早稲田合格へのロードマップ【STEP9:早稲田大学の出願学部ガイド】
はじめに
この記事では、「早稲田合格へのロードマップ」の【STEP9:早稲田大学の出願学部ガイド】について詳しく解説します。
前回の記事はこちらをご覧ください。
1. 出願学部選定の重要性
1-1. 早稲田大学の難易度
早稲田大学は慶應義塾大学と並ぶ私大最難関大学です。以下の記事ではその難易度をより具体的にイメージするべく、3つの視点から考察しました。
「2. 東大・京大合格者の併願成功率」では、東大・京大に合格する高学力層であっても、早稲田に不合格になる可能性があることを示しました。その理由としては、単純に国立の二次試験と早稲田の一般入試の競技性における違いもありますが、早稲田の出願学部の選定ミスも一要因として考えられます。事実、東大・京大など国立志望者に限定されず、早稲田受験者の大部分を占める私文専願者も同様に、早稲田合格相当の学力があるにもかかわらず、出願学部の選定を誤ったがゆえに、早稲田に不合格になるケースは数多く存在しています。
実力不足で早稲田に不合格になるのは諦めがつきますが、せっかく合格レベルの学力を身に付けたにもかかわらず、出願戦略のミスで合格を逃してしますのは非常にもったいないことです。したがって、出願学部の選定は、学力と同程度の価値を持つほど重要な要素であると考えています。
1-2. 出願学部は戦略的に
多くの早稲田受験生は、出願学部の選定をそれほど重要視せず、漠然としたイメージや何となくの志望度で決めてしまう傾向があります。
特に、早稲田を滑り止めにできるほど学力の高い受験生は、このような選び方でも問題ない場合がありますが、そのような受験生は早稲田受験生全体の約2割に過ぎません。したがって、残りの8割の受験生にとっては、戦略的に出願学部を選ぶことが合格のカギとなります。
出願学部を選ぶ際、全ての早稲田受験生に共通して持っていただきたい姿勢は「大胆かつ細心に」です。ここでいう「大胆さ」とは、自分が一番行きたい学部を目指す強い意志を持つことです。一方で「慎重さ」とは、合格の可能性を最大化するために、綿密な戦略に基づいて学部を選択することを意味します。早稲田に合格するためには、この「大胆さ」と「細心さ」の両方が必要です。どちらか一方だけでは、合格は難しいでしょう。
ここでは、早稲田大学の合格可能性を最大化するための4つの受験戦略をご紹介します。これらは、特に従来型入試をメインで受験する方に向けた内容です。
2. 合格可能性を最大化する4つの戦略
戦略1:教育の穴場学科を受験する
第1の戦略は、「教育学部の穴場学科を狙う」というものです。教育学部は、従来型の入試方式を採用している学部の中で、出願時に学科・専攻・専修の選択が必要な唯一の学部です。受験生は、学科や専攻の併願ができないため、出願時に1つの学科・専攻・専修を選択しなければなりません。文系は9つの学科・専攻・専修に分かれているため、受験生がそれぞれの学科に分散し、合格最低点や倍率も異なります。その結果、合格最低点が低く、穴場となる学科や専攻が生じることがあります。特に「生涯教育学専修」や「初等教育学専攻」は、その傾向が見られます。
教育学部の穴場学科は、従来型の学部(法・商・教育・文・文構)の中でも受験者のレベルが比較的低く、合格の可能性が高い学科です。2024年度入試以前では、人間科学部やスポーツ科学部が最も合格しやすい学部とされていましたが、共通テスト併用型に移行したことで状況が一変しました。スポーツ科学部は依然として合格しやすい学部の一つですが、共通テストのボーダーが約75%とされており、挑戦できる受験生は限られます。したがって、共通テストを考慮しなくてよい従来型入試においては、教育学部の穴場学科が現時点で最も早稲田に入りやすい選択肢となり、受験戦略の重要な要素となります。特に「初等教育学専攻」や「生涯教育学専修」を選択することで、合格の可能性を最大限に高めることができます。
もちろん、英語や国語に強みがある場合は、穴場学科ではなく、英語英文学科や複合文化学科、国語国文学科といった、英語や国語の得点が1.5倍に傾斜配点される学科を選択することも一つの戦略です。ただし、英語英文学科や複合文化学科は、国際教養学部や文学部・文化構想学部の受験生が併願する傾向にあり、受験者のレベルが高くなる傾向があります。同様に、国語国文学科も文学部・文化構想学部の受験生が併願するため、穴場学科と比較して入試難易度は数段高いと考えておきましょう。教育学部の学科選択の詳細については、以下の記事をご覧ください。
