お伽話 【魔王と魔女②】

そんなある日、魔王は革新的で恐れを知らぬ
広い世界観を持つ魔女に出会いました。
この魔女もまた、魔王の魔術に興味を持ち
その魔術を知りたいと魔王に会いに来たのでした。

魔王は、魔女のエネルギーを感じ、
今まで出会ったことがないタイプの女性だと思いました。
そして、魔女の持つ広大なビジョンに触れ
今までの自分がとても退屈していたこと
この王国が成し遂げたものは古い考えに基づくのだということ
魔女の持つ考えはこれからの新しい時代に
必要なエッセンスであることに気がつきました。

魔王は、久しぶりにワクワクしました。
新しいビジョンを持つことはとても刺激的でした。
しかも、魔女からは、今まで簡単に手に落ちてきた女性たちとは
全く違う魅力を感じました。

魔王は、魔女を自分のものにしたいと強く思いました。
自分の王国をもっと大きくするために
この魔女との契りを交わしたいと思いました。
そして、この魔女が他のどこにも行かないように仕向けました。

恐れを知らぬ魔女には唯一弱点がありました。
「自分と同じ世界観を持つパートナーに出会えない」
という信じ込みとそれに伴う寂しさ。
これが魔女の弱点でした。

この弱点を、魔王はすぐに見抜きました。
魔王は、我がものにしたい存在の弱点を見抜くのが
天才的に上手いのです。
そこで魔王は、魔女のその寂しさを完全には消さないで
その寂しさの感情を利用して、自分に心酔させようとしました。
もちろん、魔女には内緒です。

魔王は、魔女の持つ壮大なビジョンに惹かれましたが
同時に、この魔女が自分の王国のために働くことに興味もないと
いうことにも気がついていました。
なぜなら、魔女の持つビジョンと王が作り上げた国のビジョンは
まるで違うものでしたし、魔女は枠のために働くという概念がなく
誰かのために貢献したいとも思わないのです。
それほど、この魔女は自由で囚われることがない人物でした。

王は、攻略しがいのある魔女に対して
まずは「自分こそがあなたの唯一無二の存在だ。」
と思わせることにしました。

孤独な魔女は、今まで誰にも理解されなかった
自分のビジョンを理解する魔王に心を開きました。
(もちろん、魔王は、理解をしたフリなのですけどね。)
そして、魔女は魔王を信頼しました。

が、時々おかしなことに気がつきました。
魔女は、「本来の安堵感」というものを持ち前のセンスで
嗅ぎ分ける能力があります。
孤独な魔女は、孤独故に、自分自身の真の安堵感の部分に
アクセスすることができました。
それほど深く、自己の中心部に入ることができたのです。

しかし、魔王と交流すると、なぜか軸がぶれ、
本来の安堵感からかけ離れる感覚を何度も何度も持ちます。
その度に自分自身の中枢の部分へアクセスし
安堵感を取り戻しました。

魔女が安堵感を取り戻すと
魔王はすぐにそれを見抜きます。
魔王は、他者の感情が大きくブレることが大好物です。
不安感をベースに自分に依存する人がいることが生きがいなのです。
ですので、相手から不安感がなくなったタイミングを見抜くのも
異様に早いのです。
魔王は、魔女の心が整うと、魔女がどこにいても
すぐに気がつきました。
その度に、魔王は(遠方にいても)魔女の孤独感を揺さぶり、
魔王に頼るように仕向けました。

魔女は、なぜ、初めて話のわかる男性に会ったのに
こんなに不安感に苛まれるのかと不思議に思いました。
魔女は、魔王がそれをしてるとは思いもよりませんでしたが
魔王が根源的な安心感を持っていないことはわかってきました。

魔王は本気です。
今までは数ヶ月で結果が出たものが
なんヶ月経っても結果が出ない。
次第に焦ってきました。

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