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「松の廊下」の実況中継

前触れのない自語りをすると、ぼくはラジオが好きで。
仕事がラジオを聴ける環境だというのも手伝って、ほぼ毎日10時間くらいは聴いている。

好きな番組はまあいろいろあるのだけど、その中の一つが、「伊集院光の百年ラヂオ」という番組。

これは、NHKのアーカイブに残っている昔のNHKラジオの録音を、あれこれ引っ張り出して聴いてみましょう、という番組。
実はラジオは国内の放送開始から2025年でちょうど百年を迎えるらしく、要は100年前から今日までの、それこそ戦前戦後の生々しい音声なんかも聴けたりして、これがたいへん面白い。
そもそも昔は「アーカイブを残そう」なんて発想自体がないから、全部が残ってるわけではないけれど、それでも偶然残った半世紀以上前の音源が令和に聴けると言うので、毎週楽しみな次第。

番組が始まってから既に1年半以上経っているので、それなりに多くの回を重ねているのだけど、その中でも印象深いのは、すでに故人になった森繁久彌さんの若かりし頃の肉声や、もはや教科書の人である山田耕筰と当時の女学生の対談、いまも継続している「みんなのうた」がともすれば戦争の鼓舞に使われていた頃の音源だったりかな。
現代の価値観と全く違うものがまかり通っていた時代の空気がひしひしと伝わってきて面白い。自分の父母もしくは祖父母よりも先輩方が聴いていたものと同じものを聴いている、というだけで不思議な気持ちになるラジオなんだよな。

今週(2024.11.17)の回が、『架空実況放送【松の廊下 】』という、1963年(昭和38年)に放送されたラジオドラマを聴く、という回だった。言わずとしれた、あの忠臣蔵の物語の発端になった出来事である。
もし、あの松の廊下にNHKアナウンサーがいて現地から実況をしていたら?という、普通に面白そうな内容である。そして実際面白かった。
緊迫した場面にNHKのクソ真面目な実況というミスマッチ、ちょうどシン・ゴジラで政府が緊急事態にも関わらずお役所仕事に追われるあの様を感じられるようでよく作り込まれていた。

60年以上前の音源だけど、「音だけで伝えないといけない」「うるさすぎないようにしないといけない」の匙加減が絶妙なので、ラジオドラマとか歴史すきだったら、古臭さも含めて楽しめると思うな。
23日くらいまで聴き逃し配信で聴けるはず。アプリとか登録もいらず、ブラウザからそのまま再生できるので、ぜひに。

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