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2020.09.06_モリゼミオープンレクチャー(サン・セバスチャン)
今日は、モリゼミのオープンレクチャーvol.4「スペイン・バスク地方の小さなまちがなぜ美食世界一になれたのか 〜サン・セバスチャンから学ぶ意識ある小さな行動が生み出した美食文化〜」
サン・セバスチャン=美食というイメージは以前から持っていましたが、「なぜサン・セバスチャンが美食のまちになれたのか」について今回学ぶことができました。
1800年代に、家庭でキッチンに立たせてもらえない男たちが「美食倶楽部」を立ち上げて趣味で料理を楽しんでいた段階から、「ヌエバ・コッシーナ(新バスク料理運動)」という活動や「レシピのオープンソース化」によって「美食」という産業に発展し、文化となり、観光資源となっていく一連の流れは圧巻でした。
「レシピのオープンソース化」では、「技術は目で盗む」業界において、自分たちの技術や手法を教え合うことで地域全体のレベルを底上げしたわけですが、1980年代にナレッジやノウハウをシェアするという発想をされたという事実に驚きました。
私のレストランだけが繁盛し続けるのは難しい。
しかし、サン・セバスチャン全体のレストランの質が上がり、繁盛し、お客さんを分け合えば、いいだけだ。
「ヌエバ・コッシーナ」の牽引者でもあるルイス・イリサールさんの言葉は、まさに「競争」より「共創」の精神だと感じました。
そして、1992年にはルイス・イリサールさんが料理学校を開校し「料理を学び合う文化」を根付かせたほか、1999年に世界で初めて開催した国際料理学会は、20周年を迎え、「料理のパリコレ」と呼ばれるほどのイベントになっているなど、サン・セバスチャンの取組の凄いところは、美食倶楽部に始まった「もっと料理を楽しみたい」という素朴な思いが、革新的なシェフによって少しずつ広がり、大きなうねりになっていったという点だと思います。
そして、2006年になると、行政が「美食文化」に着目し、観光戦略を打ち出しますが、ここでの、サン・セバスチャン市観光局のスタンスは、
ただ観光客を増やせばいいわけではありません。
地域の文化を、地域住民とともに守りつつ、そこにある時間やものの価値を正しく理解してくれる質の高い観光が必要です。
という言葉に表れています。
得てして行政は「観光客数」や「観光消費」を重視するあまり、そこで育まれてきた文化や住民の思いを置き去りにしてしまいがちなので、質の高い観光を目指すサン・セバスチャンの考え方は、私たちも大切にしなければならないと改めて感じました。
そして、今日の講義の最後に森先生から示していただいた「サン・セバスチャン構想を日本で考える際のポイント」が以下の6点。
1.伝統食に対して新しい手法や素材を取り入れる
2.料理人や作り手を中心に、料理を楽しむ開かれたコミュニティを構築する
3.年齢や分野に関係なくお互いに教えあい学び合う
4.研究発表できる学会や大学のような学術的な場を作る
5.テクノロジーと融合させ、発展的継承を試みる
6.メディアを巻き込み、地域ブランドを生み出す
このポイントは、「食」だけでなく「伝統産業」や「まちづくり」など様々な分野にも当てはまるので、仕事やプライベートで活動していく際に念頭に入れておくよう心がけたいと思いました。
そして、サン・セバスチャンの取組から「思いを持って起こした行動は、たとえ最初は小さなものだったとしても、その思いをしっかりと繋いでいくことで大きな動きになっていく」ということを学ぶことができたので、10年、20年先の未来のために自分が今起こせる小さなアクションがないか考えてみようと思います。