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自分のこと呪術士だと思ってる幻術士 その11 〜初めてのダンジョン後編〜
!ネタバレ注意!
「こんな所にクァールが何故⁉︎」
クァール、という名に聞き覚えがあったのはベンの方だった。
「ここらの海賊が飼っていたと聞いたことがある。ここに海賊がいる可能性がより濃厚になったな」
リムサ・ロミンサ近辺を根城とする海賊は、商人から狼犬を買い付けては手懐けていたらしい。そのうちもっと強い動物が欲しくなった海賊は、珍しい大型の肉食獣・クァールに目をつけた……と、ベンに教えてくれたのはリムサ・ロミンサの治安維持隊、イエロージャケットの一人だった。
狼犬と違って人に馴れづらく飼育の困難なクァールは多くの海賊に匙を投げられ、そのまま陸に放たれてしまったらしい。結果、野生化した一部の狼犬とクァールが街の外でいがみ合い、市民に危害が及ぶこともしばしばだったという。
「クァールはほぼ野生化したと聞いていたが……こいつは忠に篤いタイプらしい。なぁ、お前のご主人は何処にいる?」
ベンが大声でクァールの注意をひく。クァールは返事の代わりに鉤爪を振りかぶり、ベンに襲いかかった。
コウモリの群れとは違い、一匹だけなら攻撃もいなしやすい。ベハティの強力な風魔法と大地の力も相まって、二人は手早くクァールを倒すことができた。
「倒したはいいものの、これで終わりか……。ふぅ〜………っととと うわっ⁉︎」
一息ついて岩壁に寄りかかったベハティが急によろけた。バランスを崩したのだ。予期せぬところで、右の踵だけが深く沈み込む感覚がした。まるで、自分の足が何かを地面に押し込んだような……。
「ベハティ!」
焦りの滲んだ声が、岩壁の向こうから飛んでくる。地面に尻餅をついたベハティは、いままで自分の背後にあった岩壁が目の前に移動したことに驚いていた。それに、ベンがいない。
「な、なんで?」
「ベハティ! 大丈夫か!?」
強い力で数回岩壁を叩くような音が続く。おそらくベンは岩壁の向こうだ。つまり自分は、先ほどまで寄りかかっていた岩壁の向こう側にいる……ということだろうか。しかし、何故?
すると突然目の前の岩壁が横滑りし、視界が開けると目の前に現れたのはベンだった。かなりの勢いで突っ込んできたらしく、目前にいたベハティを慌てて避けようとしている。
ベンがベハティの横に跪いたのと同時に、岩壁が閉じた。
「隠し扉か」
「何で急に作動したんじゃ?」
「赤い珊瑚の裏に、岩に偽装したスイッチがあった。君が足でそれを押し込んだから岩壁が開いたんだろう。まったく素晴らしい技術力だな。海賊にしておくには惜しいよ」
「ってことは、さっきのクァール……やっぱり飼われてたんじゃね」
ベンは頷くと、岩壁の周囲を睨みつける。彼は身を低くして岩壁を開くスイッチを探していたが、生憎と今いる側から開ける手段は見つからない。どこかに別の出口があるのだろう。隠し扉という性質上、うっかり者の誤操作を防ぐため、入る時よりも複雑な手順で開ける仕組みになっている可能性もある。
「ベハティ、これは君の大手柄だ。イエロージャケットには特別褒賞を用意してもらわんとな。さ、出口を探すか」
「ま、わし優秀じゃし!……ん?ねぇベン見てあれ!赤い布巻いた犬じゃよ!かわえ〜!」
ベハティの声に従って見ると、確かに目の前の犬たちは皆一様に赤いスカーフを巻いている。耳の近くまで裂けた大きな口から涎を垂らして唸り声をあげる狼犬が「かわえ〜」かどうかは評価が分かれるところだが、何者かに飼育されていることは事実のようだった。
「ずいぶんと可愛がられているようだが、お前たちの主人は……おっと」
洞窟の奥からバタバタとあわただしい足音が聞こえ、男が二人姿を現した。
