キンモクセイ盗賊団の池【毎週ショートショートnote】
その国の北街道には、キンモクセイの森を抜ける名所があったが、近年は大盗賊団の根城となり、めっきり寂れていた。
そこで、王国軍の精鋭を集めた討伐隊により、掃討作戦が決行された。盗賊団のアジトを突き止めて襲撃、壊滅的な被害を与えると、森に火を放って逃亡した頭領も、隊長自ら池のほとりに追い詰めた。
「くそっ、王国の犬め」
「……国の為ではない。私は貴族の名家に生まれたが、幼い頃お前等に襲われ――以来、運命を呪い、許せずに生きてきた」
「はっ、私怨か」
「許せなかったのは、自分自身だ」
「?」
「あろうことか、憎むべき相手に、その自由な生きざまに憧れを抱き、惹かれてしまうなんて――」
兜を脱ぐと、キンモクセイに似た女隊長の金色の髪がふわりと揺れた。
「お前に再び会うために生きてきた。それも今夜で終わり――」
……翌朝、焼け野原となった池の端には、二振りの武器だけが重なっており、持ち主の行方は杳として知れない。
池に沈んだのか、それとも――