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中学生の僕が憧れだったファッション。

 最近、山田詠美さんの短編小説『ジョーンズさんのスカート』を読んだ。

 心惹かれるものがあったから、僕が感じたことをnoteに書こうと思う。

『ジョーンズさんのスカート』

私は、そのスカートを「ジョーンズさんのスカート」と呼んでいる。美浜のアメリカンビレッジのショップで、それに出会った時、あ、私に会いに来たんだ、と思った。

『ジョーンズさんのジャケット』

 冒頭のこの文章を読んだとき、「ジョーンズさんのスカート」という言葉が不思議な雰囲気に包まれている感じがした。そして、ジョーンズというのは、何かのブランドの名前か、ジョーンズさんという知り合いの話なのかなぁ、と初めは思っていた。

 いずれにせよ、ジョーンズという言葉には、どこかおしゃれな響きがあった。

 物語の舞台は、沖縄だった。
ある日、主人公の”私”は、「ゴールデン・エイジ」という古着と新品の衣類を半々に扱っているショップで、「ジョーンズさんのスカート」に出会う。

 それは、パッチワークを施した軍服で、数枚のカーキ色のユニフォームを切って縫い付け、スカートに仕立てたものだった。ポケットにはかつての持ち主だった「JONES」という名札が付いている。

  実は、「ゴールデン・エイジ」というショップには、米軍放出品(米軍やその家族が使っていて、のちに民間に売り渡した品物)はもちろんのこと、それらをリメイクした商品も売られていた。「ジョーンズさんのスカート」もそのひとつだった。

 主人公である”私”は、それが喉から手が出るほど欲しくてたまらなかった。けれど、スカートの値段は二万五千円。高校生の”私”には高すぎて買えない。

 そんな中、友達の里加子が「どうして、それが欲しいの? 他にも、同じようなリメイク品あるじゃない」と尋ねる。

 私は意味ありげに笑うと、ジョーンズと自分の関係について話し始める。

欲しかったのは、革のジャケット

 僕はこの小説を読んでいるとき、中学生の頃に出合ったジャケットが脳裏に浮かんだ。

 ある日、僕は家族でショッピングモールに訪れた。目的は、修学旅行で必要なスーツケースや旅行鞄を買うためだったと思う。

 フロアを歩いていると、服屋さんの真っ黒のジャケットが目に止まった。

 それは革製のジャケットで、マネキンに着せられてショップの目立つ場所に置かれていた。試着してみると、サイズはぴったしだった。

 けれど値段を見たとき、それは悲鳴を上げるほど高かったのだ。

 ニマンエン……。

 なぜか僕はその場から立ち去ることができず、ただずっとそのジャケットを見ていた。値段が値段なだけに、買って欲しいとは言い出せず、けれど多少の期待を寄せて、両親のリアクションを待っていたのだと思う。

  「成長期だから、今買ってもすぐに着れなくなるよ」

 父にそう言われたとき、僕はハッとした。
今日は修学旅行のための買い物に来たのだ。スーツケースや旅行鞄を買うために来たのだ。

 それに、さすがにこのジャケットは高すぎる。「成長期」という父の言葉は、反抗期の僕にも合点がいった。

 大人になっても買える。きっとそうだ。僕は自分にそう言い聞かせて、ようやく諦めの決心がついた。

✳︎✳︎✳︎

 それから、何年かしたある日。
僕は、ショッピングモールで買い物をしていた。その日も、たまたまそのブランドの前を通った。ブランドの懐かしいロゴを見つけて、中学生の頃を思い出した。

 僕は店の中に入って、周りを見渡した。
けれど、あの頃に見たジャケットはどこにもなかった。当たり前すぎる現実だ。

 でも、きっと同じものを見つけても、買いたいとはならないと思う。あの頃にはあの頃の価値観があって、その時にその時の価値観があって、今はは今の価値観がある。だから中学生のとき、あの頃の僕の価値観がジャケットの魅力を後押ししたのだろう。

 僕はしばらく店の中で余韻に浸り、その場を後にした。

2022.11.4.

こんばんは。雨宮 大和あまみや やまとです。

今日は、『ジョーンズさんのスカート』という物語を読んで、僕が感じたことを文章にしました。まだ作品を読んでいない人は、ぜひ『ジョーンズさんのスカート』を読んでみてください。

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「モノガタリ」というのはメルカリの企画で、21人の著名なベストセラー作家たちが「モノとの出会いと別れ」をテーマで物語を書き上げています。今日紹介した『ジョーンズさんのスカート』もモノガタリの作品でした。

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雨宮 大和|エッセイ・短編小説
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