「お前! 何処から入った!?」
「入口が開いてたんでね」
ベンは少しだけ首をかしげてそう言った。やはり海賊はここにいた。岩壁に偽装した扉の奥で、サハギン族と取引をしていたに違いない。二人を見つけたのは巡回の海賊だろう。ベハティとベンは息を合わせて海賊と狼犬を手早く気絶させ、乱雑に積み上げられた木箱や酒瓶で出来た山の中に放り込んだ。今はとにかく、脱出することが先決だ。
「海には海賊がおって海賊は宝を沢山抱え込んでおるものって、わし知っとるんじゃ!ピッカピカのチャリッチャリの金貨の山なんかあったりして。……ん⁉︎」
扉の蝶番側の隙間から中を確認したベハティが何やら騒がしい。何かに気付いて扉を開けようとする。
「ベン、ここ、ゴールドソーサーみたいにキラキラしたのがある!開けてくれ!んぎぎ」
扉には「船長室」と書かれたプレートが提げられている。ベハティをたしなめ、慎重に扉を開く。中には宝箱に入ったたくさんの宝飾品や武器、甲冑が小さな山になっていた。壁に取り付けられた照明の光を反射して、きらきらと輝くそれは、人の所有欲を煽り立てる輝きだった。
「全部持って帰りたい!賊から奪っても罪にはならんよね?」
「罪にはならんが、元の持ち主には君が盗ったと思われるだろうな」
「え〜?わしが貰わんかったとしてもリムサ・ロミンサがいちいち持ち主を特定して返すとも限らんじゃろうに!」
「ここにあるモノの価値を引き合いに出して、報酬金額を吊り上げよう。ジュースでもチョコレートでも、君の好きなモノなら何でも手に入りそうだ」
「そんなゆすりまがいなことして大丈夫かなぁ……それにわしの好きなものは金じゃー買えんからいい」
金で買えないものとは何だろう。ベンは少しだけ首をかしげたが、彼女の言葉だけを覚えておくことにした。
船長室の宝に手を触れないまま、更に洞窟の奥へと進む。ベハティいわく、潮の香りの濃い風の流れを洞窟奥から感じるという。出口があるのかもしれない。あるいは潮が満ちてきているのかもしれない。過度に焦らぬよう気を引き締めながら、ベンとベハティは歩を進める。
すこし開けた空間に出た。大きな空間のさらに奥に扉が見え、海賊らしき男が三人立っているのが見える。中央の男は見るからに他よりも目立つ格好をしている。少し息をひそめて耳を澄ませていると、何度か「船長」と声を掛けられているのがわかった。侵入者に気付いて、船長室からここまで移動してきたのかもしれない。
ベンは考えた。奥に進むには交戦するか、対話を試みるしかない。船長に関して、ベンには仮説があった。
仮に船長が船長室からここまで移動してきたのだとすれば、侵入者と積極的にことを構える気がない。交渉に応じる可能性がある。現段階では、ベンはベハティと外に出られさえすればよかった。交渉に応じてくれれば、無駄な戦闘を行わずに済む。
その仮説とは別に、そもそも自分たちが侵入してきたことにすら気付いておらず、自分たちを目にした瞬間驚いて襲い掛かってくる、という可能性も一応考慮に入れておかねばならないが……隠し扉を作ってまで根城を隠す人間がそこまでぼーっとしているとは考えにくかった。
ベンはひとつ息を吸うと、近くにあった木箱の山の陰に隠れているようベハティに指示を出す。
「出口を教えてもらえるよう"お願い"してみる。もし私が襲われたら、今の位置から魔法で援護してほしい」
木箱に隠れたベハティは無言でうなずき、おとなしく従った。
ここに来るまでに、何人もの海賊が見張りの仕事をしていた。彼らをくぐり抜けてここまでたどり着いた男の話を、無警戒に聞き入れるわけがない。ベンは納刀し大きく深呼吸すると、両手を大きく広げながら三人に近付いた。
「なあ、船長。取引をしないか。俺は一介の冒険者で、イエロージャケットでも黒渦団でもない。金さえもらえりゃそれでいいんだよ」
