場転で歩ける人間になりたい
私は普段、居酒屋でアルバイトをしている。
個人経営の小さなお店のためホールとドリンク作りを1人で回すことも多い。ただ、小さなお店とは言え夕飯の時間帯になると家族連れが同時に4組入ってきたりする。
まずはおしぼりを渡して、ドリンクオーダーを聞いて、ドリンクとお通しを持って行って、フードオーダーを聞いて…×4
そうなるとドリンクを持って行った帰りやメニューを聞いた帰りに小走りでキッチンに戻ってしまう。
店長に何度注意されるが3年働いた今もまだ小走ってしまう。
「あいつ忙しいのに何のんびり歩いてるんだよ」
「おい、早くドリンク持って来いよ」
客の思ってもない声が聞こえる。
こんな小心者の私はお笑いが大好きなのだが、こないだライブを見に行った。何組ものコンビやトリオが出演するライブのため、漫才とコントどちらも見れる。
コントが終わるとコントで使った机や椅子を袖に下げ、サンパチマイクを舞台の正面に置く。最後にマイクから伸びるコードを真っ直ぐに伸ばす。
暗転中に2.3人のスタッフが躍動するこの時間。客からすれば単なる待ち時間。次のネタを早く見たいとウズウズする気持ちの時間。
私がスタッフだったら思ってもない客の
「早く準備しろよ〜」
「準備終わったらさっさと帰れよ〜」
が聞こえてきそうである。
もちろんプロのスタッフ達は走らない。
堂々と袖に帰っていく。
私も場転で歩ける人間になりたい。
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