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ミリオンダラー・ベイビー『この映画は自分自身を見つめるための鏡』映画感想

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作品名:ミリオンダラー・ベイビー
評価:5/5
放映日:2004/12/15(日本2005/05/28)
監督:クリント・イーストウッド
主演:クリント・イーストウッド
  :ヒラリー・スワンク

ミリオンダラー・ベイビーを見ました。
噂には聞いていたこの作品、実際に見ると本当に心に刺さる作品で見終わったあとエンドロールで放心状態になりました。
深く考えさせられるストーリーもですが、最後の結末に向けて積み木のように要素を積み重ねていく構成が見事。
16年前の作品で作中設定は更に昔なのに、画面に時代を感じても、まったく古臭さを感じないから凄い、名作です。
本当にオススメできる作品なので未視聴の方はぜひ、見てみてください。
これ以上語るとネタバレになるので感想は最後に。





というわけで以下本編感想、ネタバレ注意。





試合最中止血パートからスタート。
”これは尊厳のスポーツ” ”人の尊厳を奪い―” ”それを自分のものとする”
冒頭の語りが、二回目の視聴だとより考えさせられる。
三位一体について神父に問うフランキー。
三位一体といえばキリスト教では子供でも常識のように知られていて、かつ学者でも厳密に説明することが出来ない問題。
それをわざわざ神父に問い詰めることで、フランキーの
「俺はニガーを差別しないぜ」とか言い出すデンジャー。
もうその台詞だけでぶん殴られても文句言えないのでは?

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マギー登場。
「手首を折る前に早く止めたほうがいい」って台詞がユニーク。
追い返せって言ったのに、半年分の月謝もらってるのがわかったらスクラップに怒るフランキーがひどい。
というか作中でフランキーがスクラップの名前を呼ぶシーンが無い?
住み込みで働いてるからサンドバック叩いてたらうるさいだろうに、嫌な顔ひとつせず快諾するスクラップが優しい。
マネージャーを変えるというウィリー。
スクラップにあんたはウィリーを抑えすぎたって言われて怒るフランキー。
その原因がスクラップの失明にあるのが、二人の関係を難しくしてるよね。

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小銭をじゃらじゃらっと出されて凄く嫌な顔をする店員と、笑顔のマギーの対比に笑う。
フランキーがチーズバーガーを差し入れて、フランキーの世界戦の感想を語りながら昔話で仲直り。
年の話をされてキレるマギー。
しかし本当に人の話を聞かないな!

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ミリオンダラー(100万ドル)でタイトル回収。
フランキーがトレーニングを初めたら段々本物のボクサーっぽくなってく演技が凄いな。
家族の話題を出した時のスクラップの(やべーぞ……)って顔がちょっとおもしろい。
そのあとに「それでどうなの? いつ試合を?」って言える根性が凄いわ。
まあ逆鱗に触れるんだけど。

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マギーがボコボコにされるのを見ながらnice night.(いい夜だ)って皮肉が効きすぎてる。
思わず飛び出すフランキー。

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酷いことを言われたのに、結局許しちゃうのがフランキーの魅力であり欠点でもあるかな。
大声で作戦会議してると相手に聞こえそうだなんてツッコミは野暮かな。
試合後、「復習だ もう一度ルールを」。

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"自分を守る"
ナレーション「ボクサーは皆 頑固者だ」「間違ったことを信じ込んでいてて―それが自滅を招くことでも―それを最後まで信じ続けるのが真のボクサーだ」
無原罪懐胎の話を神父に聞こうとして無視されるフランキー。
丁寧に積み重ねた二人の関係が、最後の結末に繋がる構成が本当に見事で俺は死ぬ。
連戦連勝のノックアウト。
片付けた椅子を即ノックアウトで呆れたように戻すフランキーがかわいい。
初の6ラウンド試合は苦戦。KOは第1ラウンドの最後だった。
分かりづらいけど6ラウンド試合っていうのは戦績が上がってくとラウンド数が伸びていって、4→6ラウンドの試合になるってことかな。
折れてる鼻を治すのマジ痛そう…。
青い熊の反則酷すぎて当時でも普通に失格くらいそう。
「顔の防御が甘いボクサーは試合だって取りにくい」ってスクラップの目とマギーの鼻でトラウマ酷くなってる。
スクラップの「俺は意地でも勝ってみせたかった」っていうのはフランキーへの思いかな。
止めるべきだったと公開してるフランキーともっと戦いたかったと望んでいるスクラップの噛み合わない気持ちが切ない。