「…………あ??」
「あんた、俺を雇わないか? 少なくとも、俺はあんたの子分より強いぜ」
船長が乗ってくる確率は低かった。乗って来ずとも萎縮させられれば上等。そうでなくとも、自分に視線を集めることが出来れば上々だった。彼は背後にどうしても守りたいものを抱えている。ベンを睨みつけていた船長が、瞼をピクッと動かすのがわかった。
「うるせえっ! 侵入者だ、ぶっ殺せ!!」
前言撤回、想定以上の馬鹿だった。
今まで不安げにベンの方を見ていた二人の部下が、船長の声に反応し慌てて襲い掛かってくる。ベンは軽く首を振り数歩後ずさると、抜刀もせずに片手を腰に当て三人を睥睨する。
「交渉決裂とは残念だ」
背後のベハティにも聞こえるような大声だ。仕上げに片手のひらを天に向け、指だけで相手を手招きする。挑発に乗った三人は勢いづき、ベンのもとへと一斉に駆け寄った。
ごうッ、という音と共に、一陣の強い風が吹き抜ける。固まるようにして駆け寄ってきた三人を、風がまるごと飲み込んでは空気の渦を作った。
「わっ!?」
「なんだこれ、うわぁぁぁッッ」
「ただの風だろ!? うるせぇぞお前ら!」
動揺する三人に向け、抜刀の勢いを乗せた剣撃が閃く。海賊の装甲は薄い。金属の鎧は潮風で錆びる。だから海上では使えない。分厚い革鎧は容赦なく降り注ぐ強い日差しを凌ぐことができず不適だ。だからこそ海賊たちは奇襲による短期決戦を心がけねばならないが、ベハティの魔法で動きを阻害されてしまえばそれも叶わなかった。
部下が一人倒れ、もう一人が膝をつき、ついに船長が一人になる。動揺を隠せなくなった船長がうろたえていると、足元の地面が不意に隆起した。ベハティの土魔法だ。長時間、目に見えない自然の脅威にさらされ続けた船長はついに恐怖が臨界に達したのか、何事か捨て台詞めいたことを口走りながら一目散に洞窟の奥へと駆け出してしまった。
「……。ベハティ、ありがとう。助かったよ」
ベンの声は低かった。心なしか怒りが滲んでいるようにも思える。
「何か、ちびっ子悪ガキ団って感じじゃったね。まともに声掛けたベンが馬鹿みたいで可哀想じゃ」
「うまく逃げろよ三流が、出口への案内くらいはマトモにやってくれ」
洞窟の奥にまで響くような、よく通る声だった。ベハティは隠れていた木箱の中からもそもそと這い出ると、ベンに向かって親指を立てて見せる。見ると何故か歯形のついたリンゴを片手に持っているようだ。
「ベハティ、そのリンゴ、どこで見つけたんだ?」
「こんなか」
先程まで自分が隠れていた木箱を指さしている。見ると木箱の側面に、リンゴを示す絵と文字の描かれた張り紙の残骸がこびりついていた。
「それは……元の場所に戻した方が良いぞ。彼らが面白半分に舐めまわしたかもしれんだろ」
「!?」
ベハティが反射的にリンゴを放り捨てたリンゴを目で追いながら、ベンは眉一つ動かさず「冗談だ」と言い放った。
「だが知らない場所で拾ったものはあまり食べない方がいいな」
走り去っていった船長の後を追い、二人は洞窟の奥へと進む。潮の香りが濃くなってきた。巡回する海賊たちを搔い潜りながら、船長の向かう先を目指す。追われて逃げる者の目指す先にあるのは主に出口か避難所だ。ここが洞窟である以上、船長は出口を目指している可能性が高い。
ようやく船長の背中をとらえた。異様に広い空間に向かっている。木の柵で囲まれた広場のような場所だ。肩で息をしながらそこに駆け込む船長を見ていた二人は、何か妙な気配を感じ取った。うまく言葉に出来ないが、このまま行かせてはマズい気がする。
「何か妙だ」
「違う……あれは海賊達の縄張りじゃない……」
「海賊の縄張りじゃない……?」
