Coffee Taster's Flavor Wheel(SCAA 1995版)を読む。
はじめに
こちらの内容はほぼ専門家向けの内容となっています。
多分、コーヒーを専業としている人もあまり知っていない情報になるかもしれません。
その辺りご了解ください。
コーヒーの味の表現を皆さんご存知でしょうか?
コーヒーにはFlavor Wheelと言う物があります。
円グラフで中心近くにカテゴリがあってその先に詳しいFlavorに細分化された図です。
ネットで検索をかけるとすぐ出てきますね、
自分は、これをみてまったくピンとこないのです。
自分は、全くの理系人間で理詰めて物を考えたい派なのですが、このようにただ列挙しているだけ?(本当は違うらしいのですが)だと、全く頭に入ってきません。
いちいち覚えるのが面倒くさいのです。
そんな時にSCAの古いFlavor Wheelを見つけました。
これから簡単に自分の理解を書いていくのですが、これならばわかりやすい。
自分にはそう思えました。
そして、この古い1995年版のSCAのCoffee Taster's Flavor Wheelには、ペアとなるThe Coffee Cupper’s Handbookと云う解説書があります。
本書は、こちら一部を翻訳して自分なりに理解した内容になります。
コーヒーの感じ方
本章では、コーヒーがどの様に生成されて、どのように賞味されて、どのように感じるかを、逆順で分析していきます。
コーヒーに関する感覚
人間の感覚は五感とされています。
この五感のうち、コーヒーを賞味する上での感覚はどのようなものになるかと言うと以下にまとめられると思います。
視覚:影響しません。
聴覚:影響しません。
触覚:影響します。Mouse Feel/body(口当たり)と表現します。
味覚:影響します。Tasteと表現します。
臭覚:影響します。Aroma等と表現します。
触覚は、口内で滑らかさや、ざらつき、粘性等を感じます。
上記のうちもっとも単純な感覚ではないでしょうか?
味覚は、舌の受容体で感じます。
甘味、塩味、酸味、苦味の組み合わせと考えられます。
他にも味覚には、旨味があるのですが…
臭覚は最も多種多様な情報を検知します。
鼻の奥にある受容体で検出します。
鼻から嗅ぐ場合と、口に含んだ際に喉側から鼻に上がっていき受容体に達する経路もあります。
良く鼻をつまんで食べると何かわからなくなるという話があります。
そのくらい臭覚は重要な感覚器と言えると思います。
また、コーヒーの芳香成分は、ワインなどよりもはるかに複雑だそうです。
ので、コーヒー香りはとても重要な要素となると思われます。
コーヒーが賞味される順番
コーヒーを飲むときには以下の手順で賞味されることが一般的と思われます。
香りをかぐ
口に含む
飲込む
香りをかぐという行為は、そもそも意識的に行わないこともあると思いますが、カップの液体を口に近づけた時にすでに鼻は香りを検知しています。
このフェーズでは、臭覚が作用しています。
口に含むと、触覚、味覚が働き、口の中から芳香成分が鼻に達することで臭覚も働きます。
液体を呑み込むと、その余韻(After feel)を感じます。
これは、触覚、味覚、臭覚すべてが働きます。
コーヒーが生成される順番
The Coffee Cupper’s Handbookでは、コーヒーは提供されるまでの間に以下のフェーズがとられます。
収穫から乾燥、精製まで
生豆の貯蔵
焙煎とキャラメル化
焙煎豆の保存
抽出から賞味されるまで
それぞれの工程で、コーヒーの味わいは変化しますが、この中でもコーヒーの風味に悪い影響を与えるものに関して特に注意深く考えられています。
また、対象をスペシャルティコーヒーとは特化せず、また抽出後長時間立った後のFlavorなど普通ではありえない状況も考慮して、コーヒーを包括的にとらえているのも特徴と考えられます。
Coffee Taster's Flavor Wheel
基本構成
1995年版のSCAA、Coffee Taster's Flavor Wheelでは、円が2つあります。
左側の円に、Taints(汚れ)&Faults(欠点)、右側の円にAromas(右半分)とTastes(左半分)で構成されています。
左側の円もTaintsとFaultsで右左に分かれそうな書き方なのですが、The Coffee Cupper’s Handbookを見てもちょっとあいまいなので、あえて分けないで記載しています。
