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1人の女のために青春をピンボールに捧げる『FLIP-FLAP』は甘酸っぱくも熱い

※作品紹介の性質上、多少のネタバレを含みます。


■作品概要

  • 作品名:FLIP-FLAP

  • 作者:とよ田みのる

  • 掲載誌:アフタヌーンKC

  • 発表期間:2007年から20008年

  • 巻数:全1巻

  • 個人的な評価:72点


■あらすじ

 卒業式の日、同級生の山田華に告白した深町は、彼女から「ピンボールでハイスコアを出したら付き合う」という条件を提示される。彼は山田を狙うライバルたちと共に、謎のハイスコアラー、UFOさんを越えようと努力する。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/FLIP-FLAP_(漫画)


■ピンボールの大きさの宇宙で命を燃やす

 「あらすじ」にもあるようにこれといった特徴のない主人公『深町』は高校卒業を機に、学校のマドンナ的存在である『山田』さんに告白するが、“ある条件”付きで了承される。その条件とは「ピンボールで最高スコアを叩き出すこと」だった。

『FLIP-FLAP』, 12頁

 深町はゲーム全般に対して“ただの娯楽”といったやや差別的な価値観を持っており、突きつけられた条件も山田さんの為、嫌々了承する。

『FLIP-FLAP』, 13頁

 まず山田さんが可愛いわ。
 ピンボールが下手くそなのに「二度とやらん!」と言いながら100円を入れ続ける山田さんが愛おしすぎ。なんかなみなみな口も可愛い。
 クラスでは物静かな清楚系美少女なのにゲーセンでだけはオタサーの姫になって内面を曝け出せるところも萌え。モタクだから。

 深町にとってはピンボールの最高スコア保持者である『UFO』さんが恋のライバルなのだ。なぜなら山田さんは恋人の条件にそれを引き合いに出すほどに、焦がれているから。顔も知らない最高得点者に、恋をしているから。

『FLIP-FLAP』, 33頁

 深町は恋のライバルとなったUFOを倒すため、大学生の期間のほとんどをゲーセンで過ごす。ゲーセンでのみ出会える山田さん、ゲーセンのオーナーのおじいちゃん、そして数多の恋のライバルとともに切磋琢磨した深町の腕はみるみる上達し、山田さんとともにピンボールの大会に出場し、好成績を残すまでになる。

 山田さん可愛い可愛いしたが『FLIP-FLAP』の真価は深町にある。山田さんというキャラクターは、深町の魅力を引き立たせるために存在していると言っても過言ではない
 深町は当初、蔑視すらしていたピンボールの魅力に取り憑かれていく。山田さんというヒロインの為にはじめた経緯が、徐々に彼の世界から山田さんという目標が薄れていき、ピンボールそのものに移り変わっていく

『FLIP-FLAP』, 114頁

 世界は、深町とピンボールだけになる。それは即ち、深町も恋をしたのだ、UFOという顔も知らない最高得点者に
 深町と山田さんは、ピンボールを通して同じ相手に恋をする。まるでハイスコアの特典かのように位置していた山田さんという存在は、いまや深町とともにピンボールの世界を追い求める同等の探求者として現れる。深町はここにきてはじめて、山田さんと対等に恋をする。

 深町と山田さん、そして山田さんとUFOの間にあった直線系の関係は、UFOを中心に深町と山田さんに伸びるスター型の関係となり、そして山田と深町の間を結ぶ直線が追加されトライアングルを成す。
 ピンボールを追い求め、スコア(得点)でしかなかったUFOと、特典でしかなかった山田さんが、深町と対等な存在になっていく道程が、僅かな領域を用いて行われるこのアナログゲームの小世界によって織り成される。それは小世界だからこその、確かなアツさを秘めている。


『FLIP-FLAP』, 104頁


■まとめ

『FLIP-FLAP』は、女のために始めたピンボールの中の小宇宙に、命を燃やして向き合う男の熱いドラマを描いた、ニッチなテーマにもかかわらず誰もが熱狂するラブコメ漫画だ!


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