ベンが彼女の言葉の意味を尋ねようとした、その時だった。人のものではない、猛る何かの叫び声が洞窟中に響き渡る。縄張りを侵された動物の威嚇に似た、激しい怒りを孕んだ声だ。何者かの領域に夢中で駆け込んだ船長が、驚愕と恐怖に目を瞠る。
二人の眼前で船長は「何か」の手酷い一撃を食らい、声を上げる間もなく地面に倒れ伏した。怒りに満ちた唸り声が、徐々に意味を持つ叫びへと変わっていく。
「海神様の潮流に抗う愚かな『ヒレナシ』よ! 我がアギトで噛み砕き……海の藻屑にしてくれようぞ!」
サハギン族。エオルゼアで「蛮族」と呼ばれる種族のひとつで、海の都リムサ・ロミンサと長らく対立してきた歴史のある部族だ。屈強な体つきとまぶたのない両目が特徴的な、魚人のような風体をしている。話には聞いていたが、目にするのは初めてのことだった。
「言葉が通じるのか……」
思わず声が漏れた。姿形こそ自分たちとかけ離れているが、知性がある。なるほど、「サハギン族の息のかかった海賊」が存在するのも頷ける。彼らには彼らの文明があり、譲れない領地や信念がある。だからこそ、エオルゼアの民と対立しているのだ。
眼前にいるサハギンは、片手に鋭い槍を携え、敵愾心を剥き出しにしている。対話に応じる気は毛頭ないようだ。
サハギンは鋭い威嚇の声を発すると、ベンの方へと槍を振り上げる。鋭い切っ先が風切り音と共に彼の喉元に迫った。
激突音。サハギンの振るった槍の先端が、突然迫り上がった岩塊に突き刺さっていた。ベハティの土魔法だ。
ベンは背後に一瞥もくれずに身を屈め、地面を強く蹴り上げて疾走した。戦闘開始だ。躊躇っている余裕はない。
抜刀は後回しにして距離を詰める。槍は間合いを詰められれば身を守る手段に乏しい攻撃特化の武器だ。岩に刺さった切っ先を引き抜こうと躊躇う隙を見逃さず即座に相手の懐に転がり込む。疾走の勢いを乗せて振るった剣撃が、サハギンの胴体を横一文字に切り裂いた。
サハギンは、笑っている。
ベンは即座に身をかわす。数秒前まで自分の頭があった位置を、岩から引き抜かれた槍の先端が貫いていた。
硬い。厚い鱗に覆われた屈強な肉体は、剝き出しでも鎧を必要としないほどに硬質で強靭だった。思わず背後、やや遠くにいるベハティの方を振り返る。
ベハティはこちらを見ていない。どこか一点をじっと見つめ、警戒しているようだった。
「…………?」
ベハティは足元の排水溝を凝視していた。木材が格子状に組み合わさり、海水で満たされた四角形の穴をフタのように覆っている。彼女は格子の奥にある水面を見つめていたのだ。
妙だと思った。この空間に足を踏み入れた時には静謐だった水面が、先ほどから泡を立てているのだ。ごぼ、という音と共に立ち上る水泡が、不規則なリズムで水面を波立たせている。
気のせいだろうか。水泡の奥、水底近くに黒い影が横切った気がした。もっとよく見ようとベハティが目を凝らした、次の瞬間だった。
弾けるような水音と共に、大量の水滴が周囲にまき散らされた。
「ウヴェ、しょっぱッ!生臭ッ!!!」
勢いよく口の中に飛び込んできた海水を少し飲み込んでしまったらしく、ベハティはペッペッと舌を出している。
「なぁんじゃもう~~……ッ!!」
ベハティが息を呑む。周囲が突然暗くなったのだ。洞窟に光は差さない。自分の周囲に突然影ができることなどないのだ。
自分以外の存在が、急に目の前に立たない限りは。
ベハティが後方に飛び退ると同時に、鋭い金属が岩にぶつかる衝撃音が響いた。一人のサハギン族がベハティを睨みつけ、槍を構え直している。先ほどまでベハティが凝視していた排水溝に潜んでいた敵が、いま姿を現したのだ。ベンと交戦しているサハギンよりも一回り小さい。恐らく増援だろう。ベハティは杖をふるって風の塊をサハギンにぶつけると、一目散にベンのもとへと駆け出して行った。