では、それぞれの部分を見て行きましょう。
Aromas
Aromasは臭覚で感じられるものの表現になります。
コーヒーの成分の分析から、Enzymatic/Sugar Browning/Dry Distillationの3つに分けられています。
これは、揮発性の高い順に並べています。
Enzymatic
この言葉を単純に和訳すると、「酵素」になります。
で、酵素の定義は「生物の細胞により作られる、触媒の働きを持つたんぱく質である」との事です。うーむ。
ここでは、単純に生豆由来の有機成分位に考えておきます。
このカテゴリでは、さらにFlowery/Fruity/Herbyに分けられさらに細分化していきます。
Sugar Browning
こちらをネットで検索すると、「コーヒーを焙煎することにより糖分が焦がされて生成される物質に由来する香り。」とあります。
このカテゴリはNutty/Carmelly/Chocolatyに分かれます。
これらは、焙煎の度合いの順番に並んでいると思われます。
コーヒーの印象の大部分がこの内容ではないでしょうか?
私的に、色々な豆のフレーバー表現を見ていて、そもそもコーヒーでしょ、という部分を省略して書いているので、なんでそんな枝葉の部分に執着するのだろうと思っていました。
そのコーヒーを表現するにはこの項の表現は必須なのではないかと思っています。
Nuttyと言う表現は、ネガティブコメントに聞こえますね。
それは、EnzymaticがNuttyに感じられるのならば、ネガディブで良いと思うのですが、SugarBrowningとしてNuttyと云うのはとて普通の表現だと思います。
その辺り、Nuttyと言っている人はどう考えて居るのでしょうか?
Dry Distillation
こちらは、和訳すると「乾留」となります。
何でしょう?炭化で良いでしょうか?
ここは、Resinous/Spicy/Carbonyに分けられます。
かなりネガティブな印象ですね。
Tastes
さて、この項では、前出の通り、Sour(酸味)/Sweet(甘味)/Salt(塩味)/Bitter(苦味)に分けられています。
The Coffee Cupper’s Handbookでは、この説明を分かり易く図示しています。
ちょっと解説しますが、ここを読むよりも、図を見るのが早いです。
まず、Bitterを別として、Sour(酸味)/Sweet(甘味)/Salt(塩味)で正三角形を作ります。Flavor Wheelの並びでSaltの次にSourが来る形になります。
で、次の区別は、それぞれの辺上の1/3となりに依ったところになります。
例えば、WineyはSourとSweetを結ぶ辺のSourからSweetへ1/3寄った所になります。
また、SouryはSourとSaltを結ぶ辺のSourからSaltへ1/3寄った所になります。
次の分類はさらにそれを少しづつ(順番は記載順にあわせて)オフセットしたものになります。
Bitterに関しては、Sourとの辺のみで考えます。HarshがSourより、PungentがBitterよりです。
このカテゴリの表現って抽象的でわかりずらいです。
それに、Wineyの方がAcidyより酸味が強いのかぁ…知らなかったとか。
いろいろ勉強になりますが、用語として一般的でないところが使いにくいなぁと言う印象です。
Taints & Faults
さて、Taints(汚れ)とFaults(欠点)です。
こちらは、収穫後の工程で発生するデフェクトとなります。
それ以前からあるデフェクトは通常のフレーバー表現で行うという考え方だと思います。
こちらの、中心の円のカテゴリはInternal Changes/External Changes/Taste Faults/Aroma Taintsとなっています。
で、四つに分かれるのかと言うとそうでもなさそうで、基本的には
Internal Changes/Taste FaultsとExternal Changes/Aroma Taint、すなわち左右に2分されるのかな?と考えて居ます。
そもそもFaultsはTasteに、TaintsはAromaに紐づけられるような話も聞いています。
Internal Changes/Taste Faults