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英国チャンピオンへの挑戦に喜ぶマギーとビデオデッキが無いことに呆れるフランキーの対比に笑う。
この辺からもうお互いにパートナーとして信頼し合ってる空気が凄く柔らかい。
「彼女は その夜―メイン・イベントじゃなかった」「だが その夜の客の頭には彼女だけが記憶に残った」ってナレーションめちゃくちゃかっこいいな。
親に家を買ったことを嬉しそうに報告するマギーと、それを笑顔で返すフランキー。
実際に報告した時のクソ親の落差が辛い。
マギーの父親が犬を山に連れて行って処分してきた話。
この辺も最後の決断に影響してるんだろうなあ。
二人で食べるレモンパイ。
青い熊ビリーと100万ドル折半の試合が決定。

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往復の方法を聞かれて嬉しそうに答えるマギー。
質問はするなと最初に決めたフランキーから変わってる二人の関係。
リングでリンチされるデンジャー。
「110回目だ!」
ワンパンでノックアウトするスクラップが格好いい。
でも素手は殴った方も殴られた方も本当に痛そうだ。
反則連発からのゴング無視しての不意打ちはルール違反以前に殺人罪だろ…。
話の本題ではないってことなんだろうけど青い熊がどういう処分されたのが語られないのが納得いかない。

病室で、喉から伸びる管が痛々しすぎる…。
マギーの掠れる声の演技が辛い辛すぎる。

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責任転嫁と現実逃避するフランキーに、何も言えない二人がおつらい。
献身的なフランキーと明るく振る舞おうとするマギーが更に見てて辛くなってくる。
クソ親再登場。
せめてあの家族がクソでなければ結末も変わったのかなぁ……。

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「でも生かすことは 殺すことだ」「この矛盾を どう解決すれば?」
神父に向かって教えの矛盾を質問していたフランキーが投げかけた問い。
それに真摯に答える神父。
今まで質問していたフランキーが自分の中に問題を抱えていることに気付いていたんだろうね。
一連のクリントイーストウッドの演技が凄すぎる。

「お前のせいだと言ったがあれは間違いだった」
「当たり前だ」「俺が見つけ―あんたが彼女を育てた」

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同じボクサーとしてマギーの気持ちを伝えるスクラップ。
それを聞いてフランキーはついに覚悟を決める。
モ・クシュラの意味を伝えるフランキー。

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それを聞いて微笑み、最期に涙を流すマギー。

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止血屋が、最後に苦しまないようにアドレナリンを注射する皮肉。
本当に、この結末に二時間の全てを積み重ねるような映画だった。
フランキーが結局戻ってこないのは、同じことを繰り返すのに疲れたからか。
カトリックでは大罪で、警察にも逮捕されるであろう自殺の幇助をしたこと、その結末をあえて書かないことによって、見ている側に純粋にあの決断の是非を問われているような気がする。
レモンパイを食べる姿が本当にフランキーなのか、汚れたガラスでしっかりと見えない演出が、スクラップの甘い願望って独白とかかってるのかな。


最後に、
生きること、死ぬことについて考えさせられるこの作品。
主演の二人の名演が光り、自分がお互いの立場になったらどうするかと、深く考えさせられます。
本人が誰にも譲らない意思の強さと頑固さを持っているから、フランキーとスクラップの協力を得て栄光を掴めたマギー。
だからこそ、栄光を胸に死ぬことしか選べなかった彼女の決断。
神への問いは答えられず、最後は信じる宗教への大罪を犯してまで自ら手をくだすフランキー。
もちろんマギーの怪我については辛く悲しい出来事ではあるんですが、最後の決断に救いを感じたのは私だけでしょうか。
最後の行いを善とも悪とも表現せず、観る人の感性に委ねるこの映画は、観る人を映し、その姿を見つめて考えさせる鏡なんだと、私は感じました。

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