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その後の 坂の途中

あんまんを食べる
ひとりで、そう、たいがい、ひとりで

いまも、毎日、本ばかり読んでいる
まわりからの、文学少女、の声にも
いまでは、すっかり慣れた

まったく慣れないのは
学校から家へ向かう、この坂

坂の途中にある大きな桜の木の下で
ひと休みするのは、毎回のこと

息と気持ちが整ったら
買っておいたあんまんを
ちょっとずつ食べる

ときどき、そう、ほんの、ときどき
あの男の子が、坂を下から
ダッシュでかけてくる
わたしのとことは別の学校の男の子
たぶん、野球部

その男の子は、大きな桜の木のとこで
いったん休憩する
はあはあ、はあはあ
口から、白く出ている
その口に、白くて、まんまるのものを
急いでもっていく

ふーん、肉まんなんだ
男の子って、そうなのかな

せわしなく、肉まんをほおばる男の子

肉まん、いいよね
でも、あんまんのよさも
知ってほしいよなあ

ふいに、わたしの衝動が

けれど、わたしが
行動に出ようとする前に
男の子は、ふたたび
坂をかけていく

しばらくして、わたしも
坂を上っていく

坂のてっぺんで、その男の子が
待っていてくれることは
やっぱり、なくて
でも、そのことにも
もう、すっかり、慣れてしまった


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