎聖士が代表の)会社( PGセキュリティ システム 株式会社 )を辞めて独立した仲間でだろうが…」「今更、白々(しらじら)しい…」親しい間柄(あいだがら)でもないかの様な…
その話しぶり(話し方)に、腹立たし違和感を(妹尾錠治は)感じていたのである。

妹尾錠治:『既に 二人きりで会って深い話が出来ている筈(はず)では…』

赤井義晃:『それが、そうでも無いんですょ…』

妹尾錠治は、こいつ(赤井義晃は)未だ白々しい演技を続ける気か…

妹尾錠治:『それは 意外ですねぇ!』
少し腹ただしい思いの 妹尾錠治の言い方だった。

赤井義晃:『むしろ、今、妹尾さんに会えて、めちゃめちゃ「ほっと」しているんですよ!』

赤井義晃:『いろいろ、久保(伸治)の件で 戸惑う事も多くて…是非とも妹尾さんの意見も聞きたくて…』

妹尾錠治:『こちらこそ、聞きたいことが 赤井さん いや 久保伸治に有りますよ!』
更に強い口調で妹尾錠治が赤井義晃に向かって言うと…

赤井義晃:『どうします…?』
赤井義晃:『未だ、早い時間ですが…沖縄の地酒が呑める店でも行きませんか…』

妹尾錠治:『いやいや、そんなぁ…日が 明るい内からは…』

妹尾錠治:『それに、沖縄の地酒となれば…あのアルコール度数の高い焼酎の事でしょう…!』

妹尾錠治は、苦笑いしながら赤井義晃の(酒の)誘いを断ろうと…思案していた。
それも そうである、久保伸治から素面(しらふ)で会って聞きたい話題ばかりであった。

それに…

実は (妹尾錠治は) 紡車紫織との再会を果(は)たし 二人きりで「泡盛(あわもり)」を楽しむつもりでいたので…、赤井義晃からの酒の誘いには否定的だったのだ…

赤井義晃:『はい、「泡盛」です、美味しい「泡盛」を吞ませてくれる沖縄の居酒屋の主人(あるじ)を 地元の方から紹介して貰ってて…
一応、そこを予約してあるですょ!』

なかなか、断り辛い口説き方する赤井義晃に困っていると…

妹尾錠治の携帯電話に着信音が入った…

妹尾錠治:『ちょっと、電話に出ても良いかなぁ…』
赤井義晃の話を中断する切っ掛けに利用したくなる タイミングで(妹尾錠治に)掛かってきた電話だった…
妹尾錠治は…
その電話の相手が誰であれ出るつもりで (妹尾錠治は)赤井義晃に向かって 一言(ひとこと) 呟く様に言っていたのである。

赤井義晃:『どうぞ、どうぞ!』

一応、赤井義晃の了解も得(え)た 妹尾錠治が 携帯(電話)にでる。

妹尾錠治:『もしもし、』
と電話に向かって話すと…
『妹尾さん…!』
その電話の声は…直ぐに 紡車紫織の声だと分かった!

妹尾錠は、思わず紡車紫織の紫織(しおり)の「名前」を 口に出してしまいそうに成るのを堪(こら)えて紡車(つむ)紫織(しおり)に 向かって …
妹尾錠治:『(連絡が)遅いよ!』

その瞬間、紡車紫織の方から…

紡車紫織:『ねぇ、黙って(私の)聞いてぇ!』

紡車紫織の緊張感が伝わってくる様な、その言葉を聞いた 妹尾錠治は…
少し、赤井義晃の立って居る場所から離れると…、赤井義晃に背を向ける…

妹尾錠治:『どうかしたのか?』
妹尾錠治が 声を細めて 紡車紫織に声を掛けた…

紡車紫織:『罠よ!罠(わな)!』
紡車紫織:『赤井(義晃)は、貴方を騙そうと 久保伸治と企んでいるのよ!』

いきなり、紡車紫織の只ならぬ話の内容に 驚く妹尾錠治が 紡車紫織に…冷静さを装って…

妹尾錠治:『ところで、君(紡車紫織)は、何処に居るんだ…!?』

紡車紫織:『直ぐ傍よ!でもキョロキョロしないでょ…!(赤井義晃に)ばれるでしょ!』

妹尾錠治:『………………?』
妹尾錠治の顔に 緊張感が走った…

もし今…振り向いて赤井義晃と顔を合わせたとしら、間違いなく妹尾錠治の緊張感が 即(そく)赤井義晃に伝わる感じがした…(妹尾錠治)

