二股結婚していた彼との電話
Facebookで彼がいつの間にか結婚していたことを知ってから、ずっと無視しつづけていた彼からの着信。でも次の日の朝、とうとう根負けして、電話に出てしまいました。
……どこかで、まだ何かを期待していた私がいたのかもですね。
言い訳を繰り返した挙句
彼が放った驚愕のひと言
朝7時頃のことです。ベッドの上で死んだように天井を見ていたら、また彼から着信が入りました。いつまでたっても向こうが切る様子がないので、仕方なく電話に出ることに……。
私が発した第一声は、
「なに?」。です。
全ての想いを押し殺して絞り出した「なに?」ですから
彼にはこのうえなく恐ろしく、冷たく聞こえたことでしょう。
「LINEで事情を説明したんだけど、全然既読にならないから…」と消え入りそうな声で応える彼。
彼のLINEは即座にブロック&削除したので、もちろん何が書かれていたのか知りません。聞くと、結婚していたことはやはり事実なのだそう。しかも、半年ほど前のことだといいます(もちろんそれ以降もずっと、私と会い続けていました)。
聞きたいことはたくさんあったのかもしれないし、出すべき言葉はたくさんあったのかも知れません。
「どうしてそんなことができるの!?」
「私って言う存在はあなたにとって何だったの?」
でも私の心は完全に機能を停止していて、不思議と何の言葉も出て来ませんでした。
ただひたすら言い訳を繰り返す彼に対し、ようやく私が絞り出したのが
「それで、あなたはどうしたいの?」。
という言葉。
……
……
しばしの沈黙。
そして、彼はこう言いました。
「……これからも……側にいて、優しくして欲しい」。
彼の結婚した人は
普通に優しい人だった模様
ええと……この人は一体何を言ってるんだろう。私の頭の中は不思議ととても静かでした。たぶんすごく怒っているし、悲しいのですが、表面的には「無」です。
私はしびれた頭を何とか回転させつつ、こう言いました。
「もう側にいて、優しくしてくれる人がいるんだよね。そんなのその人に悪いじゃない……」。
すると、彼はしばしの沈黙の後、消え入るような小さな声で
「……うん」。
と言いました。
……
……
この二文字の破壊力……伝わりますでしょうか? 彼が結婚した人は、普通に彼の隣にいて、優しくしてくれる女性だったのです。
もしかしたら、好きでもない人とのやむを得ないデキ婚だったのかも!?なんていう私のささやかな希望は、ここで完璧に打ち砕かれました。
しかも。彼はここで改めて、私よりもその結婚相手を選んで見せたのです。
ああ。彼は本当に結婚して、その人と幸せに生きているんだ。私は静かに、とても静かに、その事実に打ちのめされていました。
そして、「じゃあその人とお幸せに」。とだけ言って、電話を切ったのです。
その後、彼との連絡手段をすべて絶ったこともあり、結婚相手のことや、結婚した経緯などを知ることはありませんでした。
それは今でもそうです。
あのときの私はきっと、とても静かに怒っていたのだと思います。「無」の蓋の下には、ものすごい質量の怒りと悲しみが渦巻いていました。でも、それを出してしまうと、絶対に自分が保てない。壊れてしまう。防衛本能が働いた結果、「無」を装うことを決めたのかも知れません。
私の心はそれくらい、彼に癒着していました。はがすと大量出血を起こして死んでしまうくらい、べったりとくっついていたのです。おそらく、彼の方もそうだったのではないかと、今の私は思います。
この二股結婚という、一般的には考えにくい行動からもお判りいただけると思いますが、私が一緒にいるときから、彼の態度は決して誠実なものではありませんでした。どちらかというと、モラハラで、不遜で、俗にいうダメンズだったのです。
なのになぜ、私がそんな彼を好きになり、癒着し、離れることができなかったのか……。その後心理学の道に入ったことで、ようやくその答えを見つけることができました。
その答えをご紹介する前に、彼との出会いと、二股結婚に至るまでのお話を、少し書き連ねたいと思います。よろしければおつき合いください。