こちらは、内部的な物質の変化がtasteのfaultsにつながるという理解で居ますが.…aroma影響しないのか?とか厳密なことはよくわかりません。
ここでは、Fats Changing Chemically/Acids Changing Chemically/Loss of Organic Materialに分けられます。
Fats Changing Chemicallyは、脂肪が変質したことによるTasteのFaultsになります。
こちらは、Sweaty/Hidy/Horseyに分けられます。
こちらの内容に関しては、The Coffee Cupper’s Handbookにも詳しい説明がありませんね…
Hidyは急激な機械乾燥で発生するとありますが。
Acids Changing Chemicallyは、酸が変質したことによるTasteのFaultsになります。
Fermented/Rioy/Rubberyに分けられます。
Fermentedはいわゆる発酵です。
これが策定された当時は、Washedが主流で、ナチュラルは余り良しとされていない時代でした。そのため発酵はFaultsとされていましたね。
このあたりは、その後の潮流で変わっていると思います。
が、良くない発酵臭はいまでもFaultsだと思います。
Rioyは、コーヒーチェリーが長く木に身を付けたままで居ると、最近が誘導した酸素活性が起こります。この場合にアラビカ種ではRioy(ヨウ素の様)が発生します。
Rubberyは、Rioyのロブスタ種版です。
Loss of Organic Materialは文字通り、有機成分が抜けていく状態になります。
抜けていく度合いに合わせてGrassy/Aged/Woodyに分けられます。
基本的には生豆の貯蔵期間に依存します。
GrassyとAgedの間に、NewCropとPastCropがあります。
という事で。Grassyと言う表現は、本来貯蔵期間が短すぎる場合の用語なのですね…
External Changes/Aroma Taint
こちらは、Aromaの話と思いきや、カテゴリにTaetesの言葉が…このあたりやっぱり綺麗に分解できないのかな?と言う印象です。
ここでは、Fats Absorbing Odors/Fats Absorbing Tastes/Improper Roastingに分けられます。
Fats Absorbing Odorsは、脂肪が外部にある匂いを吸着してしまった状態を表します。
収穫から生豆の貯蔵の期間に発生します。
Earthy/groundy/dirtyに分けられますが、いずれも地面で乾燥させていたりしたときに、土のにおいが吸着したものになります。
Fats Absorbing Tastesは、脂肪分が外部に作用されてTasteに問題が発生している状態を表します。
Musty/Moldy/Baggyに分けられます。
musty/moldyは、乾燥工程で湿度が高くカビのにおいが脂肪に吸着したものになります。
Baggyは、不適当な条件下で長期間保存された焙煎の弱いコーヒーによく見られるTasteになります。(なんか毛色が違うなぁ…)
Improper Roastingは、不適切な焙煎により発生するAromaになります。
Tipped/Scorched/Bakedに分けられます。
Tipped/Scorchedは、高温焙煎で急激に焙煎を行った場合に発生します。
Scorchedの方がより焙煎が進んだ状態になります。
Bakedは、低温長時間焙煎で発生します。
焙煎が進んでいない状態はGreenと呼びます。
まとめ
ざざっと記載して見ましたが、如何でしたでしょうか?
ある程度のフレームワークは分かりましたが、今一つ綺麗に分類できていない(理解できていない)ところもありますね。
なにしろ、最終的には官能評価が大切なので、論理的にいかない側面もあるのかな?と思います。
また、The Coffee Cupper’s Handbookを全部読んだわけでも無いので、Glossaryとかもう一度見直す必要がありそうです。(必要があれば改訂します。)
それから、この知識を基にいまのFlavorWheelを読んでみるのも大切かな?と言う気がしています。(やったら、また書きたいと思います。)
色々不備もある内容だったと思いますが、指摘等がありましたら連絡を頂けると幸いです。