早稲田における1点の価値
早稲田大学の教育学部では、均等配点学科(英語英文・複合文化・国語国文以外)の中で、最も合格最低点の高い学科と低い学科(いわゆる「穴場」)の間には、例年約4-5点の差があります。2024年度では、地理歴史専修が96.865点で最も高く、公共市民学専修が92.292点で最も低く、その差は「4.573点」でした。競争の激しい早稲田の入試において、この得点差は非常に大きな意味を持ちます。
常、他大学では合格最低点は小数点以下を表示しませんが、早稲田では小数点第3位まで表示されます。つまり、1点どころか「0.5点や0.1点」の差で合格を逃す可能性があるということです。実際、こうした僅差で不合格になる受験生が早稲田には多く存在します。
教育学部の文系学科には約1万人の受験生が集まるため、学科選択を戦略的に行い、穴場学科に出願していれば、早稲田に合格していた受験生は毎年数百人規模で存在するはずです。
戦略2:教育を含め3学部以上受験する
第2の戦略は、「教育を含め3学部以上受験する」ことです。東大や一橋などの最難関国立志望者や私文のトップ層を除き、早稲田の入試では特定の学部を選り好みするのは難しいのが現実です。したがって、早稲田入試では、複数学部を受験し、「合格した学部に進学する」というのが基本的な姿勢になります。
先述の通り、教育学部の穴場学科は受験者のレベルの観点から、早稲田の従来型入試の中で最も合格可能性が高い学部です。一方で、他の「法・商・文・文構」の4学部は、教育学部よりも一段階、二段階難易度が高いです。しかし、競争の激しい早稲田入試では、偏差値だけでなく、問題との相性や当日の運次第で合否が決まることも少なくありません。たとえば、ほぼ同じ受験者層が挑む文構学部に合格し、文学部に不合格となる、あるいは、かつては人間科学部に不合格でありながら、より難関の法学部や社会科学部に合格するといったケースはよく見られました。
したがって、早稲田の入試では学部にこだわらず、「できるだけ多くの学部を受験すること」が合格の可能性を広げる鍵となります。可能な限り多くの学部を受けることで、場慣れするという点でも有利に働きます。具体的には、最も合格可能性が高い教育学部に加え、他の従来型入試の「法・商・文・文構」から2学部以上を選択し、合計で「3学部以上」を受験することが、早稲田入試の定石となります。より詳細な出願パターンについては、後述させていただきます。
戦略3:文・文構志望者は英語4技能テスト利用方式を併願する
第3の戦略は、文学部・文化構想学部の「一般選抜」と「英語4技能テスト利用方式」を併願することです。文学部・文化構想学部には、「一般選抜」「英語4技能テスト利用方式」「共通テスト利用」の3つの入試方式があります(以下、「一般」「4技能」「共テ」)。これらの方式は、それぞれ定員や試験科目が異なり、独立した入試方式であるため、3つすべてを併願することが可能です。また、それぞれの方式で個別に合否が判定されます。「共テ」は国立志望者や数学選択者向けの入試方式であり、多くの受験生にとっては対象外ですが、「4技能」の出願資格である「英検スコア2200以上」は、早稲田を目指す多くの受験生にとってハードルが低く、出願しやすいのが特徴です。
4技能の出願資格である英検スコア2200(2級ハイスコア)は、比較的簡単に条件を満たせます。文学部・文化構想学部を第一志望とする場合、4技能に出願するためだけにスコア2200を取得する価値があると言えます。また、2級ではなく準1級(スコア2304以上)を取得できれば、立教大学の共通テスト利用入試では英語が85%以上、上智大学では90%に換算されるため、私立文系入試の戦略として大きなメリットがあります。したがって、準1級合格を目指しつつ、文学部・文化構想学部の4技能の出願資格であるスコア2200を満たすことを目標にするのが良いでしょう。
一般&4技能併願によるリスクヘッジ
「一般」と「4技能」を併願することで、英語の成績が振るわなかった場合のリスクを軽減できます。例えば、一般入試で合格するには、英語・国語・選択科目の3科目で受験者平均点+20%を得る必要がありますが、いずれか1科目でも基準を下回ると合格は難しくなります。しかし、4技能を併願していれば、仮に英語で失敗しても、国語と選択科目の2科目が合格点を超えていれば合格が可能です。実際に、一般入試で不合格となったものの、4技能で合格したケースもあります。4技能は一般入試に比べて国語が重要になるため、国語が得意な場合は4技能の併願が有利です。
