
無料という前例を作ると、いつまでたってもあの時は無料だったといわれる話
表紙絵が無料とかが炎上しているのでそのことに関して思うところを書きます。
・日本式資本主義社会はとにかく無料で何でもやらせたい
私は基本的にサービス(=商品)を受ける際、「無料」というのはおまけだと思っています。過度な期待はしませんし、あくまで無料ですのでよほどトラブルがない限りクレームも入れません。むしろやってくれてありがとうって思うんですけど
やってもらって当たり前って思う人多くね?
とも思います。
前にも書きましたが、例えば無料で漫画が読めるサイトなども儲かる仕組みがあります。
企業がユーザーへ行う無料サービスは無償にしていいからこそやるのです。
ですが、
企業からユーザーへのサービスは無料(儲かる仕組みがある)が当たり前でも
企業や個人へ作家などが無料提供が当たり前、はwin-winではありません。
個人依頼でなら、単に企業の真似して無料でなになにもして~とかなになには無料だと思ってたんですけど~とか言ってるだけなんで単純に悪質です。サービス強要は時として罪になると知るのだ。
企業なら自分は儲かるけど作家サイドは無償で奉仕しろというのは悪質を通り越して越権行為だと考えます。
日本式資本主義は最終的に儲かれば正義なので、このやり方に文句を言う方がおかしいという主張が通るのでしょう。
・延々と継がれるダメ伝統
おそらくですが、表紙やありとあらゆるおまけページなどが無料でやるコトの発端は、単行本を刷ったりする印刷技術が特殊技能職、そしてカラーイラスト自体が特別な存在だったからこそだと思います。
まずカラーイラストはアナログ塗りしかなかったので、イラストは一点モノ。複製もできない。正真正銘、これが無いと始まらない。(色を塗った後リテイクさせて絵具を乾かす時間とかガン無視してスケジュール組んだりしてたとか無茶苦茶も相当あったと聞きますけど)。
印刷自体、4色刷りは当時だとバルブでインクの微調整が必要な印刷機が主流・・・つまり職人技で、全く同じ色味で印刷されることはほぼない。おまけに出版関係者が立ち合いも必要なこともあります。
それだけカラーはレアで手間のかかるものだったのです。
カラーページ自体が表紙のみなので、作家も印刷されたカラーイラストがあらゆる宣伝にそのまま利用されることを知っていました。一枚の絵が拡散され、この絵が目印だぞ!という宣伝効果があったからです。
読者もカラーのキャラクターを見る機会がレアだから。雑誌やコミックスの表紙などでしか見れないから。
一枚描く作業は大変だったでしょうが、その分の宣伝効果は大きかったのです。だから(その時に原稿料が出なくても)リターンを見越して描けたのかと考えます。いやだからって出版側が労働の対価を払わないのは今考えてもダメだけどさ。
今は違いますよね。
カラーはデジタルである程度補正が効くうえ、印刷技術も進化しました。
デジタルでカラーイラスト作成するという、流石にゼロから書き直すのはアナログ時代と変わらないですが、それでも画材が無くて描けないなどがないなどのトラブルや原画紛失なども起きにくくなりました。
そこがまずかった
いくら色の変更など一定のリカバリーが効くとはいえ、描く手間自体はあんまり変わらないのに、カラーがレアなものでなくなったのです。漫画に色を付けて連載なんてのを取得した超人も現れ始めました。
カラーは無料というダメ伝統だけ守られつつ、量産体制だけが加速したのです。
・最低条件を利用する企業サイド
昔からカラー表紙の原稿料は無料でも、作家へのメリットやリターンがあった・・・という理屈が今では通用しない。
カラーがレアなものから身近な物になったので、「描けば売れる付加価値」になるのではなく「描かないと売れない最低条件」になったのです。
「描かないと売れないぞ?売れないと連載続けられないぞ?続刊だせないぞ?」
読者サイドもカラー表紙が当たり前に慣れ過ぎて(というか内容にもカラーページがあったり、フルカラー漫画などに慣れ過ぎて)バッチバチに目を引くイラストありきが当然になりました。カラーが下手だと買われないことも。
作家の生殺与奪を握っているからゆえ、無料であれこれさせるうまみを知った企業側は、その行為が規制されるギリギリまで止めることはしないでしょう。
だってそれが今までそうだったから
無料という前例を作ると、いつまでたってもあの時は無料だったからというのを見事に悪用しています。
・まとめ
こうしないと売れないという商法が分かっているのなら、それを含めての原稿料を支払うべきだと私は考えています。
著作権は作家にあるとしても、商品として出す以上は商品に関わった人間が損をする部分はあってはなりませんし、「この部分は描かないと売れないぞと言ってタダで描かせた、この部分は原稿料の契約だから有料で描かせた」なんて依頼者側として異常な事を言っていると自覚すべきです。
もし、「うちはきちんと代金を払っているし、過去からの風習を守っているだけで普通のことをしている」という企業さんがいたら、単行本や原稿料の内訳をSNSなどで堂々と言ってみたらどうでしょう?
ましてや
作家が売りたいがゆえに勝手に描くのが当たり前
描かないといけないという使命感で描くのが当たり前
なんてのはいくらなんでも傲慢ではないでしょうか?
「作家が勝手に描いた表紙の絵」を自社のコミックス一覧!などに使っていますし、ネットにアップしたり・・・と勝手に描いたもの利用していいのか?とも思います。
作家がそれで売れれば元が取れるかもしれませんが、売れなければ勝手に描いた絵と言われるモノを利用し、会社の知名度を上げるためだけに利用されたに近いのではとも考えられます。
いいなと思ったら応援しよう!
