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ユウヤのこと
ユウヤがなぜ「二股結婚」という理解不能な行動を取ったのか。なぜ私が、私を大切にしない彼から離れられなかったのか……。私はそんな疑問に対する答えを、カウンセリングを通して知ることになります。
そのお話をする前に、ユウヤという人間について、もう少し詳しく書かせてください。
■電話口で「認められたい」
と泣いたユウヤ
ユウヤはとにかく、変わっていました。最初に絵画教室でユウヤと出会ったとき、彼はとても気さくに生徒と話す人気の講師でしたが、その言動、笑顔に、ちょっと無理をしているような、違和感があったことを覚えています。
前にも少し書きましたが、彼はアルバイトで絵画講師をしながら、東京芸大への入学を目指し、必死に勉強していました。とにかく上を目指して「頑張っているひと」だったのです。
しかし私には、彼に日本の最高峰である東京芸大に入れるような才能があるとは思えませんでした……。大変失礼ながら、分不相応な目標に向かって頑張っているよう見えたのです。
この東京芸大の件もそうですが、ユウヤはとにかく、「認められたい欲求」が強いひとでした。アルバイト先の上司に褒められたり、怒られたりするたびに、過剰に見えるほど一喜一憂していたのです。
仕事で失敗をして上司に怒られたときは、私に電話をしてきて、電話口で「認められたい」と泣いたこともありました。
その頃の私は、アルバイト先で怒られたくらいで何も泣かなくても……と思っていたのですが……。
でも、後のち気づくのです。
彼の「認められたい欲求」は、もしかしたら、彼の生い立ちに起因しているのではないか……ということに。
■彼のなかに見えた「小さな子ども」
ユウヤは幼少時、病気でお姉さんを亡くしています。どうやらお姉さんは昔から病弱で、入退院を繰り返していたようでした。
おそらくご両親は、お姉さんにかかりきりだったことでしょう。それゆえに、ユウヤが自分を見てもらえない寂しさを常に感じていたであろうことは、想像に難くありません。
そして、そのお姉さんが亡くなったあと、嘆き悲しむご両親を見ていたユウヤの気持ちも、少しだけ想像ができます。
自分自身もお姉さんを亡くして悲しかったことでしょう。でもひとり残された彼は、「自分が立派な人間になって、ご両親を喜ばせないといけない」。そう思ったのではないかと思うのです。
また一方で、自分が立派な人間になれば、ご両親が自分を見てくれるのではないか。とも思ったかもしれません。
彼の異常なまでの承認欲求は、小さい頃、「親に自分を見てもらえなかった」という痛みが原因なのではないか。
あくまで想像でしかありませんが、私にはそう思えてならないのです。
以前に書いた、ホテルでの一件も、そう思えばなんとなく理解できます。あのとき、帰ろうとする私を彼は泣いて引き留めました。
そんな彼の姿がまるで、母親に置いていかれる子どものように見えて、私はその場に残ったのですが……。
もしかしたら彼は本当に、
お母さんに置いていかれた、子どもだったのかもしれない。
そう思えてならないのです。
そして、私は後のち知ることになります。
かくいう私自身の中にも、
お母さんにおいていかれたままの、小さな子どもがいたのだということを……。