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2024年良かった歌集

2024年良かった本のnoteを書いたのですが、それとは別に今年は突然短歌にハマって歌集を買っては読み漁る1年でした。これまでずっと平安時代とか和歌とか風流なものにふわっと憧れて続けている人生だったのですが、なんで今まで短歌に気が付かなかったんだろう。すごく和歌と地続きの場所にあるものなのに。今年、短歌に触れ、自分でも詠んでみたりしたのが2024年にやったことの中でも最高クラスに良かったことかもしれないです。
というわけで2024年読んで「良かったー!!」という歌集と、その中で1番好きな1首をメモしておきたいなと思います。(選べないけど頑張って選んだ!)
※このnoteは読書メーターへの自身の投稿を元に作成しています。



あなたのための短歌集(木下龍也)

私が短歌にハマったきっかけの本。Xで知ったのですが、これを読んだ時、歌集のみならず「ここ最近で読んだすべての本の中で一番好きかも!」と思いました。依頼者からのメールで届くお題に対して短歌で答えるという試みの中で生まれた短歌たちとのことなのですが、誰かのために書かれた短歌だけど、「私のためでもある」と感じられるものもたくさんあって、じ〜んときたりホロリときたりしました。悩める人たちに少しの毒やおかしみやぬくもりをくれるような短歌が特に好き…。ここから木下龍也さんの短歌のことがめちゃくちゃ好きになり、歌集をたくさん集めることに(今回は代表してこの1冊)。どれも好きなのですが、しいて好きな1首をあげるとしたらこれかな…!(思い起こせばXで初めに見たのはこれだったかも)

絶望もしばらく抱いてやればふと弱みを見せるそのときに刺せ

あなたのための短歌集 木下龍也


サラダ記念日(俵万智)

やっぱり俵万智さんの短歌って最高に良いなって、今になってようやく気づく。子供の頃に授業で習ったはずなのにな…。難しい言葉は一つも使っていなくてわかりやすい内容でも、とびきりおしゃれで万智さんだけの短歌だって思えるんですよね。万智さんの短歌を口に乗せてみると、やっぱり声に出したときの言葉、リズムの美しさも「この短歌、素敵だな」と思う要素の一つなんだって改めて感じました。こういう短歌を私も詠みたい…。

寄せ返す波のしぐさの優しさにいつ言われてもいいさようなら

サラダ記念日 俵万智


えーえんとくちから (笹井 宏之)

書店で見た時からタイトルがどうしても心から離れず、憂鬱な仕事帰りの日に「あーやっぱあの歌集買っておきたい!」という衝動に駆られて書店に駆け込んで買った1冊。静かさと寂しさと薄暗さの中にある優しさ、みたいな雰囲気がすごくいいなあと思いました。

きれいごとばかりの道へたどりつく私でいいと思ってしまう

えーえんとくちから 笹井 宏之


飛び散れ、水たち(近江瞬)

本当にどれも好きな短歌ばっかりでした。日常の風景の中にある寂しさとか温かみとかそんな感情が切り取られているというのを強く強く感じました。短歌って往々にしてそうだと思うのですが、私の中でこの歌集は特にその印象が強い。

飛行機雲の交わる角度求めては遅らせていた夜が来るのを

飛び散れ、水たち 近江瞬


夜を着こなせたなら(山階基)

とにかくどの短歌にもおしゃれなフレーズが含まれていて「この七七の部分は心に刻んでおきたい」みたいなのばかりですごく好みだった…!装丁もとんでもなくおしゃれで、買って良かった1冊でした。(偶然にもサイン本だった。嬉しい。)

頬に雨あたりはじめる風のなか生きているのに慣れるのはいつ

夜を着こなせたなら 山階基


Dance with the invisibles(睦月 都)

まず装丁がとんでもなく美しく、紙のカバーを取ると布張りの本が出てきて感嘆しました。表紙をめくったところに出てくる図も美しく、本当に紙で買って良かった。文語体の短歌たちの数々によって、本一冊が一つの世界観を形成していて、なんだか、日常をアンティークなフィルターを通して眺めたみたいに美しかったです。

爪たてて無花果を割く ほんたうにほしいものなら誰にも言はずに

Dance with the invisibles 睦月 都


願ったり叶わなかったり(宇野なずき)

いつもXで拝見しているのですが、毎日つらい、しんどい、生きづらい、自意識、プライド、劣等感みたいな感じが詰まってて、どれも覚えのある感情ばかり。共感できすぎる。好きすぎる。好きなの多すぎて1つ上げるなんて難しすぎるんですが、ベタにXで見て大好きだったこれが好き。

僕だけがインターネットの亡霊で他のみんなは居酒屋にいる

願ったり叶わなかったり 宇野なずき


太陽帆線(中村 森)

ああこの歌集も大好きな短歌ばかりだった。わかりやすくも心に刺さる言葉が多くて、好きな一首を選びきれない。

「忘れて」と「覚えていて」の後悔を 海に置いたらどちらが沈む

太陽帆線 中村  森


死のやわらかい(鳥さんの瞼)

めっっっっちゃインターネット。ネットスラングの混ざった短歌も多くて馴染む馴染む。薄暗いインターネットの海に漂ってる、生きづらい系の人間にとってどれもこれも刺さる短歌ばかりでした。特に労働しんどい系のやつ………。

頑張ればまだ書けるペンを捨てるとき会社の気持ちもすこしわかるよ

死のやわらかい 鳥さんの瞼


花は泡、そこにいたって会いたいよ(初谷むい)

このタイトルが可愛くて、ずっと脳にこびりついて離れなかったから絶対読みたかった歌集。どれも可愛い短歌ばかりで良かった…。

サンダルで海を蹴飛ばす 弱ければ愛されるって思ってごめん

花は泡、そこにいたって会いたいよ 初谷むい


ドラえもん短歌(選・枡野浩一)

下記に挙げた短歌に惹かれて読んだのですが、どれも良かった…。これこそ後述の推し短歌の醍醐味が詰まっている気がする!と思いました。あとがきもめっちゃ良かった…。

ドラえもん話を聞いてそばにいてひみつ道具は出さなくていい

ドラえもん短歌  麦ちよこ


推し短歌入門(榊原紘)

自分でも短歌を詠んでみたくて色々指南書も読んでみたのですが、中でも自分のニーズにあっており、やる気を奮い立たせてくれたのがこちら。これを読んでからというもの、触発されて拙いながらも推しキャラの短歌を詠んでいる日々です。

ということで、2024年良かった歌集リストでした!挙げきれてない気もしますし、1冊1首なんてのも足りなくて、ここに書いた以上にたくさんの好きな短歌に出会えて嬉しかったです。歌集って本当に装丁が素敵なものばかりで、ついつい紙の本を買っちゃうし、並べて眺めても素敵で買って良かった!となるものばかりでした。
これからもっと自分でも短歌を詠んでいけるようになりたいし、あわよくばコピー本とかで自分の歌集とかも作ってみたいななんて夢見てしまいますね…。

最後に今年自分で詠んだ短歌の中でお気に入りのを1首…。

ふるさとで死なせてやろうと連れてきたきみの土産の東京ばな奈

(たぶん初めて詠んだ短歌。東京旅行に行く前日に東京から来た友達が東京ばな奈をくれたので東京旅行に持って行って食べたときに詠んだ。)

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