ベハティの意図を察したベンがやや大きな動きで身をひるがえし、敵の攻撃をかわす。ベハティを追い自分の背後まで迫ってきたサハギンを視界にとらえると、回転の勢いを殺さずに振り上げた右脚の爪先を追手のこめかみに叩き込んだ。回し蹴りの予備動作で身を躱し、そのまま攻撃に転じた形だ。勢い任せの戦法だったが、どうやら今回の賭けは彼の勝ちらしい。
追手が呻き声を漏らして膝をつく。間髪入れずに、爆発する風の塊がサハギンに襲い掛かった。ベンはそのまま大きく後退し、視線を自分に引きつけながら戦闘を続行する。ベハティはというと、踵を返して元いた排水溝の近くまで駆け戻っていくところだった。
彼女が排水溝のもとへと戻ったのには理由があった。増援が1人で済むはずがないと知っていたからだ。息を切らせたベハティが水面の前に身を屈めた瞬間、先ほどと同じ黒い影が海水の奥で蠢くのが見えた。
息をひそめ、小声で呪文をいくつも詠唱した。水面に泡が激しく立ち上り、敵が水から飛び出してくる。ベハティが待っていたのはまさにこのタイミングだった。ため込んでいた魔法のエネルギーを一気に爆発させる。あっという間に敵の身体に無数の傷がつき、声も上げずに水面に倒れこんでいく。排水溝から飛び出そうとするサハギンは複数いたようだったが、死体を三つも作れば穴は完全にふさがり、彼らの通行に足るものではなくなってしまった。
その時、一際大きな金属音が周囲に響き渡った。続けて、何か大きなものが硬い洞窟の床に叩きつけられる音がする。ベハティがベンの方へと視線を振り向けると、彼は剣を勢いよく振るい、付着した血液を振り払っているところだった。足元には、下顎の欠損したサハギンの身体が力なく転がっている。
「終わったよ」
音もなく納刀したベンがこちらに笑いかけるのが見える。
返事をしようと顔を上げたベハティの髪を風が撫でていった。濃い潮風の中に、陽に晒された砂の香りが混じっている。外の匂いだ。
「あったかい海の匂いがする……コレってもしかすると出口なんじゃないか!?」
「そうか! よかった……。しかし、少し死体を作りすぎたかな。街と部族との関係が悪化しないといいんだが」
「ここまで拗れにこじれたものが更に悪化したからと言って大して変わるもんでもあるまいて。わしらが死んだって同じじゃろ。まずは生きていることに感謝して、もうこんな所から出よう!わしベタベタじゃ!」
「ありがとう。君には何度も助けられてしまった。無事に外に出られるのも君のおかげだな」
「そう思うならジュースいっぱいくれ!」
こうして二人は元気よくサスタシャ侵食洞を後にした。外は西日が差している。夕日の赤は目にまぶしかったが、今日ばかりはそう感じることがありがたく思えた。
―――次回に続く!!!!!
―――
毎度恒例のあとがき。こんにちは、ベンさん側の中の人(背後霊)です。
サスタシャ編、よーやく書けました。筆が遅い!!!!
とにかくベハティがすごいつよいちゃんとかしこい魔法使いなんですよってことが書きたかった話です。ベンさんの同僚って肩書は全然伊達じゃありません。ベンさんも彼女のことを同じ魔法使いとして、同僚として信頼してるんです。ただ、彼女の「子供」な部分をどうしても放っておけないだけ。彼女の「子供」部分ってちょっといびつで、自由奔放にふるまっているようでいてかなり大人の顔色を窺っているんですよね。だから指示には従うし、本当に嫌われたり迷惑をかけすぎるようなことはしない。セーブしてるんですよね、いつも。そこが彼女のかわいいとこでもあるんですけど、みたいな話がしたかった。
そんな調子でふたりの冒険は続きます。
全然関係ない余談ですが執筆中に「まわしげり」と入力した時「回し下痢」と変換されたときは不意打ちすぎて変な声がでました。戦闘中に脱糞するな。