紡車紫織:『とにかく、赤井(義晃)とは この首里城公園内の人目に付く場所で、彼からの話を聞くだけ聞いて…(二人きりの会話を…)終わらせて、ここで(首里城公園で)別れて…!』
妹尾錠治:『えぇ、え…』
紡車紫織の話を聞き終え、出て来た 言葉が… 「えぇ、え…」だったのてある。
それも、その筈(はず)である、妹尾錠治にしてみれば久保伸治に最も早く会って話が出来る絶好のチャンスであったからだ…

すると…更に、
紡車紫織:『御願い!御願いだから、私の言うとおりにしてぇ!』

そお、言い残すと紡車紫織は 一旦(いったん) 通話を早く中断するかの雰囲気で切ってしまう…

困った妹尾錠治は…(とにかく)今は…
紡車紫織の緊張感が溢れ出ている言葉と、その状況を信じて優先するべきだと考え…、
赤井義晃との会話を続ける事に決め…
最終的には この首里城公園内で一旦、(赤井義晃と)別れる様にしようと考える…

そして…(妹尾錠治は…)

少し、オーバーな携帯電話の交信通話の「終わり(終了)」を表現したリアクションをして、赤井義晃の立っている方向に…
(妹尾錠治は) 自分の体の位置と向きを同時に変えた…

妹尾錠治:『済みませんでした…』
『会社からの ちょっとした緊急な連絡でした…。』
と、妹尾錠治は 赤井義晃に向かって言った…

赤井義晃:『相変わらず、妹尾さん忙しい様子ですねぇ』

妹尾錠治:『えぇ、まぁ…』
妹尾錠治:『赤井さんも 知ってると思うけど…、神戸の三宮エリアでの最新ゴト(ブラック•スティック)の件で兵庫県(県警と遊戯協会)の方から、(その)防御対策についての問い合わせされ続けている件が…
一番、大変でして…
それに振り回され放(ぱな)しでしよ!』
と、妹尾錠治は 赤井義晃の顔を直視しながら…少し不機嫌そうに言い放った。

赤井義晃:『あぁ、そうでしたねぇ!』
赤井義晃:『でも、妹尾さんは 今、沖縄にいるって事は…久保伸治について、特別に考える事があるからでしょ!』

図星(ずぼし)だった、妹尾錠治が少し赤井義晃の言い方に抵抗する様な感じで…

妹尾錠治:『僕が…、?』
妹尾錠治:『僕が…って言うよりも、倉崎聖士の考案した「ゴト具」の件なので…、「会社の立場で…」って感じですよ!』

妹尾錠治:『倉崎聖士が堺署で黙秘を貫いているままなのでねぇ…、どうしても 久保伸治に会って直接、話を聞くしか無い事があるんですょ! 』

赤井義晃:『そうですよねぇ…、久保伸治の兄の会社まで 行ってる位だから、かなりの状況(真相)は…妹尾さんは 分かってらっしゃる事でしょうし…』

赤井義晃は…先ほどの電話から妹尾錠治の様子が微妙に変化している事に気付いていた…

赤井義晃:『それじゃ、分かりました!』

赤井義晃:『先ずは、僕から 妹尾さんに聞いて貰いたいと思った相談事でしたが…、妹尾さんの状況(今の心境)を考えると、久保(伸治)から 先ずは (久保伸治に対しての)妹尾さんからの質問に答えさせるのが一番だと…今、感じ取りましたので…
なんとか、妹尾さんが 久保伸治に直接 会って話が 出来る様に 今から段取り考えますので…』

妹尾錠治:『すまない!そうしてもらえたならば 有難(ありがた)い!』

赤井義晃:『とにかく、予約してある…この店で 妹尾さんが 来るまで待ってますから…』
と言って 赤井義晃が、その店の名前と情報(住所を含む)を書いたメモ用紙を(妹尾錠治に)渡して、その場を立ち去って 行った…

妹尾錠治は、その赤井義晃の後ろ姿を目で追い掛けながら…
妹尾錠治:『じゃあ、また後で!』と(赤井義晃に)声を掛けた。

赤井義晃に(妹尾錠治の)声が聞こえた事が確認出来る合図なのか…急ぎ足で首里城公園の坂道を下って行く赤井義晃が 目の前の坂道の「下がり角度」を気にする様に、やや体を斜めに大きく右腕を高く上げて 軽く手を振り(妹尾錠治に)挨拶すると 首里城の最初の出入口の赤門が ある方へと 姿を消して行く…
それを(それが)見えなく成るまで 妹尾錠治は 彼(赤井義晃)を見届けていた…。

…………最終章(no,46)に続く………


前回の最終章(no44)を読む⤵️

始めから読んでみる⤵️


いいなと思ったら応援しよう!