天ヶ瀬温泉の未来を考える上で必要となることは何か
第二回を迎えた天ヶ瀬温泉コンセプトワーク。
今回は旅館街の皆さんと実際に天ヶ瀬温泉街の未来を考える上でこの先必要となることついて考えていきます。それでは参りましょう!
◆“泊食分離”
江副(ブンボ株式会社代表);皆さんこんにちは。今回は今後進めていくコンセプトワーク、そして天ヶ瀬温泉がこの先復興を遂げていく上でどのようなことを考えていかなければならないかを皆さんと話していければと思います。
早速ですが、皆さんはこの先どんな“天ヶ瀬温泉”にしていきたいですか?
温泉街の皆さん;「やはり街の回遊性を高めていきたいというのはあるな。かつての天ヶ瀬温泉は旅館に泊まる人が皆外に出て街中を歩き回り、とにかく下駄の音で賑わっていた。でも、ある時から旅館毎にお客さんを囲むような流れに移り変わってきてしまった。」
「たしかに、昔と比べ今は各旅館が孤立しているように感じるな。」「そしてそれに伴ってこうした皆でコミュニケーションを取ることも減ってきたよね。」
「天ヶ瀬温泉全体が一つの旅館であったり、天ヶ瀬がひとつの地域商社みたいな感じに思われたら良いよね。」「うんうん、天ヶ瀬温泉に行ったというよりはむしろ“天ヶ瀬旅館を訪れた”と思われたい。」
「天ヶ瀬が一つにまとまれば後々は九州全体における天ヶ瀬という風な切り口も生まれてくるかもしれない。別府や湯布院、そして他県といった他のエリアを巻き込んでいけるような天ヶ瀬温泉になりたいな。」
江副;なるほど…私も皆さんがおっしゃる通りだと思います。この先旅館で食は一切提供すべきではないといった極端なことでは勿論ありませんが『泊食分離』といった考えも良いのかもしれません。
いずれにせよ、街の回遊性を高め互いに協力し合う温泉街を目指すことは今後間違いなく重要になってくるのでしょう。
◆「温泉」と「川」
温泉街の皆さん;「天ヶ瀬を一つの旅館と考えた時に、この川は旅館の中庭みたいな感覚になる。だからこそこの玖珠川とも改めてしっかりと向き合っていかなきゃなと思う。」
「たしかに、これまでこの川は当たり前のものすぎて全然そこに価値を見出してきたりはしなかったな。」「天ヶ瀬温泉街に初めて来たお客さんは皆『川湯』(川沿いの露天風呂)に驚いていたけど、ここに日常として暮らしていたら意外と気づけないよね。」
「今回私たちはこれ以上ない自然の脅威を目の当たりにしたけども、それと同じくらい天ヶ瀬に暮らす私たちは長きに渡って川から多くの恩恵を授かってきているはず。だからこそ、この川の存在を遠ざけるのではなく川との向き合い方を改めて考えていきたい。」
「そして何よりも自分たちはこの川で小さい時から親しみ遊んできた。だから、この川を未来の子供たちに残してあげたいと強く思う。」「これからも私たちは川と向き合い続けたいな。」
江副;川の脅威があれば、それと同じくらい川の恩恵は存在する。今皆さんが話されたように天ヶ瀬はこの先も川と共にあり続けるのでしょう。それらのことを含め、改めてこの川との向き合い方を皆で考えていく必要があるのかもしれません。
◆天ヶ瀬の食について
温泉街の皆さん;「あとは泊食分離という考えから天ヶ瀬の食についても色々と学んでいきたいな。」「たしかに、これまでは“天ヶ瀬の料理といえば〇〇!”みたいなものがあまり確立されていなかったよね。」
「でも、天ヶ瀬ならではの食の光景は探せば見つかるのかも。」「それこそ昔は朝になると地元のおばちゃん達が背負いかごに椎茸や野菜をたくさん積んで売りに来たりもしていたよね!」「かつての日常に溶け込んでいた天ヶ瀬のご飯についてももう一度見直す必要があるのかもしれない。」
「農家さんやローカルな生産者さんとの繋がりは大切にしたいな。」「あとは今後たとえば旅館以外の場所でも旅館の料理を提供して、次回は実際にここの旅館に泊まってみよう!という風になっても面白そう。」
江副;温泉街と食は切っても切れない関係です。だからこそ、一時的にこれが流行っているからとか物珍しいから〇〇を提供しよう…といったものではなく、なぜこの街でこの食なのか?ということを改めて皆で考え直してみても良いのかもしれません。
◆街の統一感をはかるには
温泉街の皆さん;「天ヶ瀬温泉街の景観やデザインについてはどんなものが良いのかな?」「たしかに、せっかく色々と作り直すのだから天ヶ瀬温泉街として統一感のあったものを設計してお願いしたい。」
「奥の山や川沿いの景観整備も行っていけたらいいよね。」「ただ、あれもこれも詰め込んで結果的に街のイメージを壊してしまったら元も子もないのでそこは焦らず慎重に考えたい。」「あくまでも昔ながらの雰囲気は大事にしたいな。」
「建物自体や街のインフラだけでなく、温泉街を歩く人々の浴衣姿や街中に響く下駄の音といった情景も大事にしていきたい。やはりそういったことを考える上で街のコンセプトは大切になってくるのだと思う。」
江副;統一感を図るというのは、決して全部が全部を揃える必要はありません。それこそ目に見える統一感だけではなく、思想や哲学といった目には映らない部分での統一を図っても良いのではないのかと思います。この街だけの“天ヶ瀬憲法”なんてものを皆で考えても面白いかもしれません。
◆長きに渡り栄え続けていく為に
江副;さて、今日皆さんから挙がった内容としては主に『街の回遊性を如何に高めるか(泊食分離)』『川とこの先どのように向き合っていくか』『天ヶ瀬ならではの食とは何か』『どのようにして街の統一感を出すか?(景観やデザイン)』などがありました。これらについてはこの先のワークショップでも更に深く議論していけたらと思います。
毎度繰り返し言うようですが、せっかく天ヶ瀬のビジョンを作ってまた数年後に流されてしまうようでは意味がありません。あくまでもこれをきっかけに多くの関わりしろが街に生まれ、未来の世代へバトンを繋げていくことが大きな目的です。
現状の課題を見つけるだけでなく、なぜこれまで行ってきた様々なアプローチが続かなかったのか、そしてどうしたらこの先長く息づくコンセプトを持つことができるのかという『過去』『現在』『未来』の三軸で皆さんと共に地に足着いた復興プランを考えていけたらと思います。
本日は改めて唯意義な時間をありがとうございました!
written by 桶の旅人
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