結論:文・文構の一般&4技能の計4方式を受験
私立文系専願者で文学部・文化構想学部を受験する場合、最適な戦略は「文・文構の一般&4技能」の計4方式を受験することです。これにより、合格の可能性を最大限に高めることができます。国立大学を志望する受験生は、共通テスト利用方式を含めた全3方式を併願するのが最適です。複数方式を受験することにはデメリットがないため、可能な限り多くの方式に出願することを基本戦略とすることをおすすめします。
戦略4:共テ75%の場合、スポ科を受験する
第4の戦略は、「共通テストで75%以上を取得した場合、スポーツ科学部を受験する」というものです。2021年度以降、早稲田大学では共通テスト+個別試験の「共通テスト併用型」を採用する学部が登場し、2025年度入試では以下の5学部がこの方式を採用します。
共通テスト併用型の学部は、一般的に共通テストのボーダーが高く、約85%とハードルが非常に高いですが、スポーツ科学部だけは例年70%台後半となっています。また、個別試験の「総合問題」は簡単な資料分析と小論文で構成されており、対策の負担が少ない点も特徴です。
さらに、スポーツ科学部の共通テスト科目は「英語」+「国語または数学IA」の2科目のみで、早稲田の文系学部で唯一、選択科目なしで英語と国語のみで受験が可能な学部です。共通テストと総合問題の配点比率が「2:1」と、共通テストが重視されるため、共通テストで75%以上の得点を取得した場合は、積極的に出願を検討すべき学部です。
とはいえ、スポーツ科学部は早稲田の文系学部の中でも特殊な学部であり、入試のハードルが低いとはいえ、入学後のことを考えると受験をためらう方も多いかもしれません。しかし、早稲田大学では2年次から転部が可能であり、文学部や文化構想学部は毎年転部生を募集しています。したがって、「1年次はスポーツ科学部に在籍し、2年次から文学部や文化構想学部に転部する」という選択肢も視野に入れて、スポーツ科学部の受験を検討していただければと思います。
3. 推奨する出願パターン
学部選択のパターンは多岐にわたりますが、概ね以下の4つのパターンに大別できます。自分の学力や志望度に合わせて、最適なパターンを選んでカスタマイズしてみてください。
①【基本】:教育(穴場)+2-4学部=計3-5学部
教育学部の穴場学科に加えて、2~4学部を受験するパターンです。計3学部が最も対策がしやすく、おすすめです。対策に余裕がある場合は、従来型の5学部をすべて受験することも可能です。
②【英語得意】:教育(英語英文)+2-4学部=計3-5学部
英語が得意な場合は、教育学部の穴場学科ではなく、英語の得点が1.5倍になる英語英文学科を選ぶことができます。複合文化学科も同様の傾斜配点がありますが、合格最低点が英語英文よりも高い年度もあるため、特にこだわりがなければ英語英文学科を推奨します。英語が得意でも安全策を取りたい場合は、穴場学科への出願を検討してください。
③【英語苦手&国語得意】:教育(国語国文)+文・文構(4技能)=計3学部
英語が苦手で国語が得意な場合、教育学部の国語国文学科と文・文構の4技能方式を受験するという選択肢あります。文・文構の4技能では英語が免除されるため、国語の強みを最大限に生かせます。英語がそれほど不得意でない場合、文・文構の一般選抜も併願することが可能です。また、商学部は国語が易しく、配点比率も低いため、候補に入れるのも良い選択です。
④【共テ75%以上】:①②③+スポ科=計4-7学部
共通テストで「英語」+「国語または数学IA」で75%以上を取得した場合、スポーツ科学部を追加する選択肢が浮上します。
おわりに
【STEP9:早稲田大学の出願学部ガイド】では、早稲田大学の学部出願方針について解説してきました。早稲田大学は慶應義塾大学と並ぶ私大最難関校であり、近年は総合型選抜や学校内選抜の増枠に伴い、一般入試の枠が減少しています。そのため、合格を勝ち取るためには、慎重な学部選択と戦略的な出願がますます重要になっています。
この記事でご紹介した戦略や出願パターンが、早稲田大学を目指す皆さんの参考となり、最適な選択をサポートできれば幸いです。皆さんの健闘を心よりお祈りしています。
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