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一ファンの戯言~秋がきて

7月の半ばに、こんなことを書いた。

開幕して1か月ほど経ち、大和選手の起用方法「2勤1休」体制が少しばかり注目されていた頃。ここ数年ずっと胸に抱いていたことを、言葉にしたものだ。

これを書いたあたりから、大和選手の「2勤1休」体制は崩れ、ベイスターズの二遊間は大和選手、倉本選手、柴田選手をメインに臨機応変に組まれるようになっていた。
しかし、9月16日、大和選手が自打球による左膝骨挫傷のため一軍登録を抹消されたことにより、このローテーション的起用法は思わぬ形で終わりを告げた。

……と思っていたら、10月4日、思っていたよりも早く1軍復帰を果たした。ほんとに大丈夫なの?と思わずにはいられなかったのだが、どうやら問題はないようだ(今のところ)。

それはさておき、この二遊間のローテーション起用について、大和選手が抹消する少し前に、ひとつ大きな変化があった。

8月28日、横浜スタジアムで行われたスワローズ戦で、大和選手は約2年ぶりにセカンドの守備位置についた。
抹消前にショートを守ったのは9月2日が最後。それ以降は、スタメンで起用される際もセカンドだった。(一軍昇格後にまた守ってはいるが)

このセカンド起用については、ベイスターズの公式コラム『FOR REAL-in progress-』で、本人の口から語られている。

2週間ぐらい前に、監督に呼ばれて『(二塁手としての起用について)どう思うか』って聞かれたんです。『監督の好きなように動かしてください』と言いました。

(『FOR REAL-in progress-』2020年8月31日)

「ポジションにこだわらない」
「どこでもやる」

幾度となく繰り返されてきたそれらの言葉から垣間見える、「フォア・ザ・チーム」の精神……ではなく、「どこでも守れますよ」という自負――彼のこれまでの経験と努力、才能が支えるプライドが、私は好きだ。

『監督の好きなように動かしてください』

この言葉を最初に目にした時も、「らしいな」と思った。(思ってしまったことを、いまは後悔している。)

でも、彼はこの言葉を言うためにプロ野球選手を続けてきたわけではないだろう。

入団した時、
初めて1軍に上がった時、
1軍開幕スタメンの座を勝ち取った時、
ゴールデングラブ賞を受賞した時、
移籍を決意した時、
色の違うユニフォームに袖を通した時――

15年にもなる野球人生。節目節目に、その先の未来を、輝かしい未来を描いていたことだろうと思う。
ただ、どうあがいても手に入れられないものもあって。現実と向き合い、自身の思いに関わらず様々なものを受け入れてきた結果、生まれたものの一つがこの言葉だったのではないか。

『監督の好きなように動かしてください』

経歴やプレースタイルなどから「いぶし銀」や「渋い」などと評されることもある選手だが、今は渋さよりも、この言葉から滲み出る「苦味」がただ広がっていく。

2020シーズンも残り20試合となった。
チームの順位は現在4位。セ・リーグはジャイアンツの独走状態が続いており、マジックは1桁となっている(10月14日現在)。ベイスターズの優勝の可能性は消えたと言っていいだろう。
私が抱いていた願いのうちの一つは、叶わぬ夢となってしまった。

残りの時間で私は何を見て、何を思うのだろうか。
苦味と寂しさが募っていくばかりの、この秋に。


写真は船上から望む朝日。2014年10月19日撮影、鹿児島県・錦江